蔦屋書店の「内装の意匠」が登録第1号!!改正された意匠法では何がどのように保護されるのか

蔦屋書店の「内装の意匠」が登録第1号!!改正された意匠法では何がどのように保護されるのか


カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC) は、2020年4月1日に施行された改正意匠法から認められるようになった「内装の意匠」に関して、出願していた蔦屋書店の内装が第1号として登録されたと2020年10月26日プレスリリースで発表した。

今回登録されたのは天井までの高さがある書架に囲まれたロングテーブルのある内装の意匠と、CCCが「本の小部屋」と呼ぶ書架で囲まれた小部屋が連続する空間の意匠。CCCは2011年に開業した代官山蔦屋書店をはじめ「ネット時代の小売業の在り方」を提示すべく「心地のいい空間」づくりを追求しており、リアルな空間にしか体験できない「居心地」という定義するには難しい世界を空間デザインでの実現に取り組んでいる。

CCCは、今回の意匠法改正によって、その戦略に一層の弾みがつき、今後も国際的な競争力のある空間デザインを手掛け成長につながるよう邁進するとしている。今回の改正のポイントは 、これまで意匠法の保護対象は『物品』だったため、最近のビジネスで重視されている売り場やオフィスなどの『空間のデザイン』は意匠法の守備範囲外となっていた。しかしながら多くの企業で『空間のデザイン』を戦略として位置付けることも多くなり、これを保護する要請が強くなっていた。

今回、「蔦屋書店の内装」が意匠登録されたことによりこれを真似した内装の店舗は許されず、意匠権は権利者以外の人間が、意匠の『実施』をすることを禁止している。この『実施』というのがどういう意匠の使い方であるかは、意匠法に具体的に定められ、蔦屋の意匠は、本棚など物品の組み合わせとなっている。

物品を組み合わせた内装の意匠の場合、意匠に関係する物品を実際に製造したり、使用すること、つまり蔦屋の意匠を再現した店舗内装を現実に再現したり、使うことは禁止される。 そして、意匠権は著作権と違い、『真似したかどうか』ではなく、問題になるのは『似ているかどうか』。似てしまっていれば、店舗デザインの変更や、求められれば賠償金を払わないといけない場合も出てくる。

もちろんまだ裁判例がないが、ある内装と意匠登録を受けた内装が『似ているかどうか』の判断については、一般的に些末な部分にとらわれず、デザインのポイントになっている部分を見比べての判断になると考えられる。

またVR時代を想定した保護拡大において、「蔦屋書店の内装のようなイラストやCG」を制作したり、使ったりすることは許されるのかという点について。それについては、物品を再現したイラストやCGを作成することは、製造のためだけに用いられる設計用のプログラムなどでない限り、実施の内容として法律が定めていないので禁止されていない。

つまり、蔦屋書店の内装をイラストやCGで制作することは意匠法において禁止されてはなく、ただ、これからやって来るであろうVR(ヴァーチャル・リアリティ)時代においては、顧客に仮想現実の店舗やオフィスに来てもらうケースも出てくる。そのため、そうした保護の範囲をさらに拡大する必要も今後出てくることも予想される。

【参照】
https://www.ccc.co.jp/news/2020/20201026_001956.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000057655.html
https://mag.tecture.jp/business/20201029-16463/
https://news.yahoo.co.jp/articles/7a598f18e18637a58ec44cc3c2e7f9b54e7731cb


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