弱点を生成するためのシステム

単調なリソース集めを退屈させないアイデア特許
先の見えない外出自粛が続いていますが、そのような背景から、オンラインゲームを新たに始めた方も多いのではないでしょうか。
時間はたっぷりあるけど外に遊びにいくわけにもいかない、という方にとってはゲームの世界はとても魅力的ですよね。
ところで、世界的なヒットとなっているフォートナイトやRUSTなど、多くのゲームでは、他のプレイヤーよりも優位に立ったり、または「建築」を行ったり、アイテムの生成を行うために、いわゆる「リソース(原料)」の収集をしなければなりません。
ロールプレイングゲームで敵を倒して得られる「経験値」に近いかもしれませんが、リソース集めをたくさん行ってリソースを貯め込むことによって、望みの報酬やアイテム等が得られるというわけです。
しかし、これらのリソース集めは、時間がかかる割には、単調で退屈な作業を延々としないといけないという側面があり、この点がゲームの面白さを半減させてしまうという現状がありました。
そして、その単調さからか、リソース収集を簡易化するような不正改造プログラム(チートコード)まで出回るようになっているのです。
そこで、米国のゲーム会社大手EPIC GAMES INC.は、リソース収集の単調さをなるべく回避するための特許を出願し、2017年8月29日に米国特許庁USPTOにて特許が認められました。この特許は一見非常に単純です。
リソース収集のためには、ゲーム内においてプレイヤーは所定の構造物(車や岩石など)を、武器やツルハシなどを使って破壊していく必要があるのですが、このとき、破壊対象の構造物の「弱点」が表示されるようにし、ここをピンポイントで叩くことで多くのダメージが入ったり、短時間で構造物を破壊してリソースを入手できるようにしました。
このようにすることで、ただ単純に構造物を叩いて破壊するというだけでなく、弱点を探して効率的にリソースを集めるという新たな目的が生まれ、これにより退屈さを回避することができるようになったのです。
このようなゲーム内の仮想的な仕組みについても、しっかりと審査がされ、特許が認められています。
私達が普段なにげなく遊んでいるゲームにも、たくさんの特許がひそんでいるかもしれませんね。
画像表示システム

現実世界の映像にリアルタイムで仮想世界映像を融合させる
昨今のVR/AR技術の進歩と一般化によって、家庭用ゲーム等のハードウェアとしてヘッドマウントディスプレイ(HMD、VRゴーグルともいわれています)は気軽に購入できる機器となってきました。
初期のHMDは仮想現実の世界のみを見せるものでしたが、昨今では現実世界の映像情報に仮想世界の映像情報をリアルタイムで融合させることのできる装置として一般的に認知されています。
しかし、従来のHMDでは、仮想世界の映像情報を表示することができても、その映像情報を装着者の動き(特に手や足の動き)に合わせて変化させることができず、映像への没入感や臨場感を高めることができませんでした。
そこで、meleap社(東京都港区)は、装着者の位置と動きに応じてHMDに表示する映像情報を制御することのできるシステムを開発し、2016年1月15日に特許出願し、2018年6月12日に特許査定を受け、2018年7月6日に特許登録となりました(特許第6362631号、権利存続中)。
また、世界153カ国を指定国とした国際特許出願も行っています。(国際公開番号:WO2017/122367)
この発明では、プレイヤーから見えるAR視野に対して、HMDが有するカメラによってリアルタイムで撮影した現実世界の映像情報と、CGで生成された仮想世界の映像情報をミックスして映し出し、
さらに、プレイヤーが自らの身体を動かすことで、その動きに応じたコマンドを発動することができるようにしました。
さらに、HMDのカメラとは異なるカメラを用意し、少し離れた場所からプレイヤー自身を撮影することによって、
例えばHMDのAR視野内でプレイヤーとモンスターが戦っている場合、第三者の視点でプレイヤーとモンスターとを両方表示させて、観客の視点で見ることもできるようにしました。
これにより、プレイヤーとモンスターとの戦いを「観戦」することができ、プレイヤーと観客との一体感を強めることができるのです。
プレイヤーはHMDを頭部(眼部)につけ、腕や足にはモーションセンサーを装着します。モーションセンサーが検出する動きに対応してコマンドを割り当てることができ、
例えば両腕を顔の前でクロスさせる動きが「防御」、腕を前方に素早く突き出す動きが「攻撃」、腕を素早く揺さぶる動きが「武器の切り替え」といった複数のコマンドが考えられます。
HMDや外部カメラとしては一般的なスマートフォンなどの携帯端末でよく、このような端末を用いてリアルタイムでのCG生成とサーバとの通信を同時に行うことができます。
既に一般的に普及した機器であるスマホを使って、このような仮想空間を観客と一緒に楽しめるようになると、自宅でのゲーム時間も孤独感なく過ごせそうですね。
過度な課金を防ぎつつもゲームの楽しさを低下させないプログラム

ゲームの楽しさを維持しつつ、課金しすぎを制限できる?
ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)型のネットワークシステムを利用した、いわゆるソーシャルゲーム(ソシャゲ)は、スマートフォンなどの携帯型情報通信端末をプラットフォームとして広く普及し、若者だけでなく、年代を問わず楽しまれています。
ユーザーは、スマホを介して、他のユーザーとの間で格闘ゲーム、戦闘ゲーム、RPGなどのゲームを、いつでも、どこにいても楽しめるというわけです。
また、最近ではSNS等を利用してユーザーが指定したアイテムや音楽、画像などの各種アイテムデータをユーザーに提供するマーケットや、様々なアイテムの中からランダムにユーザーへ提供を行う抽選イベント(いわゆるガチャ)も登場してきました。
ところで、上記ガチャイベントというものは、アイテムを獲得するための娯楽性はあるものの、ガチャを引くこと自体が射幸心(幸運を得たいと願う、人間の本質的な心理的欲求のこと)を強く煽る構造にもなっており、プレイヤーによっては希望するアイテムを獲得するまで、繰り返しガチャを実行させてしまい、結果として高額な課金が生じてしまう要因にもなっています。
特に、現在ソーシャルゲームで行われているガチャシステムにおいては、当選確率の低い「レアアイテム」を獲得可能に設定することによって、より高額な課金の要因になっているといえます。
そこで、ゲーム業界大手のバンダイナムコエンターテインメント社は、ガチャシステムのような射幸心を煽ることによって生じる過度な課金を制限する一方で、課金に基づいてゲームを進行させる場合の楽しさや利点を低下させないシステムを発明し、一度も拒絶理由通知を受けることなく特許を取得しました(いわゆる一発特許査定)。
発明の内容は、ゲームの制御サーバーにおいて、プレイヤーごとの課金履歴を管理し、一定の期間内における累積課金額をプレイヤーごとに算出させ、所定の上限額に達したかどうかを判定します。
上限額に達したプレイヤーは、それ以上の課金は制限されますが、上記「一定の期間内」において、上限金額までの到達時間に応じて、残り期間におけるゲームの進行に係る特典を、到達プレイヤーに付与することとしました。
これにより、射幸心を煽ることによって生ずる過度な課金を制限する一方で、単位会計期間における累積課金額が予め定められた上限額に達したプレイヤーに、特典を付与することができます。
そして到達プレイヤーには、得られた特典を使用することで、ゲームを容易に進行可能にできるなどの優位性をもたせることで、上限額到達までの課金によって得られた面白さ(興趣性)を、新規の課金をすることなく維持することができるというわけです。
このようなゲーム内の仕組みや考え方も、所定の特許要件を満たせば特許権を得ることができるのですね。
私達がなにげなく遊んでいるスマホゲームにも、たくさんの特許が絡んでいるかもしれません。
総評
今回紹介された特許らは全てゲーム内の技術でしたね!
私はフォートナイトをよくプレイしますので、その特許に関してはすごくイメージがわきました。
ゲーム内の特許は、リアルビジネスへの応用はなかなか難しいなぁ~との印象を持ちました。
やはり、ゲーム内での処理や表現の特許なので、他分野での展開は想定しずらいですよね。
ですが、ゲームの業界に絞った場合であれば、利用シーンが変わっても中心的な役割となる特許もあると思います!
例えば、、、
「単調なリソース集めを退屈させないアイデア特許(特許番号:US9744461B1)」
これに関しては、「ゲーム内の物体の弱点が移動する」点がポイントなので、
それを応用すれば「相手より早く壁を壊しながら進んでいくゲーム」や「シューティングゲームで敵の急所が変わり、狙う的が都度変わる」などなど、、、
現状のゲーム内ではサブ的な役割ですが、この特許部分をメインにしたゲームも考えられますよね。
(実際、この特許があるから、他社が表現できないことも多そうな気がします。)
また、現実世界の映像にリアルタイムで仮想世界映像を融合させる特許(特許番号:特許6362631)は、「リアル空間で動かした手の動きに仮想のオブジェクトを追従させ、その仮想オブジェクトで、相手に衝突判定を与える」点がポイントです。
文献では、主にドラゴンボールの様な格闘ゲームの利用イメージで書かれていましたが、
例えば、「ドッジボール」などのスポーツをVR上で行う場合の応用も考えられます。
先月、Electronic Arts社からリリースされた、ドッジボールゲーム型オンラインゲーム「Knockout City」が話題になっていますが、このゲームをVR上で再現しようとすると本特許の技術を応用できのではないでしょうか。
この特許に関しては特許範囲が広く、ゲームだけではなくVR上での職業訓練やイベント体験への応用にも期待が高まりますね。