SiC(炭化ケイ素)サプライチェーン制覇を狙う中国  18年に特許出願で日本を超す


フランスKnowMade(ノーメイド)は、特許と科学的情報の分析に特化した調査/コンサルティング会社である。各国の特許出願内容や取得特許から巨視的な特許傾向であるパテントランドスケープ(特許ランドスケープ)を導き、競争環境と技術開発内容を理解することを得意とする。同社が手掛ける調査の中から旬な技術の話題から、今回は、中国の研究機関や企業のSiC(炭化ケイ素)の特許活動について調べたと日経XTECH22228日伝えている。

炭化ケイ素(Silicon carbide, SiC)とは、炭素(C)とケイ素(Si)が11で結合した共有結合性の化合物で、天然にはほとんど存在しない。 炭化ケイ素(SiC)は、高硬度で耐熱性、耐久性に優れていることから、研磨・研削材や、耐火材として利用されている。

SiC(炭化ケイ素)パワーデバイスは、今後10年間で毎年2桁成長を達成すると予測されている。電気自動車(EV)市場の拡大により、駆動用インバーター、DC-DC昇圧コンバーター、車載充電器などにSiCパワーデバイスが搭載されていくからだ。既に、幾つかの自動車メーカーは一部車両で搭載を始めているし、他の自動車メーカーの多くも、まだ搭載はしていなくとも採用に向けた評価の段階にある。SiCパワーデバイスは、EVの市場浸透に従って必要とされる急速充電インフラ構築用のパワーデバイスとしても有力である。

中国は既に世界最大のEV市場であり、今後も当面魅力的な市場であり続ける。米McKinsey & Companyは、2020年から30年の10年間、年間成長率が24%に上ると予測している。そのため、伊仏合弁のSTMicroelectronics 、米CreeWolfspeed、ロームセミコンダクター、ドイツInfineon Technologies、米onsemi、三菱電機など、SiCデバイス市場で80%以上を所有するサプライヤーらにとって中国は、優先度の高い市場となっているのである。

一方、米中貿易摩擦が半導体産業を揺るがしている。そこで、北京の中央政府は中国企業に対し、SiCGaN(窒化ガリウム)技術を含む最新かつ最も戦略的な技術で外国企業に追いつき、最終的に自給自足できる目標を追求するよう促している。

こうした背景から、本稿では、SiCに関する特許ランドスケープ(特許景観)を、中国内での新たなSiCサプライチェーンを創出する中国プレーヤーに調査の焦点を当てみると、少なくとも過去20年間においては、三菱電機、住友電気工業、デンソー、富士電機、トヨタ自動車などの日本企業がSiCの特許ランドスケープで支配的地位にいた。しかし、10年代初頭に始まった中国企業の特許活動が、ここ10年間で飛躍的に成長してきている。

18年以降、中国籍の特許出願人は、日本籍の特許出願人から知的財産(IP)のリーダーシップを奪取し始めた。さらに、中国のプレーヤーはここ数年、大手外国企業に追いつくために特許取得の取り組みをさらに加速させている。逆に日本の特許活動はSiCプレーヤーの技術革新の成熟度の高さを反映してか、13年以降、年間出願特許件数の増大が頭打ちとなっている。

「興味深いことに、中国企業の特許は、材料系(バルクSiCSiCエピタキシャルウエハー)とパワーデバイス系(SiC MOSFETSiC JFETなど)の間で均等に分かれている。SiC材料に関する発明の約半分は、SiC成長のための装置とツールに焦点を当てている。

これらはSiCベアウエハー事業の新規参入者が直面する初期的な技術的課題と障害である」と、ノーメイドの特許アナリストで化合物半導体とエレクトロニクス分野を専門とするレミ・コミン(Rémi Comyn)博士は述べる。実際のところ、シリコンの成長技術とは異なり、SiCの成長技術には標準的な成長炉はない

中国政府はSiC技術開発を支援し、特許活動を加速させている。より重要なことは、完全な国内サプライチェーンの出現を援助しパワー半導体製品種目を確保するよう特許活動を推進していることだ。中国の特許出願人は、各セグメントで確立されたIPプレーヤーを含んだ包括的なサプライチェーンをカバーし、学術、工業、鋳造、IDMIntegrated Device Manufacturer)、インテグレーター、純粋なプレーヤーなど多様なプレーヤーと、IPコラボレーションやIP譲渡のための密なネットワークを持っている。

その結果、海外のサプライヤーとの技術格差は、サプライチェーンのほとんどのセグメントで縮小すると予想される。中国のSiCプレーヤーは、その大部分を外国籍のプレーヤーに支配される国内市場で、SiC国内製品の普及率の向上にますます焦点を当てていくだろう。そして中国のSiCプレーヤーは、特許ランドスケープに位置する主要プレーヤー(SICCTYSiCEpiworldなど)に投資をしているHuawei Technologiesなど米国の制限で深刻な打撃を受けている産業プレーヤーらによって支援され、将来のSiC供給を確保していくだろう。

中国国内市場の規模とバルクSiCの国内生産キャパの低下によって引き起こされるボトルネックを考えると、中国のSiCプレーヤーが海外の新しい市場を征服しようとするまでには長い道のりがあるかもしれない。実際のところ、中国の特許出願は海外では3%未満しか出願されていない。しかし、SiC基板メーカーであるSICCなどの特定の中国のプレーヤーは、彼らのライバルよりも多くの海外特許を取得していることから、将来は国際的に進出する野望があることが分かる。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01662/00008/


Latest Posts 新着記事

「RAGだけでは足りない――『chai+』が示すFAQ型AIの新たな価値」

企業向けAIチャットボットは、いま転換点にある 法人向けAIチャットボットの議論は、この1年ほどでかなり変わった。少し前までは、「生成AIで自然な文章が返る」「社内文書を読み込ませれば答えてくれる」といった点が注目された。だが企業現場で本当に問われているのは、流暢さではない。間違えずに答えられるか、そして業務に組み込めるかである。 その意味で、法人向けRAG型AIチャットボット「chai+」が、特...

3月に出願公開されたAppleの新技術〜バイオメカニクスに基づくモーションマッピング〜

はじめに 空間コンピューティング(XR)のUI設計において、最も困難な課題の一つは「ユーザーの物理的な動き」と「仮想空間の操作」の間のギャップを埋めることです。Appleが公開した特許出願「US 2026/0086652 A1」は、人間の解剖学的制約を逆手に取り、数学的に「操作の揺らぎ」を排除する高度なマッピング手法を提案しています。   発明の名称: MOTION MAPPING FO...

「顔認証は“門番の代わり”ではない――KIDSCALL特許取得が示す保育DXの次の競争軸」

保育現場の負担は、想像以上に細かく、重い 保育現場の課題というと、多くの人は人手不足や安全管理、あるいは保育士の処遇改善といった大きなテーマを思い浮かべる。もちろんそれらは重要だ。だが、実際の現場を支配している負担の多くは、もっと細かく、もっと断続的なものでもある。 夕方のお迎え時間を思い浮かべれば分かりやすい。インターホンが鳴る。職員がモニターを確認する。マスク越しの顔や、たまに来る祖父母・親族...

「防錆塗料はここまで進化した――『水性ローバルONE』が変える現場の常識」

防錆の世界で起きているのは、小さな改良ではない 塗料の話は、一般にはあまり派手なニュースとして扱われない。 だが、社会インフラや工場設備、鋼構造物の維持管理に関わる人にとって、塗料の進化はコストや安全性、環境対応、施工現場の働き方を左右する重要なテーマである。とりわけ鉄を守る防錆技術は、橋梁、プラント、設備保全の世界では、見えないが極めて本質的な基盤だ。 今回のローバルの新製品「水性ローバルONE...

「ゲームの自由は、どこまで囲い込めるのか――任天堂特許拒絶が映す知財戦略の難しさ」

それは「敗北」ではなく、まずは黄信号である 任天堂とポケモン社が保有していた、いわゆる「キャラクターを召喚して戦わせる」米国特許について、米国特許商標庁(USPTO)が非最終の拒絶を通知した。対象は米国特許 US12,403,397 B2 で、USPTO長官が2025年11月に職権で再審査を命じた後、2026年3月のオフィスアクションで全26請求項について拒絶理由が示された、という流れである。これ...

建設ロボット競争の裏で進む“見えない主戦場”

建設DXの本丸は、現場実装のその先にある 建設業界では人手不足、安全性向上、生産性改善を背景に、ロボットや自律制御技術への期待が年々高まっている。だが、本当の競争は、ロボットを作った時点では終わらない。むしろその先にあるのは、「その技術をどれだけ速く、深く、知財として押さえられるか」という争いである。 今回紹介されたMyTokkyo.Aiの事例は、まさにその変化を象徴している。対象となったのは、建...

「市場調査は“人が回す仕事”ではなくなるのか――生成AIが変えるマーケティングリサーチの新常識」

マーケティングリサーチの常識が変わり始めている 「市場を知ること」は、あらゆるビジネスの出発点である。 どんな商品が求められているのか。消費者は何に不満を抱え、何に価値を感じているのか。競合はどこにいて、どんな言葉で市場に働きかけているのか。こうした問いに答えるため、企業は長年、アンケート調査、インタビュー、グループインタビュー、ソーシャル分析、競合調査など、さまざまな手法を使ってきた。 だが、そ...

「『王将』はなぜ二つあるのか――商標が認めた“併存”の理由」

同じ「王将」なのに、なぜ共存できるのか 「餃子の王将」と「大阪王将」。 外食に詳しくない人でも、この二つの名前は一度は耳にしたことがあるはずだ。どちらも“王将”を名乗り、しかも中華料理、とりわけ餃子を看板商品にしている。商標の常識だけを聞けば、「そんなに似ていて大丈夫なのか」と感じるのが自然だろう。 実際、商標制度の大原則は明快である。同じような名前が、同じような商品やサービスに使われ、消費者が出...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る