やっと始まった「秘密特許」改正議論 歯止めかからぬ 日本の軍事技術流出 “国内防衛産業技術”守れるか


日本の軍事産業は、国の緊縮財政政策の前に風前の灯だ。そんな中、日本の技術を守る画期的な法改正「秘密特許」が議論され始めたと夕刊フジの公式サイトzakzakが22年2月14日伝えている。

軽装甲機動車などを開発したコマツは、自衛隊の装甲車両の新規製造から撤退した。三井E&S造船は、防衛省向けの艦艇・官公庁船事業を、三菱重工業に売却した。住友重機工業は、自衛隊向けの機関銃の公募試作品の部品設計図が、下請け企業から中国企業に流出した問題が発覚し、厳重注意を受けた。その後、選定途中で公募辞退した。

防衛装備の技術は高度化するが、防衛省からの発注では利益率が薄く、発注量も20年前の半分に落ち込んだ。これ以上、利益の薄い防衛省には付き合いきれないのだろう。

台湾有事や、北朝鮮のミサイル問題など、日本を取り巻く安全保障環境が緊迫度を増すなか、防衛予算は微増しかしない。総額が増えなければ装備を新しく選定しても、必要数を一度に調達はできない。

23万人弱の自衛隊員に、2020年度に30年ぶりに選定された新自動小銃の初年度の調達数は、わずか3000余りだった。一度に必要な全隊員分を発注できないほど、予算は少ない。18年に新採用された陸上自衛隊制服ですら、今も統一できない。さまざまな新規調達案があるが、調達量が限られる。必要数がまだまだそろわない。

こんな発注量では、防衛産業から国内企業が撤退するのも当然のことだ。22年度の概算要求に、防衛装備品を東南アジアで生産するための技術教育支援予算が計上されている。防衛の機微情報は国産でなければ守れない。軍事技術の流出に歯止めが利かない。

しかし、今国会で、日本の技術を守る画期的な法改正「秘密特許」が議論されている。現行法では、特許出願された発明は、原則として一定期間後に内容が公開される。つまり軍事・経済的に国家安全保障にかかわる重要な発明を秘匿する仕組みが秘密特許だ。

ほとんどの先進国では機微な特許出願は非公開とし、その発明の流出防止措置を講じる。G20(主要20カ国・地域)の中で、秘密特許制度がないのは、日本とメキシコ、アルゼンチンだけだ。機微な発明には自国第一主義がとられ、外国への出願制限もある。国内軍事産業を守るため、外国への特許出願制限で起こる損害には政府が補塡(ほてん)する。

つまり軍事的にも経済的にも、国家安全保障にかかわるような重要な発明を国が秘匿する。日本の公開された特許情報は、軍事情報でも外国人が閲覧できたのだ。米国では秘密特許をエネルギー省や国防長官や防衛関係者が選出する。秘密保持ルールを出願者が守らない場合は、刑事罰や行政罰が加算される。

これまで防衛産業に携わる企業は特許を取得したくても、情報開示されるために特許が取得できなかった。国内の機微情報の権益を保護したうえで、この改正で特許を残すことができる。国内防衛産業の技術を守る希望の光になるはずだ。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.zakzak.co.jp/article/20220214IYKJXRT5VBOUXNVIQGY4BAE7UA/


Latest Posts 新着記事

技術から収益化へ――河西長官が訴える“知財活用”の新ステージ

特許庁の河西長官は、来る9月10日に開幕する「知財・情報&コンファレンス」を前に記者団の取材に応じ、日本経済の競争力強化における知的財産の役割を改めて強調した。長官は「日本は技術とアイデアを数多く持ちながら、それを十分に事業化や収益化につなげきれていない。知財で稼ぐ政策を実現することが不可欠だ」と語り、特許庁としても産業界と連携し、知財活用の裾野を広げる方針を示した。 ■ 知財立国から「稼ぐ知財立...

トランプ政権が構想した特許税 ―特許価値評価の壁と企業への影響

アメリカ合衆国における税制改革は、政権の経済戦略を象徴するテーマである。ドナルド・トランプ政権下においても例外ではなく、法人税率の引き下げや海外利益の還流促進策など、多くの議論が繰り広げられた。その中で一部の政策担当者やシンクタンクから浮上したのが、知的財産権、とりわけ「特許」に対して課税を行う仕組み、いわゆる「特許税(Patent Tax)」の導入構想である。これは企業が保有する特許を資産として...

グローバル出願も効率化!特許業務支援プラットフォームappia-engine進化

知的財産の管理や特許業務は、多くの企業や研究機関にとって欠かせない活動です。しかし、実際の業務現場では「出願件数の増加」「国際的な審査対応」「膨大な書類作成」「調査の手間」など、数々の課題が存在しています。特にグローバル競争が激化する中で、迅速かつ正確に知財を扱うことは企業価値の向上に直結するため、知財部門や特許事務所にとって効率化は最優先事項となっています。 こうした背景を受けて開発されたのが、...

大阪・関西万博を彩る知財の力――特許庁が『とっきょ』特別号を発行

2025年に開催される大阪・関西万博は、世界各国から最新の技術や文化が集結する「未来の実験場」として大きな注目を集めている。その舞台裏では、知的財産(知財)が重要な役割を果たしていることをご存じだろうか。特許庁はこのたび、広報誌「とっきょ」の特別号として、大阪・関西万博に関連する知財の数々を特集し、その魅力と意義を幅広く伝える試みをスタートさせた。 本稿では、その特別号の内容を紐解きながら、万博と...

建築業界の常識を変える!スタイルポート、3D空間コミュニケーション特許を取得

建築や不動産の分野において、デジタル技術の導入は急速に進展している。その中で注目を集めているのが、株式会社スタイルポートが開発した「3D空間上でのプロジェクトコミュニケーション技術」である。同社はこのたび、同技術に関する特許を取得したと発表した。本稿では、この特許の概要、業界へのインパクト、さらには今後の展望について詳しく解説する。 1. 特許の概要 今回、スタイルポートが取得した特許は、建築物や...

知財戦争の最前線 韓国が富士電機UPSを差止、TMEICが勝利

韓国で、日本大手の電機メーカーである富士電機製の無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)が特許侵害を理由に輸入差止の措置を受けたことが明らかとなった。輸入禁止の判断を下したのは韓国の特許庁傘下にある知的財産審判院(IP Tribunal)および関税庁であり、差止の根拠となったのはTMEIC(東芝三菱電機産業システム株式会社)が保有する電力変換技術に関する特...

知財で世界を制す?中国の有効発明特許501万件の意味

中国国家知識産権局(CNIPA)は最新の統計において、中国国内で有効に存続している発明特許の件数が501万件に達したことを発表した。これは世界最大規模であり、知的財産をめぐる国際競争の中で、中国が「知財大国」から「知財強国」へと歩みを進めている象徴的な数字といえる。  本稿では、この記録的な数字の意味、背景にある政策や産業構造の変化、さらに今後の国際経済や技術競争に与える影響について整理していく。...

フォルクスワーゲン、電池特許が不正後2倍に 量産化の壁へ苦闘

フォルクスワーゲン(VW)は、2015年に世界を揺るがしたディーゼル排ガス不正問題(いわゆるディーゼルゲート)以降、経営の根幹を大きく電動化にシフトさせてきた。その過程で顕著なのが、電池関連の特許出願数の急増である。不正発覚前後を比較すると、同社の電池技術に関する知財出願はほぼ倍増しており、欧州自動車産業が「EVシフト」という大きな変革を迫られる中で、VWが製造技術の確立にいかに苦心しているかが浮...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る