11月に入り、気温の低下と共に、私たちは冬の訪れを感じ始めています。この時期は、感染症のリスクも高まるため、予防技術の重要性が一段と増します。コロナ禍においてマスクの需要が大きく伸びましたが、コロナに限らず、インフルエンザ等の感染症予防においても、マスクの有効性は高く評価されています。
今回のコラムでは、UNIQLOを展開する株式会社ファーストリテイリングから2021年に出願され、2023年に特許出願公開されたマスクについて、紹介します。
装着感を向上させたマスク (特開2023-79080)
UNIQLOを展開する株式会社ファーストリテイリングは、フィルター性能と肌触りを両立させた多層構造のマスクを特許出願し、2023/6/7に出願公開されました。
このマスクは、マスクの表面生地と裏面生地の間に芯地を設けることよって、形態を安定させ、さらに、両生地間に挟まれるフィルターを表面生地と裏面生地の両方に熱圧着して接合することにより、層間のずれを防止し、型崩れしにくくなっています。
従来のマスクでは、フィルター性能と肌触りを両立させるために多層構造にすることはよく行われてましたが、このような構造にすると各層が位置ずれすることによって型崩れしやすく、そのため、マスクを着用して口から息を吸ったときに生地の一部が口に張り付いてしまい、呼吸しにくくなることが問題でした。
層の端部を接合してずれをなくす
マスクの断面構造をみながら簡単に説明します。
まず表面生地11に芯地14aが重ねられ、熱圧着されます。裏面生地12にも芯地14bが重ねられて熱圧着されます。表面生地11に接合された芯地14aの表面にフィルター13が重ねられます。フィルター13上には、芯地14bがフィルター13と対面するように裏面生地12が重ねられ、5層の積層体が形成されます。
なお、フィルター13は裏面生地12と圧着するようにしてもよく、その場合は後側から裏面生地12、芯地14b、フィルター13の3層を順に圧着することになります。
このようにして積層されたマスクの生地は、上図のような形に成形されます。このとき、側端1bは、マスクの形態に構成されたときにマスクの前中心に位置することになり、表面生地から前側に露出します。この側端1bの接合部は、他の箇所よりも硬く湾曲した状態を保つことになるため、前中心Mに沿って前側に膨らむ立体形状が形成されます。これにより、裏面生地と着用者の口の間に空間が形成され、呼吸がしやすくなるのです。
また、前中心Mの熱圧着により、本体部1の前中心Mに折り目ができるため、顔から外したマスクを机の上に置いたときに自然にマスクが折りたたまれます。これにより、顔と接触するマスクの裏面生地12が露出しにくく、衛生性に優れるという効果が生まれます。