4月に出願公開されたAppleの新技術〜吸着力を劇的に高め、ひねって外せる次世代MagSafeの磁気構造〜
はじめに
ワイヤレス充電器にスマートフォンを置いたとき、少しずれていて充電されていなかったり、逆にスタンドから外そうとしたら本体ごと持ち上がってしまったりした経験はありませんか? これまでのMagSafeも非常に便利でしたが、保持力と使い勝手のバランスにはまだ改善の余地がありました。 Appleから2026年4月2日に公開された発明は、デバイスの厚みを増やすことなく磁力を大幅に強化し、さらに「ひねるだけで簡単に外せる」という直感的な操作を実現する、次世代の磁気アライメント(位置合わせ)に関する特許出願です。
発明の名称:MAGNETIC ALIGNMENT COMPONENTS FOR INDUCTIVE CHARGING SYSTEMS(誘導充電システム用の磁気アライメントコンポーネント)
出願人名: Apple Inc.
公開日: 2026年4月2日
公開番号: US 2026/0095069 A1
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/US-A-2026-0095069/50/ja
従来技術の問題点:磁力強化のジレンマ
スマートフォンや充電器をより強力に吸着させるためには、これまで以下のような問題がありました。
- デバイスの厚み増加 単純に磁石の厚みを増やせば吸着力は上がりますが、スマートフォンのような薄型デバイスにおいて、全体の厚みが増してしまうことは避ける必要があります。
- 磁気によるダメージのリスク 磁石を分厚くすると表面の磁場(表面ガウス)が強くなりすぎ、クレジットカードの磁気ストライプなどに近づけた際、データを消去してしまう(デマグネタイズ)リスクが高まります。
革新的な磁気アライメント構造とクロッキング
Appleはこの特許で、磁石の配置や極性を緻密にコントロールすることでこれらの課題を解決しています。
- 吸着力を倍増させる「ヘキサポール(6極)構造」
従来のMagSafeは内側と外側の2つの磁化領域(クアッドポール)で構成されていましたが、本発明では第3の磁化領域を追加した「ヘキサポール構造」などを提案しています。これにより、厚みを増やすことなく吸着力を従来の約2倍近くまで向上させつつ、表面の磁気漏れを抑えることが可能になります。 - ひねって外せる「クロッキング(ツイスト・トゥ・リリース)」
磁気リングを扇状(セクター)に分割し、交互に異なる磁化パターンを持たせる工夫が施されています。これにより、特定の回転角度(縦や横など)に合わせた時だけ磁力が最大に働き、少し「ひねる(ツイスト)」と磁力が反発して簡単に取り外せる「ツイスト・トゥ・リリース」が実現します(図9)。 - 旧モデルとの完全な後方互換性
この新しい強化型の磁気コンポーネントは、従来型(ベースライン)のMagSafe搭載デバイスや充電器とも互換性を維持しており、そのまま吸着させることができます。

構造解説
まず従来の構造をみておくと、図1で示されるように、従来のMagSafeはテトラポール(4極)の磁力構造でした。

これに対して、ヘキサポール(6極)構造は図2のようなものとなり、最大15N(約1350g)もの超強力な吸着力を実現しました。
さらに、図6には磁気リングを複数のセクターに分割した様子が示されており、このパターンの組み合わせによって、回転による「ツイスト・トゥ・リリース」を可能にしています。

解決される課題
- 薄型化・安全性と超強力吸着の両立
厚みを増やさずに15Nという強力な保持力を実現しつつ、クレジットカード等への磁気ダメージを防ぎます。 - ユーザー体験の劇的な向上
「置けば強力に固定され、ひねれば軽く外れる」というクロッキング技術により、スタンドが一緒に持ち上がってしまうような日々の小さなストレスを解消します。 - 25W高速充電の安定化
より厳密なアライメント(位置合わせ)が可能になることで、電力伝送の効率が最大化され、充電中の発熱が抑えられます。
まとめ
今回出願公開されたAppleの特許技術は、単なる「磁石の強化」にとどまらず、磁力の働く向きや強さを回転角に応じて緻密にコントロールするというものです。この技術は、私たちが毎日行う「充電する」「スタンドに固定する」という何気ない動作を、より確実で快適なものへと進化させていくことでしょう。
- 薄型化・安全性と超強力吸着の両立