極寒でも快適睡眠、快適性を向上させた寝袋


極寒でも快適睡眠、快適性を向上させた寝袋

極寒でも快適睡眠、快適性を向上させた寝袋

アウトドアで宿泊する場合、ある程度気温の高い夏場は別として、気温の下がる季節や場所では睡眠中の体温管理のために、寝袋(シュラフ)の使用は安全面から見ても好ましいでしょう。

最近では様々な場所で車中泊をすることがブームになっていますが、車の中であっても、就寝中にずっとエンジンをかけておくわけにはいきませんから、寝袋があると安心です。

寝袋は大きく分けて二通り、その構造から、いわゆる「封筒型」と「マミー型」に分けられます。かなり例外的なものとして、寝袋を着たまま動き回れるような「ヒト型」なんていうものもありますが、構造的に単純な封筒型は、保温性は比較的劣るものの、価格が安く、寝袋内での身動きがしやすいという特徴があります。

マミー型は隙間ができにくく、少々動きにくくはなりますが保温性が高く、氷点下でも使用可能なものが多いという特徴があります。

今回の発明は、マミー型の寝袋に関するものとなり、従来よりもさらに保温性及び快適性を向上させることを目的につくられました。

この寝袋は広島のアウトドアメーカーBears Rock社が開発し、2015年4月6日に特許出願され、2019年6月21日に特許が登録されています(特許番号:特許第6542564号)。

さて、従来のマミー型寝袋では、寝袋に入った後、最後に顔の部分を締める際、寝袋の開口縁を縮めるような機構であったため、どうしても開口部が横長の形状になってしまい、特に頬に対応する横の部分の間隔が開いてしまい、十分な密閉性が確保できない(つまりここから冷気が入ってきてしまう)という問題がありました。

そこで、使用者の顔部分を露出可能な開口部の周縁部を、使用者の顔部分の形状に似た形状に維持できるようにしたものが、今回の発明となります。

この発明を採用した寝袋は、Bears Rock社から既に販売されており、なんと−34℃の環境下でも使用可能という、圧倒的性能を誇ります。

アウトドア愛好家の間では大人気の商品のようで、品薄が続いているそうです。

寝袋は、キャンプなどのアウトドア・レジャーだけでなく、災害時にも活躍することが想定されますから、本発明品のような高性能なものを家族の人数分、揃えておいてもいいかもしれませんね。

寝袋は、主にテントやキャンピングカー等で寝泊まりする所謂アウトドア活動において、就寝時に寒さを防ぐ為の寝具として利用されている。

従来、寝袋の頭部に、使用者の顔部分が露出可能な開口部を備え、使用者の顔部分周りのシール性を確保するために、開口部の周縁にヒモを設けたものが用いられている。

しかし従来のテントは、使用者の額と顎に相当する部分の間隔が直ぐに狭くなり、頬に対応する横の間隔が開き十分にシールできないことがある。またヒモを引っ張る操作性が悪く、加えて顔部分周りを顔部分の形に相応して狭くすることが非常に難しいなどの課題があった。

本発明の寝袋は、使用者の顔部分周りを効果的にシールすることができる。

使用者の顔部分を露出する開口部の形状を、使用者の顔部分に似た形状に維持するように設計されているため防寒性もよい。

本発明は以下のポイントより構成される寝袋である。

・使用者の体を収容する本体部と、本体部の上側に使用者の頭部を収容する寝袋頭部を有し、寝袋頭部に使用者の顔部が露出可能な開口部を有する
・開口部の周縁は、開口部の下端から寝袋の左右両方向に広がってから斜め上方に向かい曲線状に延び一体に繋がるように形成され、開口部の周縁に開口部の広さを変更可能な変更手段を備えている
・変更手段の内側に、開口部の周縁に沿って、使用者の顔部に当接可能な顔当て部を有する
・顔当て部は、内部に中綿を有する袋状になって、 開口部の周縁に縫製され、周縁から寝袋外側へ向けて立ち上がり、外側端部が変更手段より外側に位置する

本発明の更なるポイントとして、以下が挙げられる。

・本体部に、開口部の下端部から本体部の足元方向にスライドして開閉する本体ファスナーが設けられ、本体ファスナーは、本体部に縫製されたシート状基材と、シート状基材に取り付けられた複数の噛合エレメント及びスライダを備えている
・変更手段が、本体ファスナーに一体に連続する開口部ファスナーで形成され、本体ファスナーのスライダが開口部ファスナーにもスライドすることで、開口部の広さを変更することができる
・開口部のファスナーは、本体ファスナーを設けた開口部の下端部から、左右方向に拡がってから斜め上方に接近する方向に向かって延びて曲線状に一体に接続され、開口部が縦長の楕円形状に形成される

本発明の寝袋の閉じた状態を示す斜視図を図1に示す。

【図1】寝袋の閉じた状態を示す斜視図

寝袋1は、袋状で所謂マミー型と呼ばれる形状からなり、一般的に は、綿・ポリエステル・ナイロン等からなる2枚の布地の間に、羽毛や中綿等の保温材が封入されて構成されている。

図1に示すように、寝袋1は、その中で寝る使用者が仰向けで寝た場合に、背面側になって敷かれる敷部と、この使用者の正面側(腹側)になり、使用者の上に掛けられる掛部3を備えている。

寝袋1は、足元側から上方に向けて各左右方向に広がってから、寝た状態の使用者の肩に相当する部分から徐々に左右方向から滑らかな曲線状で狭くなっている一体形状のマミー型である。

 図2に寝袋上部の拡大斜視図を示す。

【図2】寝袋上部の拡大斜視図

寝袋頭部5には、使用者の顔部分を露出可能な縦長の楕円形状の開口部10が設けられている。

開口部10の周縁11は、開口部10の下端部10a1から寝袋1の左右両方向に拡がってから斜め上方に向かって曲線状に延びて一体に繋がるように形成されている。

この開口部10の下端部10aから下方を寝袋本体部4とし、その上方を寝袋頭部5とする。

基本的には、寝袋本体部4と寝袋頭部5とは区別されること無く一体のものであり、寝袋本体部4と寝袋頭部5に明確な境界はないが、開口部10の位置を解りやすく説明する便宜上前述したように区別している。

寝袋本体部4の左右方向中央位置に、開口部10の下端部10aから、寝袋本体部4の足元方向にスライドして寝袋本体部4を開閉する本体ファスナー6が設けられている。

本体ファスナー6には、上側スライダ7aと下側スライダ7bとからなるスライダ7が設けられている。

上側スライダ7aを寝袋下方向にスライドさせて、掛部3を左右に開けることで、使用者が、敷部2と掛部3との空間に出入りできる一方、上側スライダ7aを寝袋上方向にスライドさせて、掛部3を閉じることで、使用者の体部分が包まれるようになっている。

 図3に開口ファスナーの拡大斜視図を示す。

【図3】開口ファスナーの拡大斜視図

図3に示すように、開口部10の周縁11に、開口部10の広さを変更可能な変更手段として、開口部ファスナー12が設けられている。

開口部ファスナー12は、本体ファスナー6と連続する一体のファスナーとして設けられている。

開口部10の下端部10aと本体ファスナー6の上端部6aとの両位置を一致させて、開口部10の開口部ファスナー12と本体ファスナー6を連続して設けることで、この上側スライダ7aを寝袋下方向にスライドさせて掛部3を左右に開いた部分と、それに連続する開口部10とを介して、使用者が出入りすることができる。これにより、小さな出入り部分で使用者の出入りがスムーズに行われる。

なお、本体ファスナー6は、使用者の出入りに支障が無ければ、掛部3をできるだけ大きく開けない方が良いので、足元方向の途中までとしているが、場合によっては、寝袋の足元位置である寝袋下部まで設けてもよい。

周縁11に設けられた開口部ファスナー12よりも寝袋内側に、開口部10の周縁11に沿って、使用者の顔部分に当接可能な顔当て部が設けられている。

ここで開口部10の詳細構造について図1~図3を用いて説明する。

本体ファスナー6は、スライダ7、噛合エレメント8及びシート状基材9を備える。

開口部ファスナー12は、本体ファスナー6のシート状基材9に連続する1枚のシート状基材9と、噛合エレメント13を備える。

即ち、本体ファスナー6及び開口部ファスナー12のシート状基材9は、図1の左側の掛部3の端に、下端部6bから上端部 6aまで縫製された後、開口部10の左側下端部10aから左方向に曲がって拡がって開口した周縁11に沿って縫製され、その後、楕円状を描くように形成された周縁11に沿って縫製され、開口部10の上端部でUターンして、左右対称に周縁11に沿って縫製され、開口部10の右側下端部10aまで戻り、その後、図1の右側の掛部3の端に、本体ファスナー6の上端部6aから下端部6bまで縫製されている。

本体ファスナー6の上端部6aと開口部ファスナー12の下端部12aとは一致しており、図2及び図3に示すように、1枚のシート状基材9に、噛合エレメント8及び噛合エレメント13が連続して同一間隔で取り付けられており、本体ファスナー6のスライダ7が、噛合エレメント8と噛合エレメント13を連続してスライドできるようになっている。

噛合エレメント13は寝袋外側を向くこととなる。

この向きのままで、シート状基材9及び噛合エレメント13が開口部10の周縁11を回って開口部10の下端部10aまで戻り、シート状基材9が開口部10の周縁11に縫製されるようになる。

シート状基材9及び噛合エレメント8は、本体ファスナー6では、左右が互いに向き合って対向している。

一方、シート状基材9は、開口部10の周縁11では、寝袋1の内側1aに向いていた内側面9bが、徐々に向きを変えてほぼ90度向きを変える状態になり、それに応じて噛合エレメント13も徐々に寝袋外側1bの方向に向きを変えて、周縁11に縫製される。

これにより、開口部10は、噛合エレメント13の向きの変更により滑らかな縦長の楕円形状を維持しやすくなっている。

本発明は、室内、車室内あるいは、登山、ハイキング、キャンプなど屋外で使用する寝 袋であって、使用者の背面側に敷かれる敷部と、使用者の正面側を覆う掛部とを備えた寝 袋に極めて有用である。

発明の名称:寝袋
出願国:日本
出願番号:特願2015-77500
公開番号:特開2016-195709
特許番号:特許第6542564号
出願日:2015年4月6日
公開日:2016年11月24日
出願人:Bears Rock株式会社
 登録日:2019年6月21日 経過情報:登録
その他情報:なし
IPC:A47G 9/08

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。


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