JASRAC、フィンガープリント技術で店舗での利用楽曲を 自動特定するデバイスのトライアルを実施


日本音楽著作権協会(本部:東京都渋谷区、理事長:浅石 道夫、以下「JASRAC」)はフィンガープリント技術を用いて利用楽曲を自動的に特定するデバイス(Audoo Audio Meter)を店舗等に設置して、楽曲特定における精度の検証と運用面の課題等を把握するためのトライアルを実施することを21年12月17日公表した。

JASRACが演奏権分野において、フィンガープリント技術を用いて利用曲目の収集を行うのは、初めてとなる。

トライアル実施にあたっては、一般社団法人JDDAの協力を得て、東京都渋谷区のDJバー「Shibuya CLUB BALL」と「THE ROOM」にデバイスを設置するとともに、JDDAが行なうDJプレイ配信「Japan DJ.net-ONLINE-」の収録会場でも検証が行なわれる予定。

デバイスは、イギリス・ロンドンのスタートアップ企業Audoo Limitedが開発・提供するもので、店舗などで再生される楽曲のフィンガープリントを常時取得し、データベースとの照合によって特定できた楽曲タイトルを自動的にリスト化する。

同社はMidemが主催する音楽関連テクノロジーのスタートアップ・コンペティション「Midemlab」の2020年「マーケティング/データ/分析」部門でWinnerを受賞している。

JASRACは「今後もテクノロジーの活用を通じて、音楽利用者からお支払いいただく著作物使用料を、より正確に、より低コストで、権利者に分配する取り組みを推進してまいります」とコメント。

JDDA代表理事の角田敦(Watusi)氏は「あの時、あのクラブでDJがプレイしていた自分の曲。嬉しい反面その権利がそのまま自身に返ってくると想像する音楽家は少ないと思う。トライアルに名乗りを挙げてくれた老舗の音箱に感謝しつつ、一刻も早く具体性のある未来を感じたいと思っている。ブロックチェーンの時代にサンプリングは似合わないから」と語っている。

Audoo Limitedのデモンストレーション動画のトップ

このトライアルに寄せられたコメント(敬称略)

角田 敦(Watusi) (一般社団法人JDDA 代表理事、COLDFEET)
あの時、あのクラブでDJがプレイしていた自分の曲。嬉しい反面その権利がそのまま自身に返ってくると想像する音楽家は少ないと思う。その理由でもある包括の裏側で実際どのように曲目が収集されているのか、問題点も様々語られてきたが、具体的な未来は見えてこなかった。今、JASRACが新たなデバイスを使ってそんな未来を切り開こうとしている。トライアルに名乗りを挙げてくれた老舗の音箱に感謝しつつ、一刻も早く具体性のある未来を感じたいと思っている。ブロックチェーンの時代にサンプリングは似合わないから。

鈴木 貴歩 (エンターテック・アクセラレーター、Midem日本アンバサダー、Midemlab審査員)
世界の音楽テクノロジーは業界が抱えていた課題を解決し、クリエイターの表現と可能性を解放しています。私が審査員を務めているグローバル音楽テクノロジーのスタートアップイベント「Midemlab」では未来を担う若い音楽テクノロジー企業が続々と輩出されています。JASRACがその中の1社である「Audoo」とパートナーシップを組み、データから日本のクリエイターや権利者の課題を解決する取り組みを行うことは、とても素晴らしい取り組みです。

Ryan Edwards (Audoo Limited founder and CEO)
我々はJASRACとのパートナーシップの発表を心より喜んでおり、JASRAC、そして世界中の演奏権管理団体に最も正確なデータを提供することにコミットしております。緊密に連携し、最新のテクノロジーソリューションを提案することで、我々はアーティストへのより正確な報酬の支払いを実現します。このミッションこそが我々のすべてなのです。

なお、今回の利用楽曲を自動的に特定するデバイス(Audoo Audio Meter)については、高性能の集音マイクとモバイルインターネット通信機能を備えるデバイスで、音声そのものを録音・送信することはなく、楽曲のフィンガープリント(音の波形データ)のみを取得して、データベースとの照合を行う。照合により特定できた楽曲タイトル等が自動的に集約・リスト化される。


【オリジナル記事・引用元・参照】 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000071197.html https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1375218.html


Latest Posts 新着記事

知財の主戦場は「充電」から「交換」へ——CATLが先回りする日本市場の布石

世界最大級の車載電池メーカーCATLは、セルやパックの“モノづくり”を超えて、交換式バッテリーによる「BaaS(Battery as a Service)」へと事業射程を拡張している。交換ステーション、共通モジュール、運用ソフト、資産管理—この新モデルが成立するとき、勝負を決めるのは工場規模だけではない。規格化を押さえる特許と、サプライチェーン横断で効くサービス設計の知財である。中国本土では、Si...

環境×技術×知財 BlueArchがつくる“持続可能な海洋モニタリング”の新モデル

海岸林、マングローブ、塩沼、藻場などの ブルーカーボン生態系 は、地球温暖化対応の大きな鍵となる。これらの環境は、陸上森林よりも濃密に炭素を隔離する能力を持つという報告もある。Nature+2USGS+2 だが、こうした海・沿岸域の調査・保全には「アクセス困難」「高コスト」「リアルタイム性の欠如」といった課題が横たわる。ここに、ドローン技術、GPS(あるいは水中位置推定技術)、そして特許設計による...

ファーウェイ、特許で動く EV×5G基地局に見る中国知財の拡張戦略

■ 序章:静かに増える“赤い知財網” 特許庁の公開データを丹念に追うと、近年ひとつの変化が浮かび上がる。日本国内での中国企業による特許出願が、2015年以降、年率二桁で増加しているのだ。 とりわけ通信・電池・モビリティといった「脱炭素×デジタル」分野に集中しており、日本企業が得意とする領域を正面から狙っている。こうした動きの中心にいるのが、通信大手・華為技術(ファーウェイ)である。 米中摩擦のさな...

終わりなき創造の旅 厚木の発明家が挑む“次の技術革命”」

特許数でギネス更新 21世紀のエジソン、厚木に―発明の街が問いかける、日本の未来図 神奈川県厚木市―東京からわずか1時間足らずの距離にあるこの街が、世界の技術史に名を刻んだ。特許数の世界記録を更新した発明家、山﨑舜平(やまざき・しゅんぺい)氏が拠点を構えるのが、まさにこの地である。彼の名がギネス世界記録に再び載ったというニュースは、科学技術の世界だけでなく、日本人のものづくり精神を象徴する話題とし...

知財は企業の良心を映す鏡――4億ドル評決が語るイノベーションの倫理

2025年10月、米テキサス州東部地区連邦地裁で、韓国の大手電子機器メーカー・サムスン電子に対し、無線通信技術の特許侵害を理由に4億4,550万ドル(約690億円)の賠償を命じる陪審評決が下された。この判決は、単なる企業間の紛争を超え、ハイテク産業における知的財産権(IP)の重みを再認識させる事件として、世界中の知財関係者の注目を集めている。 ■ 「技術を使いたいが、支払いたくない」——内部文書が...

知財が揺るがす電機業界――TMEIC×富士電機、UPS特許訴訟の裏側

2025年夏、産業用電源装置分野を揺るがすニュースが伝わった。東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が、富士電機の無停電電源装置(UPS)製品が自社の特許を侵害しているとして、韓国において訴訟および輸入禁止の措置を求めた件である。韓国貿易委員会(KTC)は8月下旬、TMEICの主張を一部認め、富士電機製の特定UPSモデルについて韓国への輸入を禁止する決定を下した。日本企業同士の知財紛争が、国外で具...

「JIG-SAW、AI画像技術で米国特許を獲得へ 知財を武器にグローバル競争へ挑む」

はじめに:発表概要と意義 JIG-SAW(日本発の IoT / ソフトウェア/AI ベンチャーと理解される企業)は、米国特許商標庁から「コンピュータビジョン技術」に関する Notice of Allowance(特許査定通知) を取得した旨を、自社ウェブサイトおよびニュースリリースで公表しています。 具体的には、JIG-SAW は「コンピュータビジョン技術、画像処理・画像生成支援技術」分野において...

「特許で世界を包囲する中国 イノベーション強国への加速」

はじめに:なぜ国際特許出願数が注目されるか イノベーション(技術革新)の国際競争力を測る指標として、研究開発投資、論文発表数、特許出願数などが長らく注目されてきました。特に国際特許(例えば、特許協力条約 PCT 出願、あるいは各国出願による外国での保護を意図した出願)は、一国の発明・技術が国際市場を見据えて保護を志向していることを示すため、技術力だけでなく国際志向性の強さも反映します。 近年、中国...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る