わずか9件の狭き門!「色彩商標」のセブンやMONO消しゴムそっくりの色を使用したらどうなる?


平成27(2015)年4月1日、「色彩のみからなる商標(以下「色彩商標」とする)」が導入されたのをご存知でしょうか? 色彩商標とは、文字通り、色彩だけの商標のこと。現在までに登録が認められたのはわずか9件と狭き門となっています。今回は、商標とは? 色彩商標とロゴマークの違いは? 色彩商標を侵害したらどうなる? などについてAll Aboutは22年7月2日次のように伝えている。

商標とは、事業者が、自己の取り扱う商品・サービスを他者のものと区別するために使用する識別標識のこと。企業の場合、商品やサービスの“顔”となるロゴマークなどを使用する。

ロゴマークなどが商標として登録されると、商標権という知的財産権が発生する。商標権は事業者が保有する権利であり、商品やサービスの顔として重要な役割を担っている。魅力的なロゴマークをつくるだけでなく、商標権を得ることも、重要なブランド戦略となる。
商標は、全10種類あります。文字商標、図形商標、記号商標、立体商標、結合商標などに加えて、平成27(2015)年4月1日、新たに5つのタイプ(色彩商標、動き商標、ホログラム商標、音商標、位置商標)の商標が導入された。

図形商標や記号商標は、色と形で構成されているが、色彩商標とは、文字通り、色彩だけの商標なので、輪郭は必要ない。色彩商標には、次の3つのタイプがある。
1. 単色(輪郭は必要ない)
2. 複数の色彩の組合せのみ(輪郭は必要ない)
3. 商品等の特定の位置に色彩を付すもの(例:ゴルフクラブ用バッグのベルトの部分を赤色とする)

現在(2022年6月)までに、563件の出願があり、登録が認められたのはわずか9件のみ。いずれの事例も【2】の「複数の色彩の組合せのみ」。また、商標登録出願を行う際には、「商標登録を受けようとする商標」とともに、その商標を使用する「商品」または「サービス」を指定することが要件で、商品は34種類、サービスは11種類の区分が設けられている。現在までに登録された色彩商標のうち、商品はMONO消しゴムなどを含む5件、サービスはセブン-イレブンなどを含む4件です。

商品の「色彩商標」は5件

『MONO消しゴム』の色彩商標の概要
登録番号:第5930334号   出願日:平成27(2015)年4月1日
登録日:平成29(2017)年3月10日   商品の区分:16類 消しゴム

『UCC ミルクコーヒー』の色彩商標の概要
登録番号:第6201646号   出願日:平成27(2015)年5月21日
登録日:令和1(2019)年11月29日
商品の区分:29類 缶入りのコーヒー入り乳飲料、30類 缶入りミルクコーヒー飲料

この他には、次の3件が登録されている。
・三菱鉛筆の高級鉛筆『ユニ』(ユニ色・黒:1958年発売)
・三菱鉛筆の最高級鉛筆『ハイユニ』(ユニ色・黒・金:1966年発売)
・日清食品の『チキンラーメン』(セピア色・白・オレンジ:1958年発売)

サービスの「色彩商標」は4件

『セブン-イレブン・ジャパン』の色彩商標の概要
登録番号:第5933289号   出願日:平成27(2015)年4月1日
登録日:平成29(2017)年3月17日
サービスの区分:35類 小売業(仕入れ販売)など

『ファミリーマート』の色彩商標の概要
登録番号:第6085064号   出願日:平成27(2015)年6月9日
登録日:平成30(2018)年9月28日
サービスの区分:35類 小売業(仕入れ販売)等、36類 公共料金等の徴収の代行等、39類 宅配便等の取次ぎ等、43類 飲食物の提供

『セブン-イレブン・ジャパン』『ファミリーマート』の他には、『三井住友フィナンシャルグループ』の色彩商標が2件(第6021307号、第6021308号)登録されている。

色彩商標の権利者になると「特定の色」を独り占めすることができ、商標登録には次の4つのステップとなっている。

・調査(似たような商標がないかなど事前に調査する)
・出願(特許庁に出願する)
・審査(特許庁で審査を受ける)
・登録(審査に合格すると、登録料を納付する)

企業のブランドを保護することは大切だが、色彩は誰もが自由に使えるもので、色彩商標は、「これは自社ブランドの専用の色です」と独り占めすることについて、法的根拠を与えることになる。現在までに色彩商標が認められた9つの事例は、色彩からブランドを想起することを示す消費者調査などを資料として提出している。色彩商標は、実質的に大手企業が全国規模で展開するブランドを想定した制度と言える。

商標権の存続期間は10年、効力が及ぶのは日本のみ

商標の権利者として認められると、指定の「商品」または「サービス」について登録商標を独占的に使用できるようになり、同一または類似の商標の使用を排除することができる。商標登録することによって、侵害行為に対する差止請求や損害賠償請求といった権利行使が可能になるわけです。

商標権は、設定登録の日から10年で終了するが、存続期間の更新登録の申請によって10年の存続期間を何度でも更新することができる。また、商標権は、日本全国に効力が及ぶ権利だが、外国には及ばない。外国で事業を行う場合は、その国での権利を取得することが必要になる。

色彩商標に“そっくりの商標”を使うとどうなる?

『MONO消しゴム』を例に考えてみる。『MONO消しゴム』の色彩商標を、トンボ鉛筆以外の事業者が消しゴムに用いると、商標権の侵害とみなされる。この場合、商標の差止請求や損害賠償請求を受ける可能性がある。

では、『MONO消しゴム』の色彩商標を、じゅうたん、壁紙など他の商品に用いた場合はどうか? この場合は、商標権の侵害とは見なされない。なぜなら、商標権は、商標と商品やサービスがセットになっているからで同一または類似の色彩を用いたとしても、色彩商標の対象となる商品やサービスでなければ、商標権における制約は及ばない。

色彩商標の事例に親しみを覚える人は多い反面、商標登録の実務は高度な判断が求められる。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://allabout.co.jp/gm/gc/492908/?FM=rssANTENNA_latest-family&utm_source=ANTENNA&utm_medium=af&utm_campaign=492908&utm_from=guide


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