「宅急便」はヤマトHDの登録商標 ジブリ映画『魔女の宅急便』との関係は—


「『宅急便』は普通名称ではなく、ヤマト運輸が商標登録しているもの。『魔女の宅急便』を作ろうとしていたジブリともめていたが、最終的にヤマト運輸がスポンサーになることで解決した」――スタジオジブリの人気作品『魔女の宅急便』を巡る、こんなトリビアがTwitterで話題となっている。これは事実なのか。ヤマトホールディングス(ヤマトHD)の広報に事実関係を聞いたとITmediaビジネスオンラインが22年4月2日伝えている。

ヤマトHDの広報担当者は取材に対し「『宅急便』という単語はヤマトHDの登録商標という点は事実だが、スタジオジブリとトラブルになった事実はない」と回答した。担当者は「スタジオジブリ側とは建設的な議論の末、共同提携という形で作品に関わった」と強調。実際、同社の創業100周年記念サイトの「100年のあゆみ」では「1989年にヤマト運輸が、徳間書店、日本テレビ放送網と共同提携で製作した映画『魔女の宅急便』(宮崎駿監督)が公開され、映画をご覧になった取扱店さまからも多くの反響が寄せられた」と、同作品との関係性を紹介している。

ネット上では「『宅急便』がヤマト運輸の登録商標であったことや登場キャラクターに黒猫がいたことが縁でヤマト運輸がスポンサーになった」「1985年12月、映画プロダクション風土舎は角野栄子の児童文学『魔女の宅急便』の長編アニメーション化の企画を立ち上げた。『宅急便』がヤマト運輸の登録商標であったことから、真っ先に同社にスポンサーを要請した。当初ヤマト運輸は難色を示したが、次第に前向きになりスポンサーになることを了承した」など真偽不明な逸話が、複数散見される。

作品に関与した経緯についても聞いたが「30年以上前のことで社内に記録がなく、不明確であるため、お答えできない」と明言を避けた。

ただ、同社は先述の社史に、同作品公開時のポスターとともに「作品の『こころを暖かくする宅急便です。』というキャッチコピーには、『こころ暖まる映画をヤマトがお届けしている』ことと、『宅急便が送る人や受け取る人のこころを暖かくするサービスである』 ことの、二つの意味が込められている」と記載している。

作品製作前のジブリ側との交渉の詳細は不明だが、この記載内容を見る限り、公開後は同社も作品のPRをしていたことが分かり、良好な関係を築いていたことがうかがえる。

魔女の宅急便は、作家の角野栄子さんの同名作品が原作のアニメ映画。主人公の少女キキが、魔女になるための修行として、地元から離れた港町で宅急便をしながら成長する姿を描いている。14年には、東映が実写映画化した。

スタジオジブリが物語の舞台のモデルにしたとされる、クロアチア・ドゥブロブニクや、実写映画のロケ地である香川県・小豆島には、作品のファンを中心に多くの観光客が訪れている。

同社は100周年記念サイトで、同社のロゴであるネコマークの誕生秘話も紹介している。これによると、マークのデザインを担当したのは、大和運輸(当時)の広報担当だった清水武さんで、彼の娘が画用紙にクレヨンで描いた親子ネコがヒントになったという。清水さんは57年6月にネコマークのデザインを完成させ、85年にはネコマークが準社章となった。

清水さんの子息はどんな経緯でネコを描いたのだろうか。これについて同社は「当時、清水さんの家で猫を飼っていたと聞いている。それがきっかけになった可能性はあるが、記録がなく、分からないのが実情」との見解を示している。

偶然にも黒猫という共通項がつないだ映画とヤマトHDの関係性。ヤマトHDが、共同提携という形で映画の製作に関与しなければ、今の同社のブランドイメージは少し違ったのものになっていたかもしれない。その意味で、ヤマト運輸が映画に参加した戦略は奏功したと言えそうだ。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2203/31/news157_2.html


Latest Posts 新着記事

世界初!宿泊予約者の希望に応じて自動紹介するビジネスモデル特許「移動先宿泊施設レコメンド3」取得

2025年、日本発の革新的な宿泊予約関連技術が注目を集めている。旅行者の利便性を格段に向上させるビジネスモデル特許「移動先宿泊施設レコメンド3」が、このたび世界で初めて取得されたのだ。これは、旅行中や移動中に次の宿泊地をまだ決めていない旅行者に対し、自動で宿泊施設を提案・紹介するという仕組みで、観光業界、特に地方創生を推進する自治体や宿泊事業者から大きな期待が寄せられている。 この基本特許技術は、...

猛暑に革命!ワークマン『TSU-KEDカーゴパンツ』の涼しさが異次元すぎる

夏の暑さが年々厳しくなるなか、通勤もレジャーも「涼しさ」がファッション選びの鍵になってきました。そんな中、機能性ウェアで注目を集め続けるワークマンが放つ新作パンツが話題沸騰中。それが、「TSU-KED(ツーケッド)カーゴパンツ」です。 「まるで穿いていないかのような軽さと涼しさ」──この一言で一躍注目を浴びているこの商品は、現在特許出願中のテクノロジーを搭載。今回はこのTSU-KEDカーゴパンツの...

ニコリオ、「ラクビプレミアム」で腸内環境改善に関する新特許取得 独自性と競争力を強化

2025年、株式会社ニコリオは、同社の主力サプリメント「ラクビプレミアム」に関連する新たな特許を取得した。この特許は、腸内環境の改善に関する有効成分の組成およびその摂取方法に関するものであり、健康食品市場における同社製品の独自性と競争優位性をさらに強化することが期待されている。本稿では、今回の特許取得に至った背景、ラクビプレミアムの特長、そして今後の展望について詳述する。 ■腸内環境と健康の関係:...

パナソニックGの休眠特許が生む次世代産業 スタートアップ連携投資の全貌

技術の再活用で新産業創出とオープンイノベーション加速を狙う パナソニックホールディングス(以下、パナソニックG)は、これまで活用されずに社内に眠っていた「休眠特許」を軸に、スタートアップ企業への投資および協業を本格化させる新たな戦略を打ち出した。大企業が保有する膨大な知的財産を、スタートアップの機動力や柔軟な発想と掛け合わせることで、社会課題の解決、新たな市場の創出、そして日本経済の再活性化を狙う...

トヨタグループ、知財DX加速 AIサムライが特許補正業務を刷新

トヨタ自動車グループの知的財産関連企業が、人工知能(AI)を活用した特許補正支援システムを開発し、実務での運用を開始した。社内では「AIサムライ」と呼ばれるこのシステムは、特許庁から送付される拒絶理由通知や意見書に基づき、わずか数分で補正案の草稿を自動生成できるという。特許補正作業はこれまで人手に大きく依存してきたが、AIの力でスピードと精度を大幅に向上させることで、知財戦略の次世代化を目指す動き...

次世代モビリティー特許出願、浜松地域で初の実態調査 中小企業の活躍は限定的に

はじめに 浜松地域イノベーション機構は、地域経済の活性化と産業競争力の強化を目的に、近年注目が高まっている次世代モビリティー分野における特許出願の実態調査を初めて実施した。調査結果によると、特許出願数自体は堅調に推移しているものの、地域の中小企業による特許出願は限定的であり、今後の技術開発や知財戦略における課題が明らかになった。本稿では、調査の背景や内容、そして中小企業の現状と今後の展望について詳...

謎の新型セダン発見!日産『EVO』中国向けPHEVか?

近年、自動車業界はEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)へのシフトが加速しており、各メーカーが次世代モデルの開発に力を注いでいます。そんな中、日産が中国市場向けに開発中と噂されるPHEVセダン「EVO」の市販型と思われる新たな特許出願車両が発見され、注目を集めています。今回はその謎のセダンのデザインや性能の可能性、市場戦略などを詳しく分析し、今後の日産の動向を予測してみました。 ...

日本のAI特許戦略に赤信号──中国・米国の特許攻勢とその意味

近年、人工知能(AI)技術の進展はめざましく、産業構造や社会生活を大きく変えつつある。そんな中、AI関連の特許出願数は技術力やイノベーションの先進性を測る重要な指標の一つだ。2025年現在、世界のAI特許出願において日本は「周回遅れ」と指摘される状況にある。その背景には、中国の爆発的な特許出願数の伸びと米国の堅実な技術蓄積がある。日本は果たしてこの現実をどう捉え、今後どのような戦略を描くべきか。本...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る