グラント・特許・論文におけるキーワード出現頻度から、「メタバース」はすでに基礎研究段階から、社会実装段階へ


アスタミューゼ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 永井歩)は、自社のイノベーションデータベースの解析から、メタバースに関わるさまざまな注目キーワード(decentralized, cyber-physical 等)の出現頻度が急速に増加傾向にあり、あわせてデータ種別ごとの統計分析からメタバースの分野が基礎研究段階から社会実装段階へとシフトしつつあること、さらに萌芽領域においては深掘り研究が進んでいることを22年7月14日報告している。

アスタミューゼでは、技術とそれを生み出す人物(イノベータ)のデータから中長期的にプレイヤーチェンジを起こす可能性のある動きを特定し、その解析結果にアナリストの考察を加えた「未来予測」手法を提供している。

メタバース元年:web3経済が始まる

ここ最近、3D仮想空間であるメタバース(metaverse)が話題に上らない日はない。

DX(デジタルトランスフォーメーション)におけるデジタルツイン(ミラーワールド)がリアルワールドのVR化であるのに対し、メタバースはリアルの鋳型を必要としない仮想世界。PCの画面上だけのリモート会議と異なり、メタバース会議では、仮想空間の中に各自がアバターを使ってあたかも現地にいるかのように一堂に会して議論したり旅行やライブイベントなどに参加したりできる。
メタバースはXR(VR/AR/MR)のほか、テレイグジスタンスやホログラフィ、空間投影も使い、CPS(cyber-physical system)やデジタルツインといったリアルワールドとバーチャルワールドを行き来する多元的並行世界でもある。

さらに、メタバースでは、ブロックチェーン応用技術である暗号資産(仮想通貨)やNFT(non-fungible token; 非代替性トークン)、DeFi(Decentralized Finance; 分散型金融)をマネタイズ手段として使うことで、ゲームやアート、エンタメだけでなく、さまざまなビジネスや研究開発・モノづくりなどの生産活動、社会活動(政治や社会貢献等)を展開できる可能性が広がっている。

進化を続けるインターネット環境は、Web1.0(据置サーバーと静的ウェブ)からWeb2.0(クラウドとインタラクティブウェブ・SNS)、そして今、Web3.0(web3)の時代が始まろうとしている。アスタミューゼの定義する「未来を創る成長領域136」の中にも「100. Web3.0・メタバース・NFT」が含まれている。web3には未だ明確な定義はないが、AIやIoT、XR、ブロックチェーン等の先端技術が有機的に一体化し、Society5.0や都市OSとも連携する世界観であり、メタバースに極めて親和性の高い概念だ(ただし、すべてのメタバースがブロックチェーンやNFTを組み入れているわけではない)。

今回、弊社イノベーションデータベースの解析から、メタバースに関わるさまざまな注目キーワード(decentralized, cyber-physical 等)の出現頻度が、近年急速に増加傾向にあること、また、データ種別ごとの統計分析から、グラント>特許>論文の順にそれらキーワードの増大が見られることが分かった。このことから、この分野が基礎研究段階から社会実装段階へとシフトしつつあること、さらに萌芽領域においては深掘り研究が進んでいることがうかがえる。

今回解析した特許、グラント、論文の具体的な事例を紹介することで、さらに詳しく説明したい。ここで紹介するのは今回の解析結果のごく一部であり、メタバースの未来を網羅したものではない。

メタバースの未来展望

2007年ごろには今のメタバースとあまり変わらない仮想現実世界のビジョンができていた。

当時より遥かに進化した情報通信・デジタル化技術によって多人数が同時アクセスできるストレスがより少ないVR空間ができていること、さらに、コロナ禍の影響もあって、世界中の人々がリモート環境でのコミュニケーションにある程度慣れていることなどが重なり、いよいよ、メタバースの時代が始まったということが実感でる。

セキュリティやリテラシーの問題が大きな懸念事項としてあるが、これ自体は人類が人類である以上なくなる問題ではない。いかにレジリエントな(弾力性・回復力のある)仕組みを作っていくかが重要と言え、万が一、騙されたとしても被害が最小限ですぐに修復可能な仕組み、いわば、集団免疫的な仕組みをメタバースに組み込むことも大きな課題になるかもしれない。

今回のメタバースの未来推定・萌芽探索の中で強く示唆されるのは、知覚の刺激や関心の誘発などによるエンゲージメントの強化と、社会課題解決の促進という流れです。

大きくて重いHMDがメタバース発展の障害になるという意見もあるが、網膜投影グラスやウェアラブル脳インターフェース、ヒアラブル多言語処理AIなどの応用により、今後数年以内に解決される問題と思われます。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000241.000007141.html


Latest Posts 新着記事

工場を持たずにOEMができる──化粧品DXの答え『OEMDX』誕生

2025年10月31日、化粧品OEM/ODM事業を展開する株式会社プルソワン(大阪府大阪市)は、新サービス「OEMDX(オーイーエムディーエックス)」を正式にリリースした。今回発表されたこのサービスは、化粧品OEM事業を“受託型”から“構築型”へと転換させるためのプラットフォームであり、現在「特許出願中(出願番号:特願2025-095796)」であることも明記されている。 これまでの化粧品OEM業...

特許で動くAI──Anthropicが仕掛けた“知財戦争の号砲”

AI開発ベンチャーのAnthropic(アンソロピック)が、200ページ以上(報道では234〜245ページ)にわたる特許出願(または登録)が明らかになった。その出願・登録文書には、少なくとも「8つ以上の発明(distinct inventions)」が含まれていると言われており、単一の用途やアルゴリズムにとどまらない広範な知財戦略が透けて見える。 本コラムでは、この特許出願の概要と意図、そしてAI...

SoC時代の知財戦争──ホンダと吉利が仕掛ける“車載半導体覇権競争”

自動車産業が「電動化」「自動運転」「ソフトウェア定義車(SDV)」へと急速にシフトするなか、車載半導体・システム・チップ(SoC:System­on­Chip)を巡る知財・開発競争が激化している。特に、ホンダが「車載半導体関連特許を8割増加」させているとの情報が注目されており、同時に中国自動車メーカーが特許活動を爆発的に拡大しているとされる。なかでもジーリー(Geely)が“18倍”という成長率を...

試験から設計へ──鳥大が築くコンクリート凍害評価の新パラダイム

はじめに:なぜ“凍害”がコンクリート耐久性の大きな壁なのか コンクリート構造物が寒冷地・凍結融解環境(凍害)にさらされると、ひび割れ・剥離・かさ上がり・耐荷力低下といった劣化が進行しやすい。例えば水が凍って膨張し、内部ひびを広げる作用や、塩分や融雪剤の影響などが知られている。一方、これらの劣化挙動を実験室で迅速に・かつ実サービスに近づけて評価する試験方法の開発は、長寿命化・メンテナンス軽減の観点か...

Perplexityが切り拓く“発明の民主化”──AI駆動の特許検索ツールが変える知財リサーチの常識

2025年10月、AI検索エンジンの革新者として注目を集めるPerplexity(パープレキシティ)が、全ユーザー向けにAI駆動の特許検索ツールを正式リリースした。 「検索の民主化」を掲げて登場した同社が、ついに特許情報という高度専門領域へ本格参入したことになる。 ChatGPTやGoogleなどが自然言語検索を軸に知識アクセスを競う中で、Perplexityは“事実ベースの知識検索”を強みに急成...

特許が“耳”を動かす──『葬送のフリーレン リカちゃん』が切り開く知財とキャラクター融合の新時代

2025年秋、バンダイとタカラトミーの共同プロジェクトとして、「リカちゃん」シリーズに新たな歴史が刻まれた。 その名も『葬送のフリーレン リカちゃん』。アニメ『葬送のフリーレン』の主人公であるフリーレンの特徴を、ドールとして高精度に再現した特別モデルだ。特徴的な長い耳は、なんと特許出願中の専用パーツ構造によって実現されたという。 「かわいいだけの人形」から、「設計思想と知財の結晶」へ──。今回は、...

“低身長を演出する靴”という逆転発想──特許技術で実現した次世代『トリックシューズ』の衝撃

ファッションと遊び心を兼ね備えた新発想のシューズ「トリックシューズ」が市場に登場した。通常、多くの「シークレットシューズ」や「厚底スニーカー」は身長を高く見せるために設計されるが、本モデルは逆に身長を「低く見せる」ための構造を意図しており、そのためにいくつもの特許技術が組み込まれているという。今回は、このトリックシューズの設計思想・技術構成・使いどころ・注意点などを掘り下げてみたい。 ■ コンセプ...

“特許力”が食を変える――味の素が首位に輝く、2025年 食品業界特許資産ランキングが示す未来戦略

2025年版の「食品業界 特許資産規模ランキング」で味の素が第1位となった。評価は、個々の特許の“注目度”をスコア化して企業ごとに合算する方式(パテントスコア)で、2024年度(2023年4月1日〜2025年3月末登録分)を対象としている。トップ10は、1位 味の素、2位 日本たばこ産業(JT)、3位 Philip Morris Products、4位 サントリーHD、5位 キリンHD、6位 CJ...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る