ゲームの楽しさを維持しつつ、課金しすぎを制限できる?

過度な課金を防ぎつつもゲームの楽しさを低下させないプログラム

ゲームの楽しさを維持しつつ、課金しすぎを制限できる?

ゲームの楽しさを維持しつつ、課金しすぎを制限できる?

ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)型のネットワークシステムを利用した、いわゆるソーシャルゲーム(ソシャゲ)は、スマートフォンなどの携帯型情報通信端末をプラットフォームとして広く普及し、若者だけでなく、年代を問わず楽しまれています。

ユーザーは、スマホを介して、他のユーザーとの間で格闘ゲーム、戦闘ゲーム、RPGなどのゲームを、いつでも、どこにいても楽しめるというわけです。

また、最近ではSNS等を利用してユーザーが指定したアイテムや音楽、画像などの各種アイテムデータをユーザーに提供するマーケットや、様々なアイテムの中からランダムにユーザーへ提供を行う抽選イベント(いわゆるガチャ)も登場してきました。

ところで、上記ガチャイベントというものは、アイテムを獲得するための娯楽性はあるものの、ガチャを引くこと自体が射幸心(幸運を得たいと願う、人間の本質的な心理的欲求のこと)を強く煽る構造にもなっており、プレイヤーによっては希望するアイテムを獲得するまで、繰り返しガチャを実行させてしまい、結果として高額な課金が生じてしまう要因にもなっています。

特に、現在ソーシャルゲームで行われているガチャシステムにおいては、当選確率の低い「レアアイテム」を獲得可能に設定することによって、より高額な課金の要因になっているといえます。

そこで、ゲーム業界大手のバンダイナムコエンターテインメント社は、ガチャシステムのような射幸心を煽ることによって生じる過度な課金を制限する一方で、課金に基づいてゲームを進行させる場合の楽しさや利点を低下させないシステムを発明し、一度も拒絶理由通知を受けることなく特許を取得しました(いわゆる一発特許査定)。

発明の内容は、ゲームの制御サーバーにおいて、プレイヤーごとの課金履歴を管理し、一定の期間内における累積課金額をプレイヤーごとに算出させ、所定の上限額に達したかどうかを判定します。

上限額に達したプレイヤーは、それ以上の課金は制限されますが、上記「一定の期間内」において、上限金額までの到達時間に応じて、残り期間におけるゲームの進行に係る特典を、到達プレイヤーに付与することとしました。

これにより、射幸心を煽ることによって生ずる過度な課金を制限する一方で、単位会計期間における累積課金額が予め定められた上限額に達したプレイヤーに、特典を付与することができます。

そして到達プレイヤーには、得られた特典を使用することで、ゲームを容易に進行可能にできるなどの優位性をもたせることで、上限額到達までの課金によって得られた面白さ(興趣性)を、新規の課金をすることなく維持することができるというわけです。

このようなゲーム内の仕組みや考え方も、所定の特許要件を満たせば特許権を得ることができるのですね。

私達がなにげなく遊んでいるスマホゲームにも、たくさんの特許が絡んでいるかもしれません。

従来、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では、ソーシャルゲームと呼ばれるオンラインゲームが提供されている。

また近年、SNSを利用して、ユーザが指定したアイテムや画像などの各種データをユーザへ提供したり、様々なアイテムの中からランダムに選択されたものをユーザへ提供する抽選イベント(ガチャイベント)なども登場した。

しかしこのようなシステムでは、獲得するための抽選という娯楽性があるものの、射幸心を煽る構造にもなっており、プレーヤによっては希望するアイテムを獲得するまで繰り返しガチャを実行して高額の課金が生じてしまう要因にもなっている。

本発明は、プレーヤの射幸心を煽ることにより生ずる過度な課金を制限する一方で、当該課金に基づいてゲームを進行する場合の興趣性や利点を低下させない仕組みを提供することが可能なサーバシステム及びプログラムを提供する。

本発明のポイントは以下より構成されるサーバシステム及びプログラムである。

・ゲームの進行を制御するゲーム制御部、
・プレーヤの課金履歴を管理する管理部、
・課金履歴に基づき単位会計期間内における累積課金額を算出する算出部、
・累積課金額が所与の上限額に到達したか否かを判定する判定部、
・累積課金額が前記上限額に到達したプレーヤによる課金要素の購入制限する制限部、
・ゲームの進行に関わる特典を、上限額に到達したプレーヤへ付与する特典制御部

本発明の更なるポイントとして、以下が挙げられる。

・特典制御部は、単位会計期間における所要時間に応じて特典の価値を設定する
・特典制御部は、単位会計期間における所要時間に応じてイベント参加権の回数を設定する
・特典制御部は、単位会計期間における所要時間に応じて、イベント参加権の有効期限を設定する

本発明のゲームシステムを図1に示す。

【図1】本発明のゲームシステムの概要図

図1に示すように、本発明のゲームシステムは、ゲームサーバ10、端末装置20(例えば、20A~C)及び認証サーバ30が、インターネットなどのネットワークに接続可能な状態で構成される。

端末装置20は、ネットワークを介してゲームサーバ10との通信を確立し、ゲームデータの送受信を行いながらゲームを実行する。

認証サーバ30は、プレーヤからゲームサーバ10の運営者に対する通貨の支払い処理を行う。

図2に本発明のゲームサーバ10の機能ブロックを示す図を示す。

【図2】 ゲームサーバ10の機能ブロック図

ゲームサーバーのブロック図

ゲームサーバ10は、入力に用いる入力部120、所定の表示を行う表示部130、所定の情報が記憶された情報記憶媒体180、端末装置20などと通信を行う通信部196、処理を実行する処理部100、および各種データを記憶する記憶部140を含む。

情報記憶媒体180(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであって、光ディスクや磁気ディスク或いはメモリなどにより構成される。

通信部196は外部(他のサーバや他のネットワークシステム)との間で通信を行うための各種制御を行うものであり、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログラムなどにより構成される。

記憶部140は、処理部100や通信部196などのワーク領域となるもので、その機能は、RAM(VRAM)などによって構成される。

ゲーム管理部103は、端末装置20における各種のゲームを実行させるための制御を行う。

特に、プレーヤが所有する端末でゲームを実行する場合には、プレーヤ情報146に含まれるパラメータに基づき、端末装置20と連動させてゲームを実行する処理を行う。

プレーヤ管理部107は、ゲーム管理部103と連動してプレーヤ情報146を管理し、当該プレーヤ情報146に基づいて、ゲーム毎のアイテムやスコアなど、ゲームの実行における必要な処理を実行する。

端末装置

本発明の端末装置20を図3に示す。

【図3】 端末装置20の機能ブロック図

入力部260は、プレーヤの情報を入力するためのものであり、例えば、レバー、ボタン、タッチパネル、キーボード、マウスなどより構成される。

記憶部270は、処理部200や通信部296などのワーク領域となるもので、RAM(VRAM)などにより構成される。

情報記憶媒体280は、プログラムやデータを格納するものであり、光ディスクや光磁気ディスクなどにより構成される。

表示部290は、本発明により生成された画像を出力するものであり、タッチパネル型ディスプレイやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などにより構成される。

音出力部292は、本発明により生成された音を出力するものであり、スピーカ或いはヘッドフォンなどにより構成される。

通信部296は外部(他の端末やサーバ)との間で通信を行うための各種制御を行うものであり、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェア、プログラムなどにより構成される。

処理部200は、入力部260からの入力情報やプログラムなどに基づいて、ゲーム処理、表示制御、画像生成処理、或いは音生成処理などの処理を行う。

通信制御部210は、ゲームサーバ10とデータの送受信を実行する各種の処理を行う。

また、通信制御部210は、ゲームサーバ10から受信したデータを記憶部270に格納する処理、受信したデータを解析する処理、その他のデータの送受信に関する制御処理等を行う。

Webブラウザ211は、Webページ(ゲーム画面)を閲覧するためのアプリケーションプログラムであって、Webサーバから、HTMLファイルや画像ファイル等をダウンロードし、レイアウトを解析して表示制御する。

ゲーム処理部212は、種々のゲーム演算処理を行う。

例えば、ゲーム処理部212は、所定のゲーム開始条件が満たされた場合にゲームを開始する処理、ゲームを進行させる処理、キャラクタやマップなどのオブジェクトを配置する処理、オブジェクトを表示する処理、ゲーム結果に対応するスコアを演算する処理、

及び、ゲーム終了条件が満たされた場合にゲームを終了する処理などを行う他に、ゲーム終了後、ゲームの結果に応じてプレーデータを生成する機能を含む。

描画部220は、処理部200で行われる種々の処理の結果に基づき描画処理を行い、これにより画像を生成し、表示制御部213によって表示部290に出力する。

描画部220が生成する画像は2次元画像であってもよいし、3次元画像であってもよい。

表示制御部213は、ゲーム画面制御部216で生成されたゲーム画面を、表示部190に表示する処理を行う。

以下、ゲームシステムに表示される各画面について順に説明する。

ホーム画面

プレーヤ端末装置20の表示部290に表示されるホーム画面の一例を図4に示す。

【図4】 端末装置20に表示されるホーム画面の一例

ホーム画面には、プレーヤが各種の画面を呼び出すためのボタンの他、ゲームサーバ10よりプレーヤに通知される各種情報が掲載される。

この告知情報の内容は、プレーヤ管理部107が生成したものである。

図4では、「5/10までに50000コイン分の課金要素を購入したら特典を獲得できる旨」が告知されている。

この情報は、単位会計期間に累積課金額が限度額に到達した場合にプレーヤへ特典が付与される旨を告知するものである。

イベント開始画面

ガチャイベントの開始画面の一例を図5に示す。

【図5】 ガチャイベントの一例を示す図

イベント開始画面が表示部290に表示されるタイミングは、図5に示すイベント告知画面の所定領域をプレーヤがタップした場合などである。

またこのイベント開始画面には、ガチャの実行に必要なゲームマネー額のボタンが配置されている。

プレーヤ通知画面

【図6(A)~(D)】 プレーヤへの各種通知画面

ゲームマネーの残額(チャージ額)が不足の通知

図6(A)は、ゲームマネーの残額(チャージ額)が不足している旨をプレーヤへ通知する通知画面の一例である。

この通知画面が表示部290に表示されるタイミングは、例えば、プレーヤがガチャ要求を端末装置20へ入力した場合であって、かつ、その時点において当該プレーヤのゲームマネー口座の残高が不足しておりガチャが実行できないような場合である。

なお、この通知画面には、チャージ画面を呼び出すためのボタンと、ガチャの実行を中止するための終了ボタンが配置されている。

ゲームマネーの累積課金額が限度額に到達した旨の通知

図6(B)は、ゲームマネーの累積課金額が限度額に到達した旨をプレーヤへ通知する通知画面の一例である。

この通知画面が表示部290に表示されるタイミングは、例えば、プレーヤがガチャ要求を端末装置20へ入力した場合であって、かつ、その時点で既にゲームマネーの累積課金額が限度額に到達していた場合である。

この通知画面には、ゲームマネーの累積課金額が限度額に到達しているので新たな購入はできないものの、到達時に付与された特典の使用によりガチャの実行が可能である旨、プレーヤへ通知するための情報が掲載される。

特典を獲得するために必要な購入額(ガチャ回数)をプレーヤへ通知

図6(C)は、特典を獲得するために必要な購入額(ガチャ回数)をプレーヤへ通知する通知画面の一例である。

この通知画面が表示部290に表示されるタイミングは、例えば、プレーヤが実際にガチャを実行した後であって、単位会計期間内におけるゲームマネーの累積課金額が依然として限度額に到達していない場合である。

特典が付与された旨の通知

図6(D)は、現在の単位会計期間内における限度額にゲームマネーの累積課金額が到達した旨(特典が付与された旨)をプレーヤへ通知する通知画面の一例である。

この通知画面が表示部2 9 0 に表示されるタイミングは、例えば、プレーヤが実際にガチャを実行した後であって、単位会計期間内におけるゲームマネーの累積課金額が限度額に到達したタイミングである。

本発明によれば、プレーヤの射幸心を煽ることによって生ずる過度な課金を制限する一方で、単位会計期間における累積課金額が予め定められた上限額に到達した場合に、到達を果たしたプレーヤへ特典を付与することができる。

発明の名称:サーバシステム及びプログラム
出願国:日本
出願番号:特願2016-112925
公開番号:特開2017-219973
特許番号:特許第6722516号
出願日:2016年6月6日
公開日:2017年12月14日
登録日:2020年6月24日
出願人:株式会社バンダイナムコエンターテインメント
経過情報:登録
その他情報:分割出願をしている。・特許出願 2020-106869
IPC:G06Q 50/10(2012.01),A63F 13/35(2014.01),63F 13/792(2014.01),A63F 13/69(2014.01),G06Q 30/02(2012.01)

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。