お掃除ロボットルンバの知財ミックス事例


皆さん、こんにちは、弁理士の杉浦(パテ兄)です。家電量販店やテレビ、ご家庭でも普及し始めたお掃除ロボット。少し値段が高いですが、仕事に行っている間に自動で掃除してくれるなら、思い切って購入してみようと思う人も多いはず。今回はお掃除ロボットルンバ(アイロボット社)の知的財産(知財ミックス事例)についてご紹介します。

商標

まずは、「ルンバ」というのはアイロボット コーポレイションの登録商標です。
登録番号 第4781882号
商標権者 アイロボット コーポレイション

アイロボット社は複数の商標登録を保有しているようですが、代表的なものはこの片仮名の「ルンバ」の商標で指定商品「第7類 家庭用掃除ロボット」について取得しております。

これ以外にも、「ROOMBA」も商標登録(第4739048号)しているのですが、特許庁の参考称呼をみると「ルームバ」になっております。たしかに、ルーム+バなのでルームバになるのですね。日本ではルンバという片仮名が全面的に出されそれが浸透しているように思えますが、英語のロゴを見たときにどのように読まれるか予想がつかないときは、このように片仮名もあわせて取得されるのをおすすめします。アイロボット社の事例のように。

意匠

次に意匠登録(デザイン登録)です。
意匠登録第1478362号
意匠権者 アイロボット コーポレイション

物品は「自走式掃除ロボット」として保護されておりました。アイロボット社の意匠登録の特徴が、全体意匠ではなく、部分意匠を多様化していることです。一般的には、販売する製品の全体的な形状等で登録するものだと考えるのが普通ですが、意匠法では部分意匠という制度があります。ざっくりと言うと、部分意匠とは、一部のデザインのみ権利化をし、それ以外の部分はどのような形状等とうであっても権利範囲が及ぶというものです。

本意匠では、薄墨の部分が何でもよく、白色の部分について権利主張している部分となります。白色の部分が共通していて他の部分が異なっていても権利が及ぶということになります。このような部分意匠を多様化し、独自のデザインを保護しているようです。

特許

次に特許です。
特許第4472709号等
発明の名称 自律ロボットのドッキング方法

この特許の内容は以下のとおりです。

「・・・ 前記エネルギー蓄積ユニットに蓄積されているエネルギーの量が、所定の高エネルギー準位よりも低いか、または前記所定の高エネルギー準位よりも低く設定される所定の低エネルギー準位よりも低いかを判断するステップと、
前記ロボット装置によって、前記蓄積されているエネルギーの量が、前記所定の高エネルギー準位よりも低いか、または前記所定の低エネルギー準位よりも低いかに少なくとも基づいて、所定のタスクを行うステップと、を包含し、
前記所定のタスクは、
前記蓄積されているエネルギーの量が前記所定の高エネルギー準位以上の場合は、前記帰還信号を探すことなく掃除を行なうこと、
前記蓄積されているエネルギーの量が前記所定の高エネルギー準位より低い場合は、前記帰還信号を探しながら掃除を行なうこと、
前記蓄積されているエネルギーの量が前記所定の低エネルギー準位より低い場合は、掃除を行なわずに前記帰還信号を探すこと、・・・」

つまり、この特許は、蓄積されているエネルギー量によって、掃除を行うか、帰り道を探しながら掃除をするか、掃除をしないで帰り道を探して、帰って充電するという方法等に特徴があるようです。

皆さんどうでしたでしょうか?今では大ヒット商品となったルンバの知財ミックス事例をご紹介させていただきましたが、単純に特許、意匠、商標の3つを取得するだけではなく、その3つの守備範囲を理解した上でどの法律でどこの部分を保護するのか、これが重要です。是非、みなさんも、自社製品を多方面から保護してみてはいかがでしょうか。


参考文献:ヒット書品はこうして生まれた!ヒット商品を支えた知的財産権 日本弁理士会


ライター

杉浦 健文

パテ兄

特許事務所経営とスタートアップ企業経営の二刀流。

2018年に自らが権利取得に携わった特許技術を、日本の大手IT企業に数千万円で売却するプロジェクトに関わり、その経験をもとに起業。 株式会社白紙とロックの取締役としては、独自のプロダクト開発とそのコア技術の特許取得までを担当し、その特許は国際申請にて米国でも権利を取得、米国にて先行してローンチを果たす。 その後、複数の日本メディアでも取り上げられる。

弁理士としてはスタートアップから大手企業はもちろん、民間企業だけではなく、主婦や個人発明家、大学、公的機関など『発明者の気持ち、事業家の立場』になり、自らの起業経験を生かした「単なる申請業務だけでない、オリジナル性の高い知財コンサル」まで行っている。

■日本弁理士会所属(2018年特許庁審判実務者研究会メンバー)
■株式会社白紙とロック取締役
■知的財産事務所エボリクス代表
■パテント系Youtuber 




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