「修理する権利」が拡大しゲーム機の修理が可能に、 ただし、光学ドライブ搭載端末のみ


アメリカの著作権法により定められた著作権登録を管理するアメリカ合衆国著作権局が、「修理する権利」を認める新しい規則を採用したことを、IT系ニュースサイトGigazineは21年11月1日伝えている。

この規則は、消費者が所有するデバイスを自分の手で修理することを防ぐために企業が利用してきた「デジタルミレニアム著作権法(DMCA)」の一部を免除するというものであり、消費者が自身の手でゲーム機を修理することができる範囲が拡大する。

「修理する権利」は、消費者がメーカーを通さずに製品を修理できるようにするべきであるというもの。例えばゲーム業界の場合、長らくゲーム機に「このシールを剥がすと保証は無効」と書かれた封印シールが貼られており、ユーザーがサードパーティーの修理業者などを通して勝手にゲーム機を修理することを防いでいた。

しかし、この封印シールはアメリカの法律に照らし合わせると違法であったため、近年問題視されるようになっており、さまざまな業界で修理する権利を求める動きが加速している。

一方で、ゲーム機関連の修理する権利を求める法案が提出されたことを受け、2017年にはゲーム業界が団結して修理する権利を保証する法案を廃案に追い込むためのロビー活動を行っていると報じられている。

すでにイギリスではスマートフォンやノートPCは対象外であるものの、修理する権利を保証する法律が施行されており、アメリカでも修理する権利をメーカーが制限することを禁じる規制案の作成をバイデン大統領が指示したと報じられている。

そんな中、アメリカ合衆国著作権局が修理する権利を認める新しい規則を採用した。メーカー側はDMCAを理由に修理する権利をないがしろにしてきたが、新しい規則では「端末の制御や機能にコンピュータープログラムを含む合法的に取得された機器であり、著作権物へのアクセスを目的としたものでなく、診断・保守・修理のために著作権を回避する必要がある場合」は修理する権利を認めるとしている。

これについて、テクノロジーメディアのTechSpotは「この規則はあらゆる変更をカバーするのに十分な広さの言葉で表現されており、デバイスの密輸入や著作権侵害を明確に禁じています」と記している。

ただし、規則には「この規則における『デバイスの修理』は、デバイスを元の仕様に従って動作する状態に復元する、あるいはデバイスで許可されている仕様の変更に基づきデバイスを動作する状態に戻すということを指す。

ゲーム機の場合、『デバイスの修理』は光学ドライブの修理あるいは交換のみに限定され、回避または無効化された技術的保護手段を復元することが必要です」とも記されており、光学ドライブ部分の修理にのみ限定される模様。

つまり、Nintendo SwitchやPlayStation 5 デジタル・エディション、Xbox Series Sといった光学ドライブを搭載していないゲーム機については修理が禁止されている。また、光学ドライブを搭載しているかいないかにかかわらず、光学ドライブ以外の部位の修理はOEMあるいは認定されたサードパーティー修理業者での修理のみが認められている。

この規則について、TechSpotは「制限はあるものの、新しい規則は『修理する権利』の改革に向けた重要な一歩です。DMCAのセクション1201は所有するデバイスを自分で修理したりサードパーティーの修理業者を選択したりする消費者の能力を制限するために、製造業者によって悪用されてきました」と述べ、修理する権利を拡大していく流れの中で大きな一歩となるとしている。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://gigazine.net/news/20211101-right-to-repair-game-consoles/


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