サムスン電子、特許分野のトップを務めた元役員が 「古巣」を相手取って特許侵害訴訟を起こす


サムスン電子でこの10数年間、特許分野のトップを務めた元役員が、サムスン電子を相手取って特許侵害訴訟を起こした。サムスン電子の重要情報を誰よりもよく知っている内部人物が、特許攻撃に乗り出したことで、業界は衝撃を受けているとYahooニュースは22年1月10日伝えている。

9日、業界によると、アン·スンホ前サムスン電子IPセンター長(副社長, 写真 )は最近、米テキサス東部地方裁判所に「サムスン電子が10件の特許を故意に侵害した」とし、自分が昨年6月設立した特許法人シナジーIPを通じて損害賠償訴訟を起こした。米国イヤホン·音響機器会社ステイトンテキヤLLCが共同原告だ。

アン元副社長が、無断侵害を主張する特許は、サムスン電子のヒット作「ギャラクシーS20」シリーズやギャラクシーバーズと関連したプログラムだ。具体的には「オールウェイズ·オン·ヘッドウェア·レコーディング·システム」など10件で、無線イヤホンと音声認識に関する技術だ。損害賠償の金額は、少なくとも数百億ウォンに上るとみられる。

業界では、アン元副社長に対し、「信義誠実や営業秘密侵害禁止原則に反した」という批判が出ている。同時に、サムスンの内部情報や特許管理に問題が生じたという指摘も出ている。アン元副社長は10年から10数年間、サムスン電子やアップル、華為が繰り広げてきた訴訟戦を総括してきた。業界では、特許の有効性を認めてもらうのは簡単でないが、サムスン電子も評判が悪化するのは避けがたいと見ている。

9日、経済界には波紋が広がった。これまで「特許怪物」をはじめとする企業ハンターの攻撃を受けたことはあったが、内部事情を把握する元役員が、サムスン電子を相手取って訴訟を起こすことはなかったからだ。訴訟を起こしたアン元副社長は在職当時、特許訴訟に取り組んだだけで、該当技術の開発を主導したことはないという。ただ、アン元副社長とアン元副社長が携わったシナジーIPは、サムスンを相手にした特許侵害訴訟で共同原告を引き受けた米デラウェアの「ステイトンテキヤLLC」から全権を与えられただけでなく、テキヤが主張する特許権利の一定部分を持っているという。

アン元副社長とテキヤが、無断侵害を主張する特許は主にイヤホンと音声認識関連技術で、サムスン電子のギャラクシーS20シリーズをはじめ、△ギャラクシーバーズ△ビックスビーのフラットフォームなどに入っている。テキヤとシナジーIPは、「サムスン電子は特許侵害を知っていながら、製品の生産や販売を行っている」と主張した。

業界では、これらの主張の論理的根拠は十分ではないと見ている。まず、イヤホンと関連した音声認識技術は、関連特許間に差が大きくなく、特許の有効性を認め難いという説明だ。韓国の相当数の企業は、既に米裁判所に無線イヤホンと音声認識関連技術をめぐってIPR(知的財産権)無効訴訟を進行中でもある。

テキヤの最近の特許関連動きに注目すべきだという意見も出ている。テキヤは元々、イヤホンや音響機器の専門会社だったが、会社の経営環境が悪化し、特許関連営業へと収益構造を変えているという。

アン元副社長が、特許訴訟の先頭に立つことで、サムスン電子は緊張せざるをえない。アン元副社長は、エンジニア出身の米国特許弁護士だ。1997年からサムスン電子の特許業務を手がけている。
2010年にIPセンター長に選任され、2019年に退任するまで全社IP業務を率いた。2011年、アップルを相手に訴訟戦を陣頭指揮し、グーグルとクロスライセンス契約を主導した。2-16年、中国の華為が、米国と中国で自社の第4世代(4G)モバイル通信標準と関連した特許を侵害したとして訴訟を起こした時も、アン元副社長が訴訟を総括した。

国家知的財産委員会民間委員、韓国知的財産協会(KINPA)会長、韓国特許情報院非常任理事などを務めた。 特許業界では、アン元副社長の訴訟に対し、「理解できない」という反応だ。特許分野で最高権威を認められていたアン元副社長が、職業倫理が疑われる訴訟に参加したためだ。サムスン電子は、公式の立場を示さないまま、「理由は分からない」という反応を見せている。 アン前副社長が長い間、役員職に就いていた上、退任も定年に合わせて行ったためだ。業界関係者は「内部情報を活用して利益を得ているとみられる可能性もある」という。

サムスン電子も長い間、同様の特許関連法的紛争に備えてきた。昨年第3四半期現在、世界で21万1160件の特許を保有している。このうち、米国で登録した特許だけでも8万2000件あまりに上る。21年の1年だけでも、第3四半期基準で研究開発(R&D)に16兆2000億ウォン(約1兆5882億円)を投資し、韓国内の特許6032件、米国の特許6418件などを取得した。ライバル会社のけん制の役割をしながらも、新規事業への参入の際、事業を保護してもらえるからだ。

また、グーグル、クアルコム、マイクロソフト(MS)、アップル、ファーウェイなどグローバル企業のほとんどと相互特許使用契約を結び、持続的に契約を延長している。 これは、サムスン電子の知的財産権を保護し、相互間の訴訟リスクを減らす効果がある。 業界関係者は「サムスン電子を相手に訴訟を起こす場合、勝訴できなくても少なくとも該当特許法人と企業の認知度が上がる効果が得られるだろう」と述べた。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://news.yahoo.co.jp/articles/fd3da6495caa5417921d2c678936fc1625b60089
https://www.kedglobal.com/newsView/ked202201100002?lang=jp


Latest Posts 新着記事

10月に出願公開されたAppleの新技術〜Vision Proの「ペルソナ」を支える虹彩検出技術〜

はじめに 今回は、Apple Inc.によって出願され、2025年10月2日に公開された特許公開公報 US 2025/0308145 A1に記載されている、「リアルタイム虹彩検出と拡張」(REAL TIME IRIS DETECTION AND AUGMENTATION)の技術内容、そしてこの技術が搭載されている「Apple Vision Pro」のペルソナ(Persona)機能について詳説してい...

工場を持たずにOEMができる──化粧品DXの答え『OEMDX』誕生

2025年10月31日、化粧品OEM/ODM事業を展開する株式会社プルソワン(大阪府大阪市)は、新サービス「OEMDX(オーイーエムディーエックス)」を正式にリリースした。今回発表されたこのサービスは、化粧品OEM事業を“受託型”から“構築型”へと転換させるためのプラットフォームであり、現在「特許出願中(出願番号:特願2025-095796)」であることも明記されている。 これまでの化粧品OEM業...

特許で動くAI──Anthropicが仕掛けた“知財戦争の号砲”

AI開発ベンチャーのAnthropic(アンソロピック)が、200ページ以上(報道では234〜245ページ)にわたる特許出願(または登録)が明らかになった。その出願・登録文書には、少なくとも「8つ以上の発明(distinct inventions)」が含まれていると言われており、単一の用途やアルゴリズムにとどまらない広範な知財戦略が透けて見える。 本コラムでは、この特許出願の概要と意図、そしてAI...

SoC時代の知財戦争──ホンダと吉利が仕掛ける“車載半導体覇権競争”

自動車産業が「電動化」「自動運転」「ソフトウェア定義車(SDV)」へと急速にシフトするなか、車載半導体・システム・チップ(SoC:System­on­Chip)を巡る知財・開発競争が激化している。特に、ホンダが「車載半導体関連特許を8割増加」させているとの情報が注目されており、同時に中国自動車メーカーが特許活動を爆発的に拡大しているとされる。なかでもジーリー(Geely)が“18倍”という成長率を...

試験から設計へ──鳥大が築くコンクリート凍害評価の新パラダイム

はじめに:なぜ“凍害”がコンクリート耐久性の大きな壁なのか コンクリート構造物が寒冷地・凍結融解環境(凍害)にさらされると、ひび割れ・剥離・かさ上がり・耐荷力低下といった劣化が進行しやすい。例えば水が凍って膨張し、内部ひびを広げる作用や、塩分や融雪剤の影響などが知られている。一方、これらの劣化挙動を実験室で迅速に・かつ実サービスに近づけて評価する試験方法の開発は、長寿命化・メンテナンス軽減の観点か...

Perplexityが切り拓く“発明の民主化”──AI駆動の特許検索ツールが変える知財リサーチの常識

2025年10月、AI検索エンジンの革新者として注目を集めるPerplexity(パープレキシティ)が、全ユーザー向けにAI駆動の特許検索ツールを正式リリースした。 「検索の民主化」を掲げて登場した同社が、ついに特許情報という高度専門領域へ本格参入したことになる。 ChatGPTやGoogleなどが自然言語検索を軸に知識アクセスを競う中で、Perplexityは“事実ベースの知識検索”を強みに急成...

特許が“耳”を動かす──『葬送のフリーレン リカちゃん』が切り開く知財とキャラクター融合の新時代

2025年秋、バンダイとタカラトミーの共同プロジェクトとして、「リカちゃん」シリーズに新たな歴史が刻まれた。 その名も『葬送のフリーレン リカちゃん』。アニメ『葬送のフリーレン』の主人公であるフリーレンの特徴を、ドールとして高精度に再現した特別モデルだ。特徴的な長い耳は、なんと特許出願中の専用パーツ構造によって実現されたという。 「かわいいだけの人形」から、「設計思想と知財の結晶」へ──。今回は、...

“低身長を演出する靴”という逆転発想──特許技術で実現した次世代『トリックシューズ』の衝撃

ファッションと遊び心を兼ね備えた新発想のシューズ「トリックシューズ」が市場に登場した。通常、多くの「シークレットシューズ」や「厚底スニーカー」は身長を高く見せるために設計されるが、本モデルは逆に身長を「低く見せる」ための構造を意図しており、そのためにいくつもの特許技術が組み込まれているという。今回は、このトリックシューズの設計思想・技術構成・使いどころ・注意点などを掘り下げてみたい。 ■ コンセプ...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る