カプコンVSコーエーテクモの裁判から考える訴訟の絶えないゲーム関連特許の展望

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ゲーム関連特許に関する訴訟が続いている。2019年9月11日には、知的財産高等裁判所(いわゆる知財高裁)にて、原告をカプコンとする、コーエーテクモとの間で争われていた特許侵害訴訟の判決が下された。本判決は当時広く報道等もされたが、コーエーテクモが特許権の侵害行為を行っていたことを認めるものであり、損害賠償金等、約1億4000万円の支払いをコーエーテクモに命ずるものであった。

このようなゲームベンダー同士の特許侵害訴訟は他にも任天堂とコロプラ、グリーとスーパーセル、セガとレベルファイブ、コナミとGMSなど、枚挙にいとまがない。

このようなゲームベンダー同士の特許紛争はいかにして生じるのか、詳細にみてみよう。

そもそもゲームの特許とはなにか

特許法において、何を保護するかというのは明確に規定があり、それは「発明の保護」である(特許法第1条)。そして発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されている(特許法第2条)。そうすると、ゲームの特許を考える場合には、まずゲームの発明とは何か、という点を考察する必要がある。バンダイナムコエンターテインメント知的財産部の恩田明生氏は、ゲーム開発者カンファレンスCEDEC2017において、「新しいアソビ」が発明であると提唱している。特許権を取得するにあたっては、その発明が新しいこと(新規性)、又は、同業他社であっても容易に到達しえないこと(進歩性)が必要となるが、誰も思いつかなかったアソビであるとか、従来のアソビの組み合わせではあるものの、いままでその組み合わせをやろうとは誰も思わなかった等の困難性があれば、そういった点で、ゲーム関連技術に対して特許権が付与されるということになる。

当然ながら、新しいアソビを提供するにあたって、いままでにないコントローラであるとか、新しいCG表現であるとか、インタラクティブな通信技術なども、必要不可欠なものであるからこういった技術も特許の対象となる。近年のゲームは様々な技術が組み合わされた高度なものとなっているため、これまで以上に特許の重要性が増していると考えられている。

カプコンとコーエーテクモの訴訟の争点

例として、冒頭に述べたカプコンとコーエーテクモとの訴訟は、何が争われていたかを見てみよう。本件訴訟では、カプコンが有する2つの特許権に対する権利侵害が争われた。

1.特許3350773号
たとえばシリーズ化された一連のゲームソフトを買い揃えて行くことによって、豊富な内容のゲームを楽しめる技術。例えば前作ディスクや拡張パックなどを用いて、新たなゲームソフトを購入するよりも、経済的負担が少なくなるという効果を奏する。

2.特許3295771号
遊戯者に対し、聴覚および視覚だけでゲームの情報を味わうのではなく、コントローラ等を振動させることで、相手方に対して秘密状態のもとでゲームを進行させることができるようにすることで、ゲーム製作上の自由度を増大させる技術。

これらの特許はゲームそのものの技術についてではなく、ハードウェアや、ゲーム全体の仕様についてのものだが、いずれも「新しいアソビ」つまり今までになかったゲーム体験を生み出すものとして特許権が認められたものといえる。

今後のゲーム開発において特許の重要性はますます高まる

上述のように、ゲームの特許とは、ゲーム自体の内容だけでなく、ハードウェアの構成等においても認められるものであり、今後のゲーム開発においては、これまで以上に他社の特許権を詳細に検討しながら製品を開発する必要があるとともに、自己の製品・サービスが他社の特許権を利用するものであった場合には、ライセンス契約等の交渉を予め行っておくなど、特許の重要性が非常に高まっていくことは必至である。また、日本の有望コンテンツとしてゲームの輸出が挙げられるところ、日本国内のみならず、海外のゲーム特許との関係も、現地法律の理解とともに詳細な検討を行っていく必要があるだろう。

* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。

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