1月に出願公開されたAppleの新技術〜フランジ付きレンズモジュール〜


近年、スマートフォンやタブレットなどの小型電子機器において、高品質なカメラの需要が急増しています。このニーズに応えるため、Apple Inc.が出願した特許(出願番号18/223312)では、フランジ付きレンズモジュールを用いたカメラアセンブリの新しい設計が提案されています。本コラムでは、この特許の内容を詳しく解説し、技術的な特徴や利点について考察します。

発明の名称:Camera Assemblies with a Flanged Lens Module
出願人名:Apple Inc.
発明者:Birnbaum, Zachary W. , Smyth, Nicholas D.
公開日:2025年1月23日
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/US-A-2025-0028228/50/ja

技術の概要

この特許出願は、レンズモジュール、カメラハウジング、アクチュエータモジュールを含むカメラアセンブリに関するものです。レンズモジュールは、光軸に沿って配置された少なくとも1つのレンズ要素と、その周囲を部分的に囲むレンズバレルを含みます。レンズバレルには、光が入射するための入力アパーチャを定義するフランジが設けられており、フランジの高さは入力アパーチャから外縁に向かって変化します。この設計により、レンズモジュールはカメラハウジングに対して回転することが可能になります。

技術的な利点

この発明に基づくカメラアセンブリの設計には、以下のような利点があります:

1. コンパクトな設計

フランジの高さを変化させることで、カメラモジュールのサイズを小さく保ちながら、広い視野を確保できます。

2. 光学的画像安定化

アクチュエータモジュールによるレンズの回転機構により、手ブレを軽減し、より安定した画像を提供します。

3. ユーザーエクスペリエンスの向上

フランジの設計により、ユーザーがカメラの内部構造を視認しにくくし、デバイスの美観を保つことができます。

図4Bは、カメラアセンブリ400におけるフランジ付きレンズモジュール410の構成を示しています。このレンズモジュールは、スマートフォンなどのデバイスの内部に配置され、光を受け取る重要な役割を果たします。

レンズモジュール410の構成要素

1. レンズバレル415

レンズモジュール410の中心的な構成要素であり、光学要素を保持する役割を担っています。レンズバレルは、内壁417と外壁419から構成されており、内部には複数のレンズ要素が配置されています。

2. レンズ要素の配列

レンズモジュール410には、光軸「a2」に沿って積み重ねられた複数のレンズ要素が含まれています。具体的には、最上部のレンズ要素420、中間のレンズ要素430、最下部のレンズ要素440が配置されています。各レンズ要素は、レンズバレル415の内壁417に直接または他のレンズ要素を介して接続されており、正確な位置に配置されています。

3. 光の入射

最上部のレンズ要素420は、レンズモジュール410に入射する光を受け取ります。このレンズ要素の一部は、レンズモジュール410の外部表面を形成しており、光が透過する際の最初の接触点となります。このレンズ要素420は、丸みを帯びた上面を持つ場合もあり、光の入射特性を向上させる設計がなされています。

カメラアセンブリ400の配置

カメラアセンブリ400は、デバイスハウジング105の内部ボリューム408に配置されており、透明な丸みを帯びたカバー107の下に設置されています。このカバーは、光がレンズモジュール410に入射するための通路を提供します。

カメラハウジング460は、レンズモジュール410の一部を囲む構造を持ち、上部ハウジング462と下部ハウジング464から成り立っています。これにより、カメラアセンブリ全体が保護され、電磁干渉からシールドされます。

まとめ

Appleの特許出願におけるフランジ付きレンズモジュールは、カメラアセンブリの設計において革新的なアプローチを提供しています。光学的な性能を向上させるだけでなく、デバイスのコンパクトさやユーザーエクスペリエンスの向上にも寄与しています。この技術は、今後のスマートフォンやタブレットにおけるカメラ機能の進化に大きく貢献することが期待されます。



Latest Posts 新着記事

工場を持たずにOEMができる──化粧品DXの答え『OEMDX』誕生

2025年10月31日、化粧品OEM/ODM事業を展開する株式会社プルソワン(大阪府大阪市)は、新サービス「OEMDX(オーイーエムディーエックス)」を正式にリリースした。今回発表されたこのサービスは、化粧品OEM事業を“受託型”から“構築型”へと転換させるためのプラットフォームであり、現在「特許出願中(出願番号:特願2025-095796)」であることも明記されている。 これまでの化粧品OEM業...

特許で動くAI──Anthropicが仕掛けた“知財戦争の号砲”

AI開発ベンチャーのAnthropic(アンソロピック)が、200ページ以上(報道では234〜245ページ)にわたる特許出願(または登録)が明らかになった。その出願・登録文書には、少なくとも「8つ以上の発明(distinct inventions)」が含まれていると言われており、単一の用途やアルゴリズムにとどまらない広範な知財戦略が透けて見える。 本コラムでは、この特許出願の概要と意図、そしてAI...

SoC時代の知財戦争──ホンダと吉利が仕掛ける“車載半導体覇権競争”

自動車産業が「電動化」「自動運転」「ソフトウェア定義車(SDV)」へと急速にシフトするなか、車載半導体・システム・チップ(SoC:System­on­Chip)を巡る知財・開発競争が激化している。特に、ホンダが「車載半導体関連特許を8割増加」させているとの情報が注目されており、同時に中国自動車メーカーが特許活動を爆発的に拡大しているとされる。なかでもジーリー(Geely)が“18倍”という成長率を...

試験から設計へ──鳥大が築くコンクリート凍害評価の新パラダイム

はじめに:なぜ“凍害”がコンクリート耐久性の大きな壁なのか コンクリート構造物が寒冷地・凍結融解環境(凍害)にさらされると、ひび割れ・剥離・かさ上がり・耐荷力低下といった劣化が進行しやすい。例えば水が凍って膨張し、内部ひびを広げる作用や、塩分や融雪剤の影響などが知られている。一方、これらの劣化挙動を実験室で迅速に・かつ実サービスに近づけて評価する試験方法の開発は、長寿命化・メンテナンス軽減の観点か...

Perplexityが切り拓く“発明の民主化”──AI駆動の特許検索ツールが変える知財リサーチの常識

2025年10月、AI検索エンジンの革新者として注目を集めるPerplexity(パープレキシティ)が、全ユーザー向けにAI駆動の特許検索ツールを正式リリースした。 「検索の民主化」を掲げて登場した同社が、ついに特許情報という高度専門領域へ本格参入したことになる。 ChatGPTやGoogleなどが自然言語検索を軸に知識アクセスを競う中で、Perplexityは“事実ベースの知識検索”を強みに急成...

特許が“耳”を動かす──『葬送のフリーレン リカちゃん』が切り開く知財とキャラクター融合の新時代

2025年秋、バンダイとタカラトミーの共同プロジェクトとして、「リカちゃん」シリーズに新たな歴史が刻まれた。 その名も『葬送のフリーレン リカちゃん』。アニメ『葬送のフリーレン』の主人公であるフリーレンの特徴を、ドールとして高精度に再現した特別モデルだ。特徴的な長い耳は、なんと特許出願中の専用パーツ構造によって実現されたという。 「かわいいだけの人形」から、「設計思想と知財の結晶」へ──。今回は、...

“低身長を演出する靴”という逆転発想──特許技術で実現した次世代『トリックシューズ』の衝撃

ファッションと遊び心を兼ね備えた新発想のシューズ「トリックシューズ」が市場に登場した。通常、多くの「シークレットシューズ」や「厚底スニーカー」は身長を高く見せるために設計されるが、本モデルは逆に身長を「低く見せる」ための構造を意図しており、そのためにいくつもの特許技術が組み込まれているという。今回は、このトリックシューズの設計思想・技術構成・使いどころ・注意点などを掘り下げてみたい。 ■ コンセプ...

“特許力”が食を変える――味の素が首位に輝く、2025年 食品業界特許資産ランキングが示す未来戦略

2025年版の「食品業界 特許資産規模ランキング」で味の素が第1位となった。評価は、個々の特許の“注目度”をスコア化して企業ごとに合算する方式(パテントスコア)で、2024年度(2023年4月1日〜2025年3月末登録分)を対象としている。トップ10は、1位 味の素、2位 日本たばこ産業(JT)、3位 Philip Morris Products、4位 サントリーHD、5位 キリンHD、6位 CJ...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る