特許庁、「自動運転の目」として機能する自動運転センサー「LiDAR」の2022年度特許ランキングを公表


特許庁がこのほど公開した「令和4年度分野別特許出願技術動向調査結果」によれば、日本はLiDAR(ライダー)に関して強みを持つことが示唆されたという。LiDARは自動運転車のコアセンサーなどとして使用されていることで知られる。

この調査は、市場創出・拡大が見込まれる5つの最先端技術テーマについて、特許情報などに基づき日本の強み・課題等を分析し、報告書を取りまとめたもので、自動運転LABが23年5月30日伝えている。

このLiDARとは「Light Detection And Ranging」の略で、レーザー光を照射して、その反射光の情報をもとに対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術。自動車の自動運転を支援するシステムで多く使われるミリ波(周波数帯30~300 GHzの非常に高い周波数の電波)レーダーによる計測よりも、高精度に人や障害物を検知することが可能になることから、自動運転実現に向けて高度化が期待されている。

LiDARに関して、2016〜2020年の国際展開発明は、日本国籍出願人による合計件数が2,561件で首位だった。これは全体の24.2%を占め、2位が米国籍で2,329件、3位が中国籍で1,766件、4位が独国籍で1,433件と続く。なお年次ごとに見ていくと、日本国籍は2016・2017・2018・2019年で1位、2020年は中国籍、米国籍に続いて3位だった。

米中が先行している印象がある自動運転開発だが、自動運転に必須となる技術のLiDARについては、日本が多くの特許を出願していることが分かる。しかし直近の調査の2020年では米中に首位を明け渡していることから、この2カ国が特許出願でも追い上げてきているようだ。一方、2021年と2022年のデータは調査対象となっておらず、この直近2年間でどのデータが変化しているのか、今後の調査を待ちたい。

調査では、国籍別ではなく「出願人」ランキングも作成されており、日本のソニーグループが466件で1位。2位は独ボッシュグループで421件、3位中国のDJIグループで240件、4位韓国のサムスン電子グループで194件、5位米アルファベットグループで181件となっている。

上位20の出願人のうち、日本企業は7社ランクインしている。ソニーのほかは、5位のデンソーグループ、10位のパナソニックグループ、11位のトプコングループ、14位の三菱電機グループ、18位のトヨタ自動車グループ、19位のパイオニアグループだ。

ソニーグループのLiDAR関連のニュースとしては2021年2月に、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)画素を用いた車載LiDAR向け積層型直接Time of Flight(dToF)方式の測距センサーを開発したことを発表したことがある。これは業界初のことだったようだ。

またソニーグループの半導体子会社ソニーセミコンダクタソリューションズは、LiDARをパワーアップさせる距離センサーを商品化することを、同年9月に発表している。2022年6月には、ソニーが車載LiDAR向け部品の量産を2023年に開始することを発表している。

「自動運転の目」として機能するLiDARは、自動運転車開発において必須の要素だ。LiDAR開発ではアメリカやイスラエルのベンチャー企業が派手に事業を展開しつつあるが、日本企業、特にこのランキングで上位に上がった老舗企業がこの領域で勝ち組になっていけるか、注目したい。


Latest Posts 新着記事

知財分析に地殻変動:Patentfieldが中韓データ標準化を実現

はじめに 企業がグローバル市場で競争力を維持・強化するうえで、知的財産(IP:Intellectual Property)の戦略的な活用は欠かせません。特許情報の分析は、新たな事業機会の発見、研究開発の方向性決定、競合の動向把握など、多様な意思決定の根拠となります。その中で、知財分析プラットフォームとして多くの企業や研究機関に支持されてきた「Patentfield(パテントフィールド)」が、このた...

iPhoneの次はこれ?アップルが仕掛けるAIウェアラブル革命

2025年5月、米Apple(アップル)が出願した新しい特許資料が公開され、テック業界やウェアラブル技術の未来に関心を持つ多くの人々の間で話題となっている。その内容は、従来のスマートウォッチやARグラスの枠を超える、まさに「身体拡張」と呼ぶにふさわしい次世代のAIウェアラブルデバイスに関するものだった。 本稿では、特許から読み取れるデバイスの可能性、他社動向との比較、そしてアップルが目指すであろう...

エーザイ、レンビマ特許訴訟に勝訴 知財強化で収益基盤を防衛

2024年3月、日本の製薬大手エーザイ株式会社は、同社が開発・販売する抗がん剤「レンビマ(一般名:レンバチニブ)」に関する米国での特許侵害訴訟において、インドの大手後発医薬品メーカーであるサン・ファーマシューティカル・インダストリーズ(Sun Pharmaceutical Industries Ltd.)との間で和解に至ったことを発表した。この訴訟での勝訴は、単なる一製薬企業の勝利にとどまらず、国...

「宇宙旅行OS」が誕生──スペースデータ、次世代ステーション統合特許を取得

2025年、宇宙ビジネスのフロンティアを牽引する日本企業「スペースデータ株式会社」が、宇宙ステーションの統合管理から宇宙旅行の予約・運用システムに至るまでを包括的にカバーする特許を取得した。これは単なる技術的成果にとどまらず、宇宙産業全体の未来像を方向づけるマイルストーンとなり得る重要な出来事である。 本コラムでは、スペースデータ社の取得した特許の概要、技術的・社会的な意義、そしてそこから見えてく...

ステランティス、ブラジルで特許出願急増 3倍増で革新の最前線へ

2024年、ステランティスはブラジルにおいて目覚ましい成果を収めた。特許出願数が前年比で3倍に達し、国内企業としては第3位という快挙を成し遂げたのである。これは単なる数字の増加ではなく、同社が南米、特にブラジルを次世代モビリティの技術革新の中核と位置づけ、グローバルな戦略拠点として本格的に機能させ始めていることを示す重要な指標だ。 ブラジルでの研究開発強化 ステランティスが急速に特許出願数を増やし...

知財リノベーション:老舗企業に求められる特許戦略の転換

はじめに:増え続ける「数」の先にあるもの 日本は長年にわたり、技術立国として数多くの特許を生み出してきた。特に1980年代から1990年代にかけては「知財大国」として世界を牽引していたが、21世紀に入り、特許出願件数が急増する一方で、その“質”への懸念が深まっている。いま、企業は単なる特許の“数”ではなく、社会的価値や経済的インパクトを持つ“質”を問われる時代に突入しているのだ。 この流れの中で、...

知財戦略の先に未来がある ― IT企業の特許から見る国際競争力

近年、IT業界のグローバル競争は激化の一途をたどっている。GAFAを筆頭に、中国BAT(Baidu, Alibaba, Tencent)や新興のスタートアップが覇権を争う中、各社がグローバル市場での競争優位を築くために重視しているのが「知的財産」、特に「特許」である。特許は単なる技術の保護にとどまらず、国際戦略の可視化、競合排除、M&Aの交渉材料としても機能する。各社がどの分野にどのような...

ジェネリックに逆風?東レ新薬が特許侵害で沢井製薬に大勝利

2025年5月、知的財産高等裁判所(知財高裁)は、東レ株式会社が起こした特許権侵害訴訟において、沢井製薬株式会社をはじめとするジェネリック医薬品メーカーに対して、217億円の損害賠償を命じる判決を下した。このニュースは製薬業界関係者を驚かせるとともに、日本の知財制度と医薬品政策のあり方について、改めて深い議論を呼び起こす契機となっている。 本稿では、この判決の背景、判決が意味するもの、そして今後の...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る