アップルは、米国特許商標庁(USPTO)を受理官庁として、インタラクティブな(つまり双方向対話型の)クラウドレンダリングゲーミングを可能とするサービスについての特許協力条約に基づく国際特許出願を2020年2月6日に行い、2020年8月13日に同条約に基づき国際公開された(国際公開番号:WO2020/163635A1)。
この国際特許出願は、高速無線通信ネットワークである5Gを基礎とした、新たなクラウドレンダリングゲームについて開示されている。
クラウドゲームとは、ユーザーの有するクライアント端末には必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理、とくに高度かつ高速な演算処理が必要なグラフィック描画などはサーバ側で集中的に行う、いわゆるシン・クライアントの使用を通じて行われるゲームをいう。異なるクライアント端末上に遠隔サーバで描画された画像(動画)をオンデマンド配信することで、クライアント端末の能力を考慮せずにゲームを楽しむことが可能な技術である。
すでに、マイクロソフトはxCloudによって、同社の定額ゲームサービスXbox Game Pass Ultimate加入者への特典という位置づけで、Azureクラウドサーバでゲーム画面を描画し、クライアント端末へ動画としてストリーミングすることで、あたかもリアルタイムにクライアント端末で処理されたかのようなゲーム体験をすることができるサービスを展開している。
国際特許出願はされたが、まだ国際公開されただけである点に留意
マイクロソフトがxCloudを上梓した状況下にあって、アップルも同様のサービスを展開するのか、という点についてはこの特許出願だけでははっきりしたことはいえない。Appleは毎月多数の特許出願を行っており、そのうち製品化・実用化されるのは一部にすぎないからだ。
一般的な話として、特許出願は、自社の製品・サービスとして実施することを目的に独占権を取得しようとするものが本来的な目的であり、そのような使い方が通常ではあるが、その一方、同業他社に技術を独占させないという目的で、いわば防御手段として自らの発明・技術を公開してしまうという使い方もある(つまり公知にしてしまえば、誰も独占権をとれないということだ)。
アップルがどのような特許戦略をとるかは未知数だが、5G回線を利用したクラウドゲーミングは、5Gの普及とともに一層浸透するものと考えられ、今後の技術革新からは目が離せない状況だといえよう。
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