AIによるアイデア共創プラットフォーム「ideaflow」を知財図鑑が発表


知財図鑑がAIを使ったアイデア共創プラットフォーム「ideaflow」を発表

株式会社知財図鑑は、AIを活用した新規事業のアイデア共創プラットフォーム「ideaflow(アイデアフロー)」を2024年6月25日に発表しました。特許情報から未来型の事業アイデアを創出するこのサービスは、特許を保有する企業や大学を対象に機能を限定したベータ版で提供を開始します。2024年度下期には、オープンなWebサービスとして提供範囲を拡大させる予定です。

ideaflowとは

「ideaflow(アイデアフロー)」は、公開されている特許情報から、その技術を活用した事業アイデアを大量に作成するWebサービスです。生成AIを活用し、特許の要約とアイディエーションを瞬時に行います。Webブラウザ上で簡単に操作できるため、企業規模やスキルに関係なく、導入後すぐに新規事業の創出に活用することが可能です。

ideaflow(ベータ版)の主な機能

1. 特許の要約: 公開されている特許番号から、ChatGPTをはじめとしたAIが瞬時に特許の内容を要約します。難解な特許をわかりやすく翻訳することで、AIと人間が共創して事業アイデアを作成する土台となります。

2. 事業アイデアの提案: 特許情報と、ビジネスを検討したい産業分野を指定することで、AIが未来の事業アイデアを作成します。飛躍的なアイデアから、現実的なアイデアまで幅広く方向性を示すことで、ユーザーの期待値に寄り添ったアイディエーションが可能です。

3. 事業アイデアを可視化: 事業アイデアは、「価値・ターゲット・長所・短所・リスク」など多角的な観点で記載され、新規性・市場性・実現可能性についてAIが自己評価を施します。利用シーンを描いたビジュアルを同時に作成し、アイデアを具現化する際のイメージやパートナー像が直感的に伝わります。

4. 部門を超えたコミュニケーション: 作成したアイデアは、同じチームに所属するメンバーに限定して公開されるため、自由に議論を広げることができます。研究者や事業担当者が「いいね」をつけたり、コメントで直接やり取りを重ねることで、部門の壁を超えたコミュニケーションが生まれます。

5. AIエージェントとの対話機能: AIエージェントとの対話機能を実装することにより、作成したアイデアの精度を実効性の高いプランへと発展することができます。対話相手になるAIの人格に個性を持たせることで「戦略コンサルタントとの壁打ち」や「SF作家とブレスト」といった体験を創出します。(現時点では開発中の機能となります)

開発ストーリー

日本は年間の特許取得件数が30万件を超え、中国・アメリカに次ぐ世界第三位の特許大国ですが、防衛目的の特許も含めておよそ半数が事業利用されずに収益を生み出せていません。知財の性質上、広く情報発信されることが少なく、検索対象になりにくいため、学会や研究所など狭い領域でしか流通していない現状があります。

知財という先端技術をAIの力でわかりやすく翻訳し、メディアを通じて発信することで、知られていなかった技術に誰もがアクセスできるようになります。AIと人が共創することで、特許技術の有効な使い方を瞬時に大量に想像し、知財部門の担当者や研究者自身ですら考えつかなかった活用方法を生み出すことができます。「失われた30年」の間に生まれた休眠特許の掘り起こしや既存特許の技術移転によって、今まで起こせなかったオープンイノベーションが連鎖的に巻き起こり、日本が新しい経済成長を成し遂げることを期待しています。

知財図鑑・共同代表 荒井亮

「特許庁ステータスレポート2024」より

想定するユーザー像

  • 新規事業部門:企画ボリュームを飛躍的に上げることで事業案の質を高める
  • 研究開発部門:研究技術が未来へもたらす可能性を拡張する
  • 知財部門:事務型作業からクリエイティブ業務に人的リソースを転換する

先行ユーザー企業の声

ビジネスに資する知的財産部として、「企業の成長に必要な知財サービス」を開発や事業部に対して行うことが求められています。そのような状況で、従来の調査・出願による権利保護や侵害対策のほか、10年後、20年後の企業の成長に必要なビジネスアイデアを創出する文化(コミュニティ)を社内に醸成していくことも知財を扱う組織として必要です。

発明には至らない些細なアイデアも知財です。産業の発展にはそのような些細なアイデアとパッションも必要で、知財部は裏方としてそれらを披露できる場を提供していく必要性を感じています。その場に仲間が集まり、アイデアが拡張していき、足りない技術が集まってカケザンされていきます。

アイデア生成においてAI(ideaflow)の良いところは、羞恥心なく、人とは違う価値観のアイデアをアウトプットし、新しい未来(夢)を見せることです。AIによる妄想アイデアを起点に人が議論していくことで、企業の成長や社会課題について向き合うキッカケにもなります。

株式会社カプコン 知的財産部部長 奥山幹樹氏

スタートアップにおける知財の存在意義は、スタートアップの成長のギアになることだと考えています。また、弊社のような「R&Dから始まる多数の事業を展開するスタートアップ」では、投資ROIの最大化のために、新規事業のサイクルの高速化が極めて重要な経営課題です。新規事業を高速化するためには、アイデア創出の「最初の一歩のハードル」を下げることがポイントになります。

ideaflowでは、機能に留まらず、ユーザインタフェースに至るまで、その設計思想が「アイデア創出のハードルを下げる」ことにフォーカスされています。誰でも、簡単に、高速に、アイデアを創出することができる。それにより、新規事業のPDCAが高速に回る。ideaflowが、スピードを命とするスタートアップの成功率を高めてくれるものと期待しています。

ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 知財・法務・広報グループ グループ長 木本大


Latest Posts 新着記事

ロボットの動きをAIが特許化する時代に──MyTokkyo.Aiの最新発明抽出事例

家庭内ロボット市場が急速に進化している。掃除ロボットや見守りロボットだけでなく、洗濯物の片付けや調理補助など、従来は人が行ってきた細やかな日常作業を担う“家庭アシスタントロボット”が次のトレンドとして期待されている。しかし、家庭内という複雑な環境で、人に近いレベルの判断と動作を瞬時に行うためには、膨大なセンサー情報を統合し、高度なモーションプランニング(動作計画)を行う技術が不可欠だ。 このモーシ...

「施工会社」から「技術企業」へ──特許資産ランキング2025、鹿島建設が首位に立つ理由

建設業界は今、大きな転換点に立っている。少子高齢化による深刻な人手不足、カーボンニュートラルへの対応、インフラの老朽化、建設コストの上昇など、従来型のゼネコン経営では持続可能でなくなる課題が次々と顕在化している。こうした中、各社が未来の競争力として注力しているのが「特許」だ。特殊技術の囲い込み、施工ノウハウの形式知化、AI・ロボティクス・材料開発などの分野で、知財の強化が急速に進んでいる。 202...

自動車軽量化の裏側で進む加工技術革新──JFEスチールの割れ防止発明が鍵に

自動車の軽量化ニーズが高まり、高強度鋼板(AHSS:Advanced High Strength Steel)が普及するにつれて、プレス成形時の“割れ”は避けて通れない技術課題となっている。特にAピラー下部、サイドメンバー、バッテリーフレームなど、複雑な形状でありながら衝突時に高いエネルギー吸収が求められる部位では、L字形状のプレス部品が多用される。しかし、こうしたL字プレス品は、曲げコーナー部に...

Ouraの提訴が示すスマートリングの“囲い込み競争”──次世代ヘルスデータ戦争へ

ウェアラブルデバイス市場が新たな転換点を迎えている。フィンランド発のスマートリングメーカー Oura(オーラ) が、Samsung(サムスン電子)を含む複数の大手企業を特許侵害で提訴する意向を示したという報道が流れ、業界の緊張感が一気に高まっている。対象は、急速に注目を集める「スマートリング」分野。指輪型デバイスによる健康管理市場はまだ黎明期であり、プレーヤーが少ないからこそ、特許をめぐる争いの影...

アップルはなぜ負けた? 医療特許の壁に直面したApple Watch

米国の特許訴訟市場が久々に世界の注目を集めている。発端は、Apple Watchシリーズに搭載されてきた「血中酸素濃度測定(SpO₂)機能」をめぐる特許訴訟で、米国ITC(International Trade Commission)がアップルに対し“侵害あり”の判断を下したことだ。米国では特許侵害が認められると、対象製品の輸入禁止措置という強力な制裁が発動される可能性がある。今回の判断は、App...

デフリンピック開催に寄せて:「聞こえ」を支えるテクノロジー、人工内耳の「中核特許」

2025年11月、日本では初めてのデフリンピックが開催されています。これは、手話をはじめとする、ろう者の文化(デフ・カルチャー)が持つ独自の力強さに光が当たる、歴史的なイベントです。 https://deaflympics2025-games.jp/   デフリンピックの開催は、スポーツイベントであると同時に「聞こえ」の多様性について考える絶好の機会でもあります。聴覚障害を持つ人々にとっ...

10月に出願公開されたAppleの新技術〜Vision Proの「ペルソナ」を支える虹彩検出技術〜

はじめに 今回は、Apple Inc.によって出願され、2025年10月2日に公開された特許公開公報 US 2025/0308145 A1に記載されている、「リアルタイム虹彩検出と拡張」(REAL TIME IRIS DETECTION AND AUGMENTATION)の技術内容、そしてこの技術が搭載されている「Apple Vision Pro」のペルソナ(Persona)機能について詳説してい...

工場を持たずにOEMができる──化粧品DXの答え『OEMDX』誕生

2025年10月31日、化粧品OEM/ODM事業を展開する株式会社プルソワン(大阪府大阪市)は、新サービス「OEMDX(オーイーエムディーエックス)」を正式にリリースした。今回発表されたこのサービスは、化粧品OEM事業を“受託型”から“構築型”へと転換させるためのプラットフォームであり、現在「特許出願中(出願番号:特願2025-095796)」であることも明記されている。 これまでの化粧品OEM業...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る