ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池:さらなる光電変換効率の向上へ


次世代太陽電池技術の最有力候補として注目されるペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池は、従来の太陽電池の光電変換効率を大きく上回ることが明らかになってきました。この革新的デバイスの実用化に向け、すでに様々な製造技術が開発されています。今回紹介する米国特許US11251324B2もその一つです。

https://patents.google.com/patent/US11251324B2/

本コラムでは、ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池の概略と、その製法に関する米国特許US11251324B2の概要について解説します。

ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池とは?

ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池は、太陽光を電気に変換するペロブスカイト材料の薄膜層と、既存の結晶シリコン太陽電池の層を積層したハイブリッド型の太陽電池です。

単接合型のシリコン太陽電池は、すでに広く商用利用されていますが、その光電変換効率には限界があります。これに対し、ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池は、異なるバンドギャップを持つ2つの単接合太陽電池を組み合わせることで、より広範囲の太陽光スペクトルを効率的に利用することを目指します。

ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池では、ペロブスカイト層が高エネルギー側の短波長光(主に青色光から緑色光)を効率よく吸収し、ペロブスカイト層を透過した長波長光(主に赤色光から近赤外光)をシリコン層が吸収するという相補的な関係により、太陽光スペクトル全体を無駄なく利用します。

従来の効率とタンデム型による効率向上

ペロブスカイト太陽電池単独の変換効率は、近年急速に進歩しており、研究レベルでは25%を超える報告がされています。例えば、経済産業省が主導する「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」の資料によれば、ペロブスカイト太陽電池の最高効率は26.7%とされています。

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/pdf/20241128_1.pdf

一方で、結晶シリコン太陽電池の効率は低いとされており、この課題を克服するため、異なるバンドギャップを持つ吸収層を有する2つの単接合太陽電池を直接接続して構築される「タンデム太陽電池」の開発が活発に進められているのです。

そして、この特許による製法で作られたペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池は、従来の単独型ペロブスカイト太陽電池の最高効率を上回り、30%を超える光起電力効率を達成するとされています。

特許US11251324B2の技術概要

米国特許US11251324B2のタイトルは「Method for manufacturing perovskite silicon tandem solar cell」です。韓国のLGエレクトロニクス社によって発明され、特許取得後、2022年にLGグループが太陽電池事業から撤退したことに伴い、特許が移転されました。現在の特許権者は中国のメジャー太陽電池メーカーであるジンコソーラー社の子会社である、「Shangrao Xinyuan Yuedong Technology Development Co Ltd」となっています。この特許は、ペロブスカイト太陽電池をシリコン太陽電池の上に積層・接合するモノリシックタンデム太陽電池の製造方法を開示するものです。

この製造方法の概略は以下の通りです。

  • テクスチャ構造を有するシリコン基板上に、RF(無線周波数)スパッタリング法によって微細多孔質(microporous)の第一前駆体薄膜を形成します。
    • この第一前駆体薄膜はBX2​構造を有します。Pb, Sn, CuなどがBとして、そしてF, Cl, Br, IなどのハロゲンがXとして含まれます。
    • その後、スパッタリングプロセスにより、基板のテクスチャ構造が微細多孔質第一前駆体薄膜に忠実に転写されます。
  • 微細多孔質第一前駆体薄膜の上に、ハロゲン化物薄膜を形成します。
    • このハロゲン化物薄膜の形成には、熱蒸着法、スパッタリング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、化学気相堆積法、スプレー法など、様々な方法が適用可能です。溶液は用いません。
  • その後、熱処理(post-thermal process)を行うことで、ペロブスカイト吸収層が形成されます。

この製造方法の重要な利点は、以下の点にあります。

  • 光吸収率の顕著な向上
    従来の液相法(溶液プロセス)では、溶液の性質上、テクスチャ構造の平坦化現象(レベリング)が起こり、光吸収率が低下する問題がありました。本特許のスパッタリングによる方法では、基板のテクスチャ構造をペロブスカイト層にコンフォーマルに(形状を維持したまま)転写できるため、光の反射率を低減し、光の経路長を増大させることで、光吸収率を効果的に高めることが可能です。
  • 薄膜品質の改善と効率向上
    本製造方法により、薄膜の損傷やピンホールなどの欠陥が抑制されるため、優れた薄膜品質のペロブスカイト層を形成でき、結果としてタンデム太陽電池の効率を向上させることができます。

まとめ

米国特許US11251324B2は、スパッタリングでペロブスカイト吸収層を形成するという、ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池の製造における重要な技術革新を示しています。この技術により、30%を超える光起電力効率を目指すことが可能になります。光の吸収波長範囲の拡大と、高品質な薄膜形成による効率向上は、再生可能エネルギーの未来を大きく左右する重要な要素となるはずです。

 

 



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