日本では、AIがどの程度人間に近付けるのかということが議論されているが、このところ海外では「AIを自然人として認めるべきか?」が法的な議論として話題になっている。
そのきっかけの一つがStephen Thaler博士が、自らが開発したAIであるDABUS ((Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience)ロボットが「発明した」とされる「食品を入れる容器」と「フラッシュライト」(Food container and devices and methods for attracting enhanced attention)の特許を、AIの代理人として特許申請した件だ。
開発者が「人間」ではなく「AI」で、「AIが特許所有者」となり、通常、特許の申請ができるのは「自然人」なので、これは大きな話題になっている。
Thaler博士は、アメリカ、EU、オーストラリア、ニュージーランドなどの様々な国で同様に申請しているが、いずれも「申請は自然人に限る」と却下されている。しかし、なんと南アフリカが、この特許を認めたことをWirelessWire Newsが谷本真由美氏のツイートを22年9月27日次のように伝えている。
非常に興味深いのは、この特許の申請が認められたポイントの「発明者は人間に限らなくても良い」という点で、これは、技術の発展を推進するためには特許法は柔軟であるべき、という考え方が根底にみられるようだ。
この南アフリカの決定を理解するには、オーストラリアの裁判所での議論も参考になる。特許法で定義する「inventor」(発明者)という単語は、「動詞から派生した言葉で動作を指示し」、「人間」がやるとは定義されておらず、「inventor」は「柔軟に判断されるべき」と議論されている。
イギリス知的財産庁には、2018年10月と11月に、Thaler博士が代理人となって、DABUSが発明したこの食品の入れ物の特許が申請されているが、認められなかったために控訴されており、現在、最高裁で審議中だ。イギリスでの決定は、他国での議論にも大きな影響を及ぼすだろう。
この特許に関する各国での議論は、特許界だけではなく、自動運転や兵器、システムの世界にも波及し、判断力と知能を持ったAI自身に責任能力はあるのか、AIが作り出す付加価値の富の所有権は誰にあるのか、AIによるエラーは誰が責任を持つのか、といった点だ。
例えば自動運転で、AIが事故を起こした場合の責任を誰が負うのか? AIが戦争犯罪を犯した場合の責任は究極的には誰が負うのか?
こういった議論は、日本ではまだほとんど話題になっていないが、倫理的な側面も踏まえて早急に議論を進めるべきだろう。
【オリジナル記事・引用元・参照】
https://wirelesswire.jp/2022/09/83165/
* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。
関連記事
- 半導体製造装置業界の特許資産ランキング2024発表!東京エレクトロンが首位
- 14歳の発明から世界へ!日本初の自動洗卵機を生んだ津山発の技術
- すしざんまいの逆転敗訴が示す国際商標権の課題
- 「リンダキューブ」知的財産権の譲渡と新展開のお知らせ
- 任天堂、スマホをコントローラー化する特許出願 次世代機での活用に期待
- 「JavaScript」商標の行方は?Denoがオラクルの商標登録取り消しを申請
- SUPER EIGHT」商標登録拒絶の背景と繰り返される承諾問題
- 新潟発のフードテック!特許技術「米マヨネーズ」
- 韓国、中国の「特許ただ乗り」に対抗 バッテリー特許戦争の幕開け
- パテントトロールに反撃!特許の無効化を目指すオープンソース界