顧客の属性等を考慮した「汎用ダイナミックプライシング技術」の新技術、京都大学との共同研究で特許出願


フォルシア株式会社(本社:東京都新宿区、代表:屋代浩子、以下:フォルシア)は、国立大学法人京都大学(所在地:京都府京都市左京区、総長:湊長博、以下:京都大学)大学院情報学研究科梅野健教授と共同で、顧客の行動特性の違いを反映した、より高精度の需要予測が可能となるダイナミックプライシング技術(以下:本技術)を発明し、2022年9月29日に特許出願したことを公表した。

ダイナミックプライシングとは、需要と供給の状況に応じて価格を調整して需給をコントロールする販売戦略であり、Withコロナの昨今、様々な社会課題を解決する手段として導入が加速している。

フォルシアと京都大学は、2018年よりダイナミックプライシングについての共同研究を進めてきた。両者は2019年に「人々の予約行動における数理的普遍性を活かした需要予測アルゴリズムと、それを用いたダイナミックプライシングシステムの構築」における特許第7109027号(以下:前特許)を出願し、本年7月に取得している。

本技術は、前特許である汎用ダイナミックプライシングを応用した新技術で、全ての顧客を対象に一律に価格設定するのではなく、顧客の行動特性に応じた価格設定を可能にする、またそのために必要な顧客のカテゴリー化を、予約行動パターンの指数関数性に基づいて行うアルゴリズム。

従来観測することが難しかった、顧客の計画性やロイヤルティに着眼し、顧客を指数関数性の観点から分類することで、プライシング効果の高いターゲット群を抽出し、高精度の需要予測を実現する。
本技術は、顧客の行動特性を、指数関数への類似性で分類し、顧客ごとの行動パターンの違いを統
計的に立証したことを基にしている。ホテルやレンタカー・美容院などの購買データの分析から、新規顧客はより直前に、会員顧客(リピーター)のようなロイヤルティの高い顧客はより事前に予約する傾向があるが、それぞれ値の異なる時定数(どれくらい事前から予約するか、を示す指数関数のパラメータ。単位:日)を持つ固有の指数関数に従うことが立証された。

具体的に、ある東京都の美容院の顧客を新規顧客とリピーターに分割した例で説明すると、直前に予約する傾向の強い新規顧客と、日にちに余裕をもって予約する傾向の強いリピーターは、増加速度の異なる指数関数を描くことがわかる(図1)。

本技術の鍵は、顧客ごとの行動特性に関する経験知や暗黙知といった数値化・可視化しにくい知見が、人間行動に関する普遍的統計・数理的法則により定量的に分析可能となったことにある。顧客および商品を適切なセグメントに切り分けることで、業界によって異なるプライシングについての知見は説明可能になり、顧客属性ごとに対する高精度の需要予測および、適切なタイミングでの値上げ・値下げといった価格政策につながる。

これをさらに応用すると、利用パターンや需要の偏りを踏まえた新しい商品設計の考案にも活用できる。例えば、テーマパークであれば、12:00-15:00のみ利用可能な時間枠、美容院であれば、3回目までの来店とそれ以上の利用者など、既存商品の価格設定だけでなく、需要と供給のバランスを鑑みた新しい商品の設計に役立てることが可能となる。サービス提供事業者は、より顧客ニーズに沿った商品設計・価格設定を通じ、新たな収益源の確立や繁閑の平準化といった経営課題への打ち手を得ることができる。

Withコロナの現在においてダイナミックプライシングは、単なる利益の最大化にとどまらず、混雑緩和と需要喚起の両立や、繁閑の平準化を通じた働き方改革など、さまざまな社会課題を解決する手段として認識されてきている。本技術が活用されることによって、これまでダイナミックプライシングが実用化されてこなかった領域への技術適用が飛躍的に広がることが期待されている。

【図1:顧客の属性分割と、属性別ダイナミックプライシング適用例】

顧客属性ごとに予約数の増加傾向を観測することで、需給状況に応じて、属性ごとに打ちたい施策が異なる場合にも柔軟に対応できる。施策のタイミングについても、小さい時定数を持つ属性への需要喚起は直前の方が効率的であるなど、ターゲットごとに適切に設計可能となる。
【出願した特許の概要】
発明の名称:情報処理装置、価格決定システム、需要予測方法および価格決定方法
出願人:京都大学、フォルシア
発明者:梅野健(京都大学)、新谷健(フォルシア)
特許出願番号:特願2022-156164
出願日:2022年9月29日


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000093.000002005.html


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