陶芸の知識から発明された 株式会社マーラが「パンを美味しく焼く方法に関する」特許を取得


生活雑貨メーカー株式会社マーナ(東京都墨田区、代表取締役 名児耶 美樹[なごや よしき])がこの4月20日、「トーストスチーマー」の特長である「パンを美味しく焼く方法」に関する特許を取得したことを発表した 。

発表を要約するとマーナの発明は、昔からの知恵としてパンに霧吹きで水をかけて焼く方法などがあるが、もっと手軽に美味しいトーストを楽しめないかとシンプルに考えたのが発明のスタート。

また、特許公報にあるマーナの説明によれば、「外側サクッで内側ふわっとした食感」にパンを焼き上げる装置の国際特許はすでにあるが、それはトースター内部に水蒸気発生器を組み込んだ装置であり、複雑で高価だとしている。

それに対して今回の特許は、既存の特許による装置の課題解決を狙った発明であり、同様な美味しいトーストを一般的なオーブントースターを用いて手軽に焼けるとある。

一般的なトースターで「外側サクッで内側ふわっと」に焼ける魔法のトーストスチーマー

マーナのトーストスチーマーはオーブントースター内を加湿する道具。素材は素焼きの陶製で、約36×46×97mmの中空の構造となっている。使う前に、まず、水に20秒ほど浸けて水分を吸収させる。

そして、オーブントースターの中で食パンの隣に置き通常どおりに食パンを焼く。パンと共にトーストスチーマーが過熱されると、トーストスチーマーに吸収されていた水分が蒸発してパンに適度の湿り気を与え、これで、「外側がサクッと、内側はふわっとした食感」のトースターが焼きあがるといたってシンプルなもの。

トーストスチーマーを水に20秒ほど浸け、トースター内の食パンの傍に置き通常通りに焼く

素早く水分を吸収し蒸発させる素焼きの陶器の特性に着目したのが特許のヒミツ

この発明のベースとなっているのは、目に見えない微細な孔があり、素早く水分を充分に吸収できる素焼きの陶磁器の性質に着目したこと。構造もシンプルで、一部が開放された空洞の小型筐体形状とした加湿具で、パンと共にパン焼き用のトースター内に配置して、パンを加湿焼成することを特徴とする「パンの焼く方法」が特許である。

従って、予め水に浸しておいたこの加湿された素焼きの道具をパン焼き用のトースター内にパンと共に配置して加熱すると、吸収していた水分が蒸発してパンに適度の湿り気を付与することができて美味なトーストパンを得ることができるのであり、しかも従来のトースターをそのまま使用することができるというのも嬉しい優れもの。

素焼きの陶製で、中空(出典:特許公報)

製品化に当たっては加湿具の形状はいかなる形態でもよくて、例えば単なる平板状であってもよいが、可能な限り吸水量が多いほうが望ましく、しかしながら狭いトースターではコンパクトに収納しなければならないので、小型でありながら表面積が大きくて蒸発効率が高まるように一部が開口した空洞の筐体形状にすることよって、全体としては小型でも表面積が大きくなるので、保湿量が大きくかつ水分が発散し易くなり、しかもトースター内に邪魔になることなく配置できる等、この発明は多くの工夫がみられる。

パンを食するに当たって多くのひとはトースターでパンを焼く。しかしながら香ばしく焼こうとするとパンに含まれていた水分が飛び過ぎてしまい、食感や味覚、風味が落ちるものだった。

焼いたパンであっても適度の水分が残っていたほうが弾力性があって美味である。特に冷凍したパン、日にちの経てしまったパンなどは水分を含む割合が少ないため、トーストとして焼いてしまうと更に水分が減少し不満の残る味であることは誰もが体験があること。

このような不満を解決してくれるのがマーナのこの発明。スチーム機能付きトースターがなくても、家庭のトースターにプラスするだけで美味しさがアップするとして、発売から約1年で 24万個を販売している。

【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58690860R00C20A5000000/


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