コロナ禍でマスクの特許にも目が離せない!!ユニクロは独自の三層構造で特許出願

コロナ禍でマスクの特許にも目が離せない!!ユニクロは独自の三層構造で特許出願


コロナ禍のなかでマスクに関する特許出願概況にも目を向けてみると、1998年から現在(2018年ごろ)までに出願されたものは約1800件みられ、これは年間約90件ほどの出願となりこれらの開示情報からマスクの発明が解決すべき着眼点をキーワードでみると、

・顔面へのフィット、空間形成
・製造コスト
・メガネの曇り
・ウイルスや花粉の捕捉、フィルタ
・耳にかける紐、締め方、ゴム

などの課題が発明の背景に見て取れる。
さらにマスクの具体的な課題の詳細を要約すると、①本来の機能の向上・維持に関するもの、②ユーザビリテイ向上に関するもの、③予防・治療に関するもの、④その他の機能に関するものとなってくる。
 またこれらの特許出願情報を活用することでさらなる発明の元となるアイデアの素を発見する場合もあり、それにはふたつのアプローチがあり、そのひとつは従来のマスクの技術をさらに掘り下げる。もうひとつは従来のマスク以外の技術を参照するという目線である。

そのなかで、ユニクロは独自素材の技術を活用し三層構造のアイデアで特許出願

ユニクロは当初マスク製造には消極的だったが、コロナ禍のなか顧客からのマスク製造の要望を受けてマスクの開発に着手、早期に実現した。
ユニクロ発表の2020年6月15日付けプレスリリースによると、それはマスクとしての高い性能と肌ざわりを両立させたオールシーズン用の洗えて使えるもので表側のメッシュ素材はUVプロテクション機能があり、紫外線を90%カット。内側の素材エアリズムは不織布やコットンとは異なる滑らかな肌ざわりで、マスク着用時の肌のごわつきを軽減。そして表地と裏地の中間には、細菌やウイルスが付着した粒子、花粉などをブロックする機能をもつ高機能フィルタを挟んでおり、このユニクロ独自の3層構造で「マスクとしての防御性能」、「洗濯可能」、「つけ心地」の3つの開発ポイントを実現し直ちに特許を出願したとされる。

高性能を叶える3層構造

特許の元となっている三層構造だが、まずマスクの本来の防御性能を果たす「高性能フィルタ」はBFE99%カットし飛沫、細菌やウイルスが付着した粒子、花粉などをブロック。またメッシュ素材はUVプロテクション機能を有し、紫外線を90%(UPF40)カットするフィルタを採用、とある。

さらに「洗える」については、サステナブルな観点から日常的に身につけるマスクにおいて、使い捨てではないものを選ぶお客さまが増えていることに着目し、洗濯用の中性洗剤を使用し洗濯機での洗いを可能としている。専門機関のテストでは、20回洗濯したのちも3層構造の中間にあるフィルタが一定の効果を持続すると証明されている。

そしてもうひとつのポイントは不織布やコットンにマスクとは一線を画すなめらかな肌さわり。これはユニクロと東レが共同開発した素材「エアリズム」の使用によってゴアつきや厚みを感じにくく長時間の着用でも心地よさを保つことを実現している。
なおリリースではそれぞれにエビデンスの注釈もある。

マスクはすでに研究しつくされた比較的シンプルな製品のようだが今でも年間90件ほどの特許出願がされ日々進化しており、コロナ禍においてはさまざまな異業種から技術活用の視点を持って開発が活発になっている。

【参照】

https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/2020/06/20061511_20ssmask.html

https://precious.jp/articles/-/20030

https://okdtechno.jp/probes/probe042.html

 


Latest Posts 新着記事

「AFURI」vs「雨降」—ブランドと地域性が交差する商標攻防戦の結末

はじめに 2025年4月、人気ラーメンチェーン「AFURI」を展開するAFURI株式会社と、日本酒「雨降(あふり)」を展開する吉川醸造株式会社との間で繰り広げられていた商標権を巡る争いに、知的財産高等裁判所が一つの決着をもたらした。AFURI社が主張していた吉川醸造の「雨降」商標に対する無効審判請求が棄却されたことで、両者のブランドの共存可能性が示唆された形だ。 本稿では、この裁判の経緯と背景、そ...

BYD・HUAWEI・XIAOMIが描くEVの未来図:特許情報から探る勝者の条件

中国の電気自動車(BEV)産業は、急速な技術革新と政府支援を背景に、世界市場を席巻しつつある。その最前線に立つのが、BYD(比亜迪)、HUAWEI(華為)、XIAOPENG(小鵬)、NIO(蔚来)、ZEEKR(極氪)、そしてXIAOMI(小米)といった企業群である。彼らの競争力の源泉には、特許戦略に基づいた技術開発と事業戦略がある。本稿では、各社の特許情報と独自の取り組みから、その強みと潮流を読み...

ブリングアウト、複数面談のビッグデータを効率解析する技術の特許取得

人材採用における「面談」の在り方が、今、大きな転換期を迎えている。履歴書や職務経歴書といった定型情報では読み取れない人物像を、企業はより深く、多面的に把握しようとしている。そのため、1回の面談で即決するのではなく、複数の担当者による複数回の面談を通じて候補者を評価するケースが増加している。 こうした「複数面談」時代の課題は、面談記録の管理と評価の一貫性だ。面談官が異なれば、見る視点や質問の切り口、...

Samsungの特許が描く未来のXR体験:Galaxy RingとWatchで広がる操作の可能性

XR(Extended Reality)の進化は、ハードウェアの小型化や表示性能の向上だけでなく、ユーザーインターフェース(UI)の革新にこそ真価が問われている。どれほど高精細な映像を表示できたとしても、その世界を直感的に操作できなければ、ユーザー体験は限定的なものにとどまってしまう。AppleのVision Proが「視線とジェスチャー」を組み合わせた操作体系で話題を集めたのも、この直感性に焦点...

マツダとロームがGaNパワー半導体で車載部品を共同開発!その狙いとは?

2025年3月27日、マツダとロームが次世代パワー半導体「GaN(窒化ガリウム)」を用いた車載用電動駆動システム部品の共同開発を行うと発表した。このニュースは、自動車業界だけでなく、日本の製造業にとっても大きなインパクトを与えている。 電動化の潮流が加速する中で、なぜいまGaNなのか?そして、マツダとロームという異業種の企業が手を組む狙いはどこにあるのか?本稿では、両社の提携の概要を整理し、その背...

オプトエレが挑む「OCR誤読」の可視化:信頼性を高める新特許

近年、行政手続きや業務効率化の現場において「OCR(光学文字認識)」技術の導入が加速度的に進んでいる。AIを活用したOCRは、手書き書類や帳票の文字を瞬時にデジタル化し、データ化ミスを減らす要として期待されている。一方で、画像の品質や文字の崩れ具合によって誤認識が発生し、業務フローの根幹に影響を与えるリスクも見過ごせない。 こうした背景のもと、オプトエレクトロニクス(以下、オプトエレ)は、画像文字...

「知財で狩る時代」─約6,000商標を操るカプコン、IP戦略の最前線

2025年4月、株式会社カプコンが「知財功労賞」の特許庁長官表彰を受けたというニュースが、ゲーム業界内外で大きな注目を集めた。この表彰は、特許庁が毎年、知的財産の創造・保護・活用に貢献した個人や企業を称えるもの。とりわけ、カプコンは長年にわたるIP(知的財産)管理の姿勢と実績が高く評価され、今回の受賞に至った。 中でも特筆すべきは、同社が約6,000件にのぼる商標を保有している点である。これは単な...

DeepSeekの衝撃、その先にある“中国のAI戦略”とは

2024年、中国発の大規模言語モデル「DeepSeek」が登場し、AI業界に衝撃を与えた。ChatGPT-4と比較しても遜色ない性能を持ちながら、オープンソースとして公開され、誰もが利用・改良できるというその姿勢は、クローズド戦略をとる米国の主要AI企業とはまったく異なる方向性を示していた。 2025年現在、中国発AIモデルの躍進は一過性のものではなかったことが証明されつつある。DeepSeekの...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

大学発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る