Apple、Vision Proの生産削減?


AppleのAR/VR戦略は、同社の知的財産戦略と深く結びついています。特に、Appleは2007年からAR技術に関する特許を取得し続けており、これにはヘッドマウントディスプレイやシースルー型のARディスプレイに関するものが含まれています。
(https://www.moguravr.com/apple-wearable-ar-device/)

これらの特許は、Appleが新しい技術領域での競争力を維持し、革新を推進するための重要な資産となっています。例えばここ3年間のVR/ARに関するAppleの特許公開公報の月毎推移をみても、毎月概ね20-30件程度の特許出願をしているとみられます(Apple.incについて、米国特許公開公報のみ、明細書に「VR」または「AR」との記載があるものを抽出し、筆者がグラフ化)。

生産削減と戦略的再評価

ところが、最近、Appleは同社のVR/ARゴーグルのフラッグシップである、Vision Proの生産を大幅に削減し、年末までに現行モデルの製造を完全に停止する可能性があると報じられています。
(https://www.theinformation.com/articles/apple-sharply-scales-back-production-of-vision-pro)

これは、デバイスの価格が高すぎることと、市場での需要の低迷が影響していると考えられています。Appleは、より手頃な価格のモデルを開発する方向にシフトしており、これにより新たな市場機会を模索していると報じられています。

知財の活用

Appleの知的財産戦略は、AR/VR技術の革新を支える基盤となっています。特に、AR関連の特許は、ユーザー体験を向上させるための重要な要素です。例えば、Appleはシースルー型のARディスプレイに関する特許を取得しており、これにより現実世界に情報を重ね合わせる技術を開発していることからみても、AR関連技術に関する研究開発をストップさせる気はないといえるでしょう。
(https://www.moguravr.com/apple-ar-patent/)

市場の競争と未来展望

Appleは、競合他社がすでに市場に投入している手頃な価格のVR/ARデバイスに対抗するため、次世代の製品開発に注力しているとみられます。特に、Vision Proの生産削減は、Appleが市場のニーズに応じた製品を提供するための戦略的な判断と考えられます。今後、AppleがどのようにAR/VR市場での地位を確立していくのか、特に知的財産を活用した戦略がどのように展開されるのかが注目されます。


ライター

+VISION編集部

普段からメディアを運営する上で、特許活用やマーケティング、商品開発に関する情報に触れる機会が多い編集スタッフが順に気になったテーマで執筆しています。

好きなテーマは、#特許 #IT #AIなど新しいもが多めです。




Latest Posts 新着記事

福島市×富士フイルム、罹災証明簡素化システムを特許出願──災害対応DXの新モデル

地震、台風、水害、火山噴火──自然災害が頻発する日本において、行政が担う災害対応業務の中でも、被災者の生活再建に直結するものが「罹災証明書」の発行である。罹災証明書は、住宅などの被害状況を確認し、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」などの判定を行政が下し、それを被災者に文書で交付するものである。これにより被災者は、公的支援や保険金の請求などが可能になる。しかし、その発行には時間と人的コストが...

ペロブスカイト特許競争が激化 日本の技術立国に試練

近年、次世代の太陽電池として注目されている「ペロブスカイト太陽電池」。軽量・柔軟・低コスト・高効率という四拍子揃ったこの技術は、従来のシリコン型太陽電池を補完あるいは置き換える存在として、世界中の研究機関・企業から熱い視線を浴びている。その中でも、中国勢の特許出願ラッシュが著しく、知財戦略の面でも日本は岐路に立たされている。 ペロブスカイト太陽電池とは何か ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト...

IBMの特許王国を支える“ミドルの力”——革新を続ける管理職育成の真髄

2020年、IBM(International Business Machines Corporation)は米国特許商標庁(USPTO)から9,130件の特許を取得し、28年連続で特許取得件数世界一の座を守った。これはApple(2,792件)、Microsoft(2,905件)、Google(1,817件)などの名だたるテックジャイアントを大きく引き離す数字であり、IBMがいかに継続的にイノベ...

メガネの新常識、「Zoff SNAP GRIP」登場──全国発売開始、究極のフィット感を実現

2025年5月16日、国内大手アイウェアブランド「Zoff(ゾフ)」は、新製品「Zoff SNAP GRIP(ゾフ・スナップグリップ)」を全国のZoff店舗およびオンラインストアにて発売した。この新商品は、Zoffが“究極の快適性”を追求した末に生み出した革新的なメガネフレームであり、現在特許出願中の新構造「スナップグリップ機構」を搭載している点が最大の特徴だ。 Zoffは、これまでにもリーズナブ...

三菱ケミカルG、CATLと特許契約締結 電解液技術をグローバル展開へ

2025年5月、三菱ケミカルグループ(以下、三菱ケミカルG)は、世界最大の電気自動車(EV)用バッテリーメーカーである中国・寧徳時代新能源科技(CATL)に対し、リチウムイオン電池に使用される電解液の特許技術をライセンス供与する契約を締結したと発表した。電池材料業界における知財戦略の新たな局面を象徴するこの一件は、単なるライセンス供与という枠にとどまらず、日中間のEV産業連携、そして将来のバッテリ...

りんご飴に特許という選択肢。『ポムダムールトーキョー』が札幌すすきので描く知財スイーツ戦略

札幌市中央区・すすきのエリアに、日本初の“りんご飴専門店”として注目される「ポムダムールトーキョー(POMME DAMOUR TOKYO)」が出店しているのをご存じだろうか。単なる屋台スイーツの延長ではない。店舗で提供されるりんご飴には、企業としての確かなブランド戦略、独自技術の裏付け、そして知的財産権による保護という、現代的ビジネスの三拍子が揃っている。 今回は、札幌進出とともに特許取得が話題と...

テクノロジーで共生をつくる――オムロンが無償開放する“ゆにもの”特許の力

2025年、オムロン株式会社は、自社が保有する「ユニバーサルものづくり」に関する複数の特許技術を無償で開放することを発表した。この動きは単なる企業の社会貢献の枠を超え、製造業全体、ひいては日本社会の在り方に大きなインパクトをもたらす可能性を秘めている。 ■「ユニバーサルものづくり(ゆにもの)」とは何か? まず、オムロンが提唱する「ユニバーサルものづくり」、通称“ゆにもの”の概念を理解する必要がある...

BYD、電動化特許で世界をリード──寒冷地対応「自己発熱電池」で市場を拓く

中国のEV大手・BYD(比亜迪)が、電動化に関連する特許出願数で世界的に突出している。世界知的所有権機関(WIPO)のデータや中国国家知識産権局(CNIPA)によると、BYDはモーター制御、バッテリーマネジメント、駆動系統、熱制御技術など広範な分野で急速に特許出願を積み上げており、2023年の段階で「電動化技術」において世界トップクラスの知財ポートフォリオを築いている。 中でも注目すべきは、「寒冷...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る