乳酸菌素材「FK-23」および「LFK」の慢性腎臓病進行抑制効果について特許を取得 大阪公立大学など


大阪公立大学、京都府立大学、ニチニチ製薬株式会社(本社:三重県伊賀市 代表:森下政彦、以下)は、共同研究の成果として、乳酸菌素材「FK-23」および「LFK」の「慢性腎臓病進行抑制効果」について特許を取得したことを22年11月16日公表した。(特許第7153274号)。

FK-23およびLFKは、エンテロコッカス・フェカリス菌に加熱処理や酵素処理を施し、機能性を高めたニチニチ製薬独自の乳酸菌素材。今回、京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 南山幸子教授、大阪公立大学大学院 医学研究科 竹村茂一特任准教授、ニチニチ製薬の共同研究で、FK-23あるいはLFKを経口摂取することにより慢性腎臓病の進行が抑制されることを確認し、共有の特許取得に至った。

本特許の実施例では、慢性腎臓病モデルラットを、通常食、FK-23食、LFK食を投与する3群に分け、発症の2週間前からそれぞれの餌を自由に摂取させ、発症の8週間後、腎臓を摘出し、形態学的および生化学的に解析した。

その結果、FK-23投与群、LFK投与群はいずれも通常食群に比べ腎臓組織の線維化が顕著に少ないことが分かり、さらに、線維化の原因になる線維芽細胞(α-SMA陽性細胞)の出現も顕著に抑えられており、線維化の指標となる複数のたんぱく質も有意に抑制されていた。また、一般的な腎機能の指標である血中BUNやクレアチニンも、FK-23 投与群、LFK投与群において有意にそれらの上昇が改善されていた。

慢性腎臓病は新たな国民病ともいわれ、成人の8人に1人が罹患し、患者数は1,330万人にも達している※。今回ラットで得られたFK-23、LFKの効果は、この状況において明るいニュースであると言えるとしている。※「CKD診療ガイド2012」(日本腎臓学会)

【特許概要】

特許番号:7153274
発明の名称:慢性腎臓病進行抑制剤
特許権者:京都府公立大学法人、公立大学法人大阪、ニチニチ製薬株式会社

【血中のクレアチニン値】

【腎線維化像とFK-23およびLFKの効果 ※右は乳酸菌非摂取(通常食)群の□部分の拡大像】

青くなっている部分は慢性腎臓病が進行し、細胞組織が壊れて線維化している。
FK-23食群、LFK食群は通常食群に比べ線維化が抑えられている。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-02775.html
https://shokuhin.net/65178/2022/11/16/kakou/kenshoku/


Latest Posts 新着記事

「しなやかでタフ」なカルコパイライト太陽電池の進化戦略

はじめに 太陽光パネルといえば、重くて硬いシリコン製を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし今、次世代技術として「カルコパイライト太陽電池」が静かにその存在感を高めています。 「曲がる太陽電池」カルコパイライトとは? カルコパイライト太陽電池は、銅(C)、インジウム(I)、ガリウム(G)、セレン(S)などを原料とする化合物系の薄膜太陽電池です。これらの構成元素の頭文字をとって「CIGS(シグス)」と...

連邦政府が大学の特許収入を狙う トランプ政権の新方針が波紋

はじめに 米国の大学は、研究開発活動を通じて得られる特許収入を重要な財源としてきました。大学の特許収入は、新しい技術の商業化やスタートアップ企業の設立に活用され、イノベーションの促進に直結しています。しかし、トランプ政権下で、連邦政府が大学の特許収入の一部を請求する方針が検討されており、大学の研究活動やベンチャー企業の育成に対する影響が懸念されています。 特に米国は、大学発ベンチャーの育成や産学連...

脱石炭から技術輸出へ:中国が描くクリーンエネルギーの未来

21世紀に入り、世界各国が環境問題やエネルギー安全保障への対応を迫られるなか、中国はクリーンエネルギー分野で急速に存在感を高めてきた。とりわけ再生可能エネルギー技術、電気自動車(EV)、蓄電池、送配電網、そしてグリーン水素などの分野において、中国は「追随者」から「先行するイノベーター」へと変貌を遂げつつある。なぜ中国が短期間でこのような飛躍を実現できたのか。その背景には、国家戦略、産業政策、市場規...

世界のAI特許6割を握る中国 5G・クラウドを基盤に国際競争を主導

近年、中国はデジタル経済の拡大と技術革新を国家戦略の中核に据え、AIや5G、クラウド、データセンターといった基盤技術において世界を牽引する存在となっている。その象徴的な事実として注目されるのが、人工知能(AI)に関する特許出願件数である。国際特許機関の最新統計によれば、中国からのAI関連特許は世界全体の約6割を占め、米国や欧州、日本を大きく上回る圧倒的なシェアを記録している。 本稿では、中国がいか...

AgeTech知財基盤を強化――パテントアンブレラ(TM)が累計41件出願、AI特許も追加

高齢社会の進展に伴い、健康維持、生活支援、介護軽減を目的としたテクノロジー領域「AgeTech(エイジテック)」への注目がかつてないほど高まっている。その中で、知的財産を軸に事業競争力を高める取り組みが活発化しており、今回、独自の「パテントアンブレラ(TM)」戦略を進める企業が、AI関連特許を含む29件の新規出願を追加し、累計41件の特許出願を完了したと発表した。これにより、類型141件の機能をカ...

フォシーガGE、特許の壁を突破 沢井・T’sファーマの挑戦

2025年9月、日本の医薬品市場において大きな話題を呼んでいるのが、SGLT2阻害薬「フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)」の後発医薬品(GE、ジェネリック)の登場である。糖尿病治療薬の中でも売上規模が大きく、近年では慢性腎臓病や心不全の領域にも適応拡大が進んだフォシーガは、アストラゼネカの主力製品のひとつである。その特許の“牙城”を突破し、ジェネリック医薬品の承認を獲得したのが沢井製薬とT&#...

電池特許はCATLだけじゃない――AI冷却から宇宙利用まで、注目5大トピック

近年、知的財産の世界では、特定の企業やテーマに関心が集中しやすい傾向がある。中国・CATLの電池特許戦略や、AIをいかに効率的に冷却するかといったテーマは、テクノロジー産業の今を象徴するキーワードだ。しかし同時に、その裏側には見落とされがちな知財動向や、将来を左右しかねない新しい潮流が潜んでいる。本稿では、「電池特許CATL以外にも」「特集AIを冷やせ」を含め、いま注目すべき5本のトピックを整理し...

バックオフィス改革へ ミライAI、電話取次自動化で特許取得

AI技術の進化が加速するなか、企業のバックオフィスや顧客対応の現場では「省人化」「自動化」をキーワードとした取り組みが急速に広がっている。その中で、AIソリューションを展開するミライAI株式会社は、従来の電話取次業務を人手に頼ることなく「完全無人化」するための技術を開発し、特許を取得したと発表した。この技術は、音声認識・自然言語処理・対話制御を組み合わせ、従来課題とされてきた「誤認識」「取次精度の...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る