都市交通を変える!FreeMileの三輪スクーター、特許技術でメンテナンスも進化


近年、都市部における短距離移動のニーズが高まる中、電動キックボードや電動スクーターが新たなモビリティとして注目を集めている。その中でも、FreeMile株式会社が手がける三輪電動スクーター「atico(アチコ)」は、これまでの電動モビリティにおける課題を解決する独自技術と設計で、業界内外から熱い視線を浴びている。

2024年、FreeMileは「工具を使わずに保安部品を簡単に着脱・交換可能にする構造」に関する特許を取得した。これは、同社が開発した「atico」に搭載されているメンテナンス性向上のための構造技術であり、ユーザーにとってより身近で安全なモビリティ環境を提供する大きな一歩となった。

工具不要、ユーザー主導のメンテナンス時代

通常、スクーターやバイクのメンテナンスには専門の工具や技術が必要であり、ユーザー自身で行うにはハードルが高い。特に電動モビリティの普及が進む中で、整備性の低さやメンテナンスの手間が課題として挙げられていた。

FreeMileが取得した特許は、そうした従来の常識を覆す。保安部品——具体的には後写鏡、前照灯、尾灯、ブレーキレバー、方向指示制御などのパーツ——を、工具を使わず手軽に着脱・交換できるよう設計された構造である。これにより、万が一パーツが故障した場合でも、専門業者に頼らずユーザー自身で迅速に交換可能。修理費用を抑えると同時に、ダウンタイム(使用不可期間)を最小限に抑えることができる。

この構造は、サブスク型モビリティの運用面でも大きな利点がある。例えば複数台の車両を一括管理する企業や自治体にとっては、保守作業の効率化や部品管理の簡素化が可能になる。

「三輪」の構造が生む、驚異的な安定性

「atico」の最大の特徴のひとつが、その車体構造にある。前1輪、後2輪という三輪タイプを採用することで、従来の二輪型キックボードに比べて大幅に安定性が向上している。特に注目すべきは、後輪2輪が独立して路面に追従する機構を持っている点であり、段差や斜面といった不整地でもバランスを崩しにくい。

この三輪構造は、体重移動やバランス感覚に自信のないユーザー——たとえば高齢者や運転初心者——にも安心して乗ってもらえるよう設計されている。これにより、電動モビリティが特定の層だけのものではなく、あらゆる年齢・性別の人々に開かれた移動手段となる可能性を示している。

日本製バッテリー&IPX6防水で全天候対応

「atico」には、日本製の大容量リチウムイオンバッテリーが搭載されており、1回の充電で最大50kmの走行が可能。一般的な通勤や買い物といった日常利用には十分な航続距離である。また、配線を車体内部に収納する独自の設計により、外観のスマートさだけでなく、高い防水性(IPX6等級)も確保している。

IPX6とは、あらゆる方向からの強い水流にも耐えうるレベルの防水性能であり、突然の豪雨でも内部機器が故障しない設計になっている。電動モビリティにとって「水」は大敵であり、雨天時の使用や屋外保管が難しいとされてきたが、FreeMileはその壁を見事に乗り越えた。

安全装備の充実と法規制への対応

「atico」は安全機能にも妥協がない。前後のウインカーに加えて、車両後部にも補助ウインカーを設置。さらに、ハザード機能も標準搭載されており、緊急時や夜間走行でも高い被視認性を確保している。これにより、ユーザーは安心して交通の中で自己の存在をアピールできる。

また、2023年7月に施行された新たな電動キックボード法制度にも完全対応。歩道モードでは最高時速6km、車道モードでは20kmまでに制限され、モード切り替え時には明確な速度表示灯が点灯する仕組みを採用している。こうした法規対応の徹底も、信頼性の高さを裏付けている。

IoT連携で未来型モビリティへ

FreeMileの製品開発におけるもう一つの柱が「デジタル連携」である。車体には通信モジュールが内蔵されており、バッテリー残量、GPS情報、車両ステータスなどをクラウド経由で取得可能。これにより、ユーザーはスマートフォンアプリを通じて遠隔から施錠・解錠や状態確認が行えるようになっている。

将来的には、シェアリングサービスとの連携やスマートシティとの統合、事故検知や盗難通知といった付加機能の拡充も視野に入っており、「atico」は単なる移動手段を超えた、次世代の情報インフラの一部としての役割も期待されている。

社会インフラとしての三輪モビリティ

日本国内では高齢化が進み、車の運転を卒業する「免許返納者」も年々増加している。こうした層にとって、近所のスーパーや病院までの移動手段として、「atico」のような安定・安全・コンパクトな電動モビリティは非常に有効だ。

さらに、観光地やリゾート施設、広大な工業団地や大学キャンパスなど、歩くには遠く、車では大きすぎるようなエリアにおいても、このタイプの三輪電動スクーターは理想的なソリューションとなり得る。

終わりに:移動の「不安」を「自由」に変える技術

FreeMileが掲げるビジョンは、「誰もが安心して移動できる社会の実現」である。三輪構造による物理的な安定性、特許取得によるメンテナンス性の革新、IoTによる運用のスマート化——これらすべてが、単なる製品スペックではなく、人々の「自由な移動」を支える根幹技術として融合している。

技術革新が都市の形を変え、社会を進化させるように、FreeMileの三輪電動スクーター「atico」は、私たちの「足」と「自由」を取り戻すための強力なパートナーとなるだろう。


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