WTO、ワクチン特許の一時停止などで合意—15年以来の閣僚宣言採択も製薬業界からの反発も


世界貿易機関(WTO)の閣僚会議は22年6月17日、漁業補助金の制限やワクチン特許の一時停止などを盛り込んだ宣言を採択し終了した。12日に始まった会議は難航。期間を延長し、2015年以来の閣僚宣言採択にこぎ着けたことをYAHOOJAPANニュースほかAnswersNewsなどが伝えている。

ジュネーブで開かれていた会議は17日早朝、ワクチン特許の一時放棄を含む包括的合意を承認。オコンジョイウェアラWTO事務局長は新型コロナウイルスワクチンへのアクセス不平等は「道徳的に受け入れられない」とし、特許停止が必要だと主張していた。

今回の閣僚宣言には、新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以来の懸案だった、新型コロナワクチンに対する知的財産保護義務の免除に関する合意が盛り込まれた。WTOでは、医薬品の特許を含む知的財産権全般について、TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)で加盟国が一律に順守すべき最低限の保護水準を定めてる。

今回の合意は、新型コロナワクチンを同協定が規定する知財保護の対象から一時的に除外し、開発途上国が権利者の同意なしに新型コロナワクチンを製造したり、輸出したりすることを認める内容となっている。

診断薬・治療薬についても協議

現時点では「ドラフト」として公表されている合意文書では、「適格加盟国」は国内法令における特許権の規定にかかわらず、パンデミックへの対処に必要な範囲で、権利者の同意なく新型コロナワクチンの製造や供給に必要な特許の利用を認めることが明記された。「適格加盟国」は「すべての開発途上国」とされ、新型コロナワクチンの製造能力を持つ開発途上国に対しては、今回の決定を利用しないことを拘束力のある形で約束することを奨励。利用が認められる特許の範囲は「新型コロナワクチンの製造に必要な成分や製法が含まれると理解される」としてる。

今回の合意では、自国向けの製造・供給だけでなく、ほかの開発途上国への輸出(COVAXのような国際的な配分枠組みを含む)も可能になる。今回の合意に基づいて開発途上国が輸入したワクチンを別の開発途上国に再輸出することは禁じられるが、規定に従ってTRIPS理事会に通知すれば、人道的かつ非営利目的の再輸出は認められる。

今回の合意に基づく知財保護義務の免除は、決定の日から5年間の一時的な措置。新型コロナの診断薬や治療薬にも適用を広げるか加盟国間で協議し、半年以内に結論を得ることも規定された。

今回の閣僚宣言には、新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以来の懸案だった、新型コロナワクチンに対する知的財産保護義務の免除に関する合意が盛り込まれた。WTOでは、医薬品の特許を含む知的財産権全般について、TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)で加盟国が一律に順守すべき最低限の保護水準を定めている。

今回の合意は、新型コロナワクチンを同協定が規定する知財保護の対象から一時的に除外し、開発途上国が権利者の同意なしに新型コロナワクチンを製造したり、輸出したりすることを認めている。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/23399/
https://news.yahoo.co.jp/articles/ecc2d3c6d38bc9392d127e6d434f8b220c4bd3c2


Latest Posts 新着記事

10月に出願公開されたAppleの新技術〜Vision Proの「ペルソナ」を支える虹彩検出技術〜

はじめに 今回は、Apple Inc.によって出願され、2025年10月2日に公開された特許公開公報 US 2025/0308145 A1に記載されている、「リアルタイム虹彩検出と拡張」(REAL TIME IRIS DETECTION AND AUGMENTATION)の技術内容、そしてこの技術が搭載されている「Apple Vision Pro」のペルソナ(Persona)機能について詳説してい...

工場を持たずにOEMができる──化粧品DXの答え『OEMDX』誕生

2025年10月31日、化粧品OEM/ODM事業を展開する株式会社プルソワン(大阪府大阪市)は、新サービス「OEMDX(オーイーエムディーエックス)」を正式にリリースした。今回発表されたこのサービスは、化粧品OEM事業を“受託型”から“構築型”へと転換させるためのプラットフォームであり、現在「特許出願中(出願番号:特願2025-095796)」であることも明記されている。 これまでの化粧品OEM業...

特許で動くAI──Anthropicが仕掛けた“知財戦争の号砲”

AI開発ベンチャーのAnthropic(アンソロピック)が、200ページ以上(報道では234〜245ページ)にわたる特許出願(または登録)が明らかになった。その出願・登録文書には、少なくとも「8つ以上の発明(distinct inventions)」が含まれていると言われており、単一の用途やアルゴリズムにとどまらない広範な知財戦略が透けて見える。 本コラムでは、この特許出願の概要と意図、そしてAI...

SoC時代の知財戦争──ホンダと吉利が仕掛ける“車載半導体覇権競争”

自動車産業が「電動化」「自動運転」「ソフトウェア定義車(SDV)」へと急速にシフトするなか、車載半導体・システム・チップ(SoC:System­on­Chip)を巡る知財・開発競争が激化している。特に、ホンダが「車載半導体関連特許を8割増加」させているとの情報が注目されており、同時に中国自動車メーカーが特許活動を爆発的に拡大しているとされる。なかでもジーリー(Geely)が“18倍”という成長率を...

試験から設計へ──鳥大が築くコンクリート凍害評価の新パラダイム

はじめに:なぜ“凍害”がコンクリート耐久性の大きな壁なのか コンクリート構造物が寒冷地・凍結融解環境(凍害)にさらされると、ひび割れ・剥離・かさ上がり・耐荷力低下といった劣化が進行しやすい。例えば水が凍って膨張し、内部ひびを広げる作用や、塩分や融雪剤の影響などが知られている。一方、これらの劣化挙動を実験室で迅速に・かつ実サービスに近づけて評価する試験方法の開発は、長寿命化・メンテナンス軽減の観点か...

Perplexityが切り拓く“発明の民主化”──AI駆動の特許検索ツールが変える知財リサーチの常識

2025年10月、AI検索エンジンの革新者として注目を集めるPerplexity(パープレキシティ)が、全ユーザー向けにAI駆動の特許検索ツールを正式リリースした。 「検索の民主化」を掲げて登場した同社が、ついに特許情報という高度専門領域へ本格参入したことになる。 ChatGPTやGoogleなどが自然言語検索を軸に知識アクセスを競う中で、Perplexityは“事実ベースの知識検索”を強みに急成...

特許が“耳”を動かす──『葬送のフリーレン リカちゃん』が切り開く知財とキャラクター融合の新時代

2025年秋、バンダイとタカラトミーの共同プロジェクトとして、「リカちゃん」シリーズに新たな歴史が刻まれた。 その名も『葬送のフリーレン リカちゃん』。アニメ『葬送のフリーレン』の主人公であるフリーレンの特徴を、ドールとして高精度に再現した特別モデルだ。特徴的な長い耳は、なんと特許出願中の専用パーツ構造によって実現されたという。 「かわいいだけの人形」から、「設計思想と知財の結晶」へ──。今回は、...

“低身長を演出する靴”という逆転発想──特許技術で実現した次世代『トリックシューズ』の衝撃

ファッションと遊び心を兼ね備えた新発想のシューズ「トリックシューズ」が市場に登場した。通常、多くの「シークレットシューズ」や「厚底スニーカー」は身長を高く見せるために設計されるが、本モデルは逆に身長を「低く見せる」ための構造を意図しており、そのためにいくつもの特許技術が組み込まれているという。今回は、このトリックシューズの設計思想・技術構成・使いどころ・注意点などを掘り下げてみたい。 ■ コンセプ...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る