Apple 11月に公開された新技術:サングラスとカメラの連携


今回のコラムは、11月16日にUSPTO(米国特許商標庁)から公開されたAppleの特許出願公開公報に掲載されたユニークな発明について紹介します。

https://patents.google.com/patent/US20230370728A1

サングラス等のシェード製品とカメラの連携の可能性

この特許出願のタイトルは、「画像キャプチャおよび可視光送信の同期 Synchronization of Image Capture and Visual Light Transmission」ですが、このタイトルだけではいまいち難しすぎるかと思われます(筆者もよくわかりません)。

発明の概要

この特許は、サングラスや他の透明または部分的に透明な素材を使用した製品(第一のデバイス)の光透過特性を、カメラ(第二のデバイス)による画像キャプチャイベント中、つまり撮影中に制御するという技術に関するものです。

具体的には、サングラスのレンズなどが、外部の光の条件やカメラの使用に応じて自動的に透明度を変更することを可能にするというものです。
サングラス等の色や透明度を変化させる技術は、すでに広く実用化されており、主として「電気クロミック材料」を利用することで実現できます。電気クロミック材料は、電気的な刺激(例えば、電圧の適用)によってその色や透明度を可逆的に変化させます。この変化は、材料内の電子やイオンの移動によって生じ、その変化は数秒で起こります。

技術の応用

一般に、サングラスをかけた人の写真を屋外で撮る際、通常はレンズがシェードされているため、目がはっきりと写らないことがあります。しかし、この技術を使用すれば、カメラが起動すると、サングラスのレンズが自動的に透明になり、写真に映る目がはっきりと見えるようになります。こういったサングラスのニーズがあるかはともかく、実に遊び心のある特許出願ではないでしょうか。

方法の詳細

このシステムは、カメラが画像キャプチャイベントを検出すると、サングラスに信号を送信します。この信号は、RF信号や光信号など、さまざまな形式で送信される可能性があります。サングラスは、この信号を受け取ると、レンズの光透過特性を即座に調整します。

ユーザー体験の向上が期待される

この技術は、写真撮影やビデオ撮影の際に、より自然な視覚体験を提供します。サングラスをかけたままでも、レンズが自動的に調整されるため、屋外でのビデオ通話や自撮りがより快適になるでしょう。

セキュリティとプライバシー

この技術は、当然ではありますがユーザーのプライバシーとセキュリティも考慮しています。デバイスがペアリングされていない場合、ユーザーの手動入力やジェスチャー、音声コマンドなどによってのみ、レンズの光透過特性の調整が行われます。これにより、不正なカメラによるデバイスの制御を防ぐことができます。

まとめ

今回紹介したAppleの特許出願は、サングラスやその他のシェード製品とカメラの連携を改善し、より良いユーザー体験を提供するための革新的な技術を提案するものでした。この技術により、光の影響を受けやすい環境でも、サングラスのレンズが自動的に最適な状態に調整されるため、写真撮影やビデオ撮影がより快適で効率的になります。実用化・製品化されるかはともかく、非常にユニークでAppleらしい発明です。


ライター

+VISION編集部

普段からメディアを運営する上で、特許活用やマーケティング、商品開発に関する情報に触れる機会が多い編集スタッフが順に気になったテーマで執筆しています。

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