韓国、中国の「特許ただ乗り」に対抗 バッテリー特許戦争の幕開け


電気自動車需要の停滞が長期化する中、バッテリー業界では世界的な競争が激化し、特許を巡る「戦争」の可能性が浮上しています。韓国のバッテリー企業は、中国など後発の競合が特許の無断使用を通じて海外市場進出を拡大している状況に対し、知的財産権(IP)を武器に阻止する構えを見せています。

特許人材の確保で競争激化

業界によれば、車載用電池市場シェアで世界トップを争う中国のCATLと韓国のLGエナジーソリューションは、欧州で特許管理者や弁理士などIP関連の人材採用競争を繰り広げています。両社は欧州での特許侵害訴訟やライセンス契約の活性化に備えていると見られます。

韓国企業の特許戦略

LGエナジーソリューションは、バッテリー素材や工程、バッテリーマネジメントシステム(BMS)技術に関する特許侵害を把握し、警告状を送るなど強硬な姿勢を見せています。同社が保有する特許のうち、侵害が確認されたものは580件に上るとされています。

また、特許侵害への対応として、LGエナジーソリューションはハンガリーの特許管理専門会社チューリップ・イノベーションと連携し、ライセンスプログラムを展開。韓国と日本が協力して、中国の特許侵害を牽制する取り組みを進めています。

欧州統一特許裁判所での訴訟の可能性

特許侵害が解消されない場合、LGエナジーソリューションは欧州統一特許裁判所(UPC)を通じて訴訟を提起する見通しです。同裁判所を活用することで、加盟国全体で製品販売禁止などの措置が可能になり、特許侵害訴訟が効果的な手段となると予測されています。

中国への価格競争力対策

韓国のバッテリー業界では、三元系技術の特許侵害を防ぐことで、中国企業の海外市場での成長を抑制できると見ています。韓国のエネルギー工学専門家は、「特許交渉を通じて中国の価格競争力を下げ、韓国のバッテリー産業を守ることが重要」と指摘しています。

特許活用で新たな収益源へ

特許を基にしたライセンス市場の拡大は、韓国企業にとって未来の収益確保の手段ともなり得ます。LGエナジーソリューションは累積特許3万6570件、サムスンSDIは2万1571件を保有しており、これを活用すれば毎年数兆ウォン規模の収益が見込める可能性があります。


Latest Posts 新着記事

「広告を見るだけでお得に?」特許技術が生む新時代のリテールメディア

リテールメディアの進化と消費者還元の流れ 近年、小売業界において「リテールメディア」の重要性が高まっている。リテールメディアとは、小売業者が自社の販売データや購買履歴を活用し、広告主にターゲティング広告を提供するマーケティング手法を指す。AmazonやWalmartを筆頭に、世界中の小売企業がこのモデルを取り入れている。 しかし、多くのリテールメディアは広告主と小売業者の利益を重視しており、消費者...

インフォメティス、NEC特許獲得で電力データ分野のグローバ ルリーダーへ

近年、エネルギー業界では、再生可能エネルギーの普及や電力供給の効率化に向けた取り組みが急速に進展しています。その中で、電力データの高度な利活用がカギとなり、特にAI技術やスマートグリッドの活用が重要視されています。インフォメティス株式会社は、NECが保有していた特許を譲受することによって、この分野での競争力を一層強化し、グローバルな事業拡大を目指しています。本コラムでは、インフォメティスが反発を乗...

韓国LCC再編の波— ティーウェイ航空、ソノグループ傘下で新ブランド「SONO AIR」へ

韓国の格安航空会社(LCC)であるティーウェイ航空が、大きな経営転換を迎えようとしています。国内最大のリゾート企業であるソノグループ(旧大明グループ)の子会社、ソノ・インターナショナルがティーウェイ航空の経営権を取得し、社名変更を検討しているとの報道が相次いでいます。本稿では、その背景や経営権取得の経緯、そして今後の展望について詳しく解説します。 経営権取得の経緯 2025年2月26日、ソノ・イン...

「特許取得技術搭載!屋外でも快適なWi-Fiを実現するAX3000メッシュWi-Fi「Deco X50-Outdoor」」

はじめに インターネットの普及とともに、Wi-Fi技術も日々進化し、私たちの生活をより快適に、効率的にしています。特に、Wi-Fi 6(802.11ax)規格の登場は、通信速度や接続の安定性に大きな進歩をもたらしました。 しかし、多くの家庭やオフィスでは、Wi-Fiの電波が届きにくいエリアや、屋外での利用が難しいという課題があります。屋内だけでなく、庭やバルコニーなどの屋外でのインターネット接続の...

大学転職時の特許の扱いで国が初指針 「研究者に返還」選択肢に

はじめに 日本の大学における知的財産の管理は、これまで大学側の裁量に大きく依存していた。しかし、研究者が大学を転職する際に特許の権利がどのように扱われるかは明確でなく、トラブルが発生するケースもあった。こうした状況を受け、政府は初めて大学の転職時における特許の扱いについて指針を策定し、「研究者に特許を返還する」という選択肢を明示した。 本稿では、この新指針の内容と意義、そして研究者や大学、企業が直...

特許出願の減少は技術停滞のサインか? 2025年最新データを解説

2025年1月から2月にかけて、日本における発明特許の登録件数が前年同期比で15.97%減少したことが報告されています。これは、特許出願を取り巻く環境が変化していることを示唆しており、企業の研究開発活動や経済状況に影響を与える可能性があります。本稿では、この減少の背景を探るとともに、世界的な特許出願の動向と今後の展望について詳しく考察します。 1. 2025年初頭における特許出願件数の減少傾向 特...

特許出願でEV技術の最前線へ!トヨタが欧州特許庁のランキングで2位

欧州特許庁(EPO)は2024年の特許指数を発表し、日本の自動車メーカー・トヨタ自動車が電気自動車(EV)関連技術において世界第2位となったことが明らかになった。本コラムでは、トヨタの特許出願動向、技術戦略、そして今後の展望について詳しく解説する。 1.トヨタの特許出願動向 EPOの発表によると、2024年におけるトヨタ自動車の特許出願数は、EV技術分野で世界第2位となった。 トヨタはこれまでハイ...

BMS、特許切れでも2032年に売上倍増の目標達成へ—新製品に賭ける自信

ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)は、2032年までに売上を倍増させるという強気の目標を掲げている。特許切れが迫る主力品による売上減少を予測しながら、同社がこのような高い成長目標を設定する背景には、強力な新製品パイプラインと戦略的なM&A(合併・買収)戦略がある。本稿では、ブリストルの戦略を主力製品の特許切れ、業界動向、新薬開発の進展と絡めて分析し、同社がどのようにして成長を維持し...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

大学発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る