近年、日本の伝統的な発酵食品が世界的に注目されており、その中でも「塩こうじ」は健康志向の高まりとともに、多くの国で関心を集めています。その中で、長野県伊那市に本社を構えるハナマルキ株式会社が開発した「液体塩こうじ」は、従来の粒状の塩こうじを使いやすく改良した画期的な商品です。同社はこの「酵母発酵液体塩こうじ」に関してインドネシアで特許を取得し、東南アジア市場へのさらなる展開を進めています。本稿では、この特許取得の背景と意義、さらには同社のグローバル戦略について詳しく解説します。
液体塩こうじの開発背景と特徴
ハナマルキが「液体塩こうじ」を開発したのは2012年のことです。それまでの粒状の塩こうじは、そのまま使用すると舌触りが悪く、また調理の際に均一に混ざりにくいという欠点がありました。そこで、ハナマルキは独自の発酵技術を活かし、液体化することでこれらの問題を解決しました。
「液体塩こうじ」は、米こうじと塩、水を原料とし、特定の酵母発酵技術を用いることで、独特の旨味と甘みを生み出しています。さらに、以下のような利便性が向上しました。
◯ 計量しやすく、使いやすい
液体状であるため、スプーンや計量カップで簡単に計量でき、料理に取り入れやすい。
◯溶けやすく、均一に味がなじむ
粒状の塩こうじと違い、食材に均等に行き渡るため、味ムラが少なくなる。
◯素材の柔らかさを引き出す
塩こうじに含まれる酵素の力で、肉や魚が柔らかくなり、より美味しくなる。
◯非加熱製法による酵素の活性保持
非加熱製法を採用することで、酵素の働きを最大限に活かし、素材の旨味を引き出す力を強化している。
このように、従来の塩こうじよりも使い勝手が向上し、さまざまな料理に応用できることから、国内外で高い評価を得ています。
インドネシアでの特許取得の背景
ハナマルキは、2015年にタイに現地法人「ハナマルキ・タイランド」を設立し、海外市場への本格的な進出を開始しました。その後、東南アジアを中心に事業を拡大し、「液体塩こうじ」の輸出量は2017年には前年比約6倍に拡大しました。
インドネシアは、世界最大のイスラム教徒人口を擁し、東南アジアの中でも経済成長が著しい国の一つです。食文化の面では、伝統的に発酵食品が親しまれており、日本の醤油や味噌といった発酵調味料にも馴染みがあります。こうした背景から、ハナマルキはインドネシア市場を重要視し、同国内での事業展開を積極的に進めることを決定しました。
その一環として、「酵母発酵液体塩こうじ」に関する特許を取得しました。この特許は、同社が開発した独自の酵母発酵技術を保護し、競合他社による模倣を防ぐことを目的としています。特許取得により、インドネシア市場での優位性を確保し、同国の食品業界への本格的な参入を実現することが可能となりました。
ハラール認証の取得とイスラム市場への対応インドネシア市場で成功するためには、イスラム教の戒律に従った「ハラール認証」を取得することが不可欠です。ハナマルキはこの点にもいち早く対応し、2021年9月にインドネシアの認証機関「LPPOMMUI」よりハラール認証を取得しました。
ハラール認証を取得した「HA液体塩こうじ」は、以下のような特徴を持っています。
◯酒精無添加
酵母発酵の技術を駆使することで、酒精(アルコール)を使用せずに発酵を促進。これにより、イスラム教徒でも安心して使用できる商品となっている。
◯アミノ酸含有量が約1.7倍に増加
発酵技術の改良により、旨味成分であるアミノ酸の量が大幅に増加し、食材の美味しさを引き出す力が向上。
◯ 麹特有の香りを低減
エステル香を生成する酵母を活用することで、麹特有の発酵臭を抑え、さまざまな料理に使いやすなった。
◯ 白濁しにくく、見た目が美しい
加熱時に白く濁る現象が少なく、特にスープやドレッシングなどに使用する際に視覚的な違和感がない。
これにより、日本食の枠を超えて、東南アジアのローカルな料理にも適用可能となり、より幅広い市場での受け入れが期待されています。
今後の展望と市場戦略
ハナマルキは、インドネシアでの特許取得とハラール認証の取得を契機に、さらに以下のような戦略を展開する予定です。
1. 東南アジア全域への販売拡大
インドネシアだけでなく、マレーシア、シンガポール、タイなどの近隣国へも輸出を拡大し、東南アジア全域でのブランド認知度向上を目指す。
2. 現地パートナーとの協力
インドネシアの食品メーカーやレストランチェーンと提携し、液体塩こうじを活用したメニュー開発を推進。
3. オンライン販売の強化
インドネシアではEC市場が急速に成長しており、ShopeeやTokopediaといったオンラインプラットフォームを活用して、消費者への直接販売を強化。
まとめ
ハナマルキの「酵母発酵液体塩こうじ」は、伝統的な発酵技術を現代のニーズに適応させた革新的な商品です。インドネシアでの特許取得は、同社の国際戦略の中でも重要な一手であり、特に東南アジア市場での競争力を高める要因となります。ハラール認証の取得と合わせ、今後のさらなる市場拡大が期待される中、日本発の発酵調味料がどのようにグローバルに広がっていくのか、引き続き注目が集まります。