人に寄り添うAI — 未経験もAI活用で新領域へ

地方移住して野菜づくりをやってみたい。海釣りを楽しみながら過ごしたい。しかもそれは趣味や時間つぶしではなく、少し収穫量を多くして素人でも楽しみながら収入を得られたらなんて私事だが、最近、妄想することもある。もちろん農業や漁業がそんな生半可なことで上手くいくと思っているほど世間知らずでもない。

どんな領域ものプロと素人、その両極での区分けではなく素人でもサポートがあればやりがい生きがいを持って携わることができる世界。趣味が高じて広くなった家庭菜園で収穫されたプチトマトやキュウリ。釣りが上達して思いがけず大漁の日もたまにあるだろう。誰しもそんなときはご近所さんにお裾分けし笑顔をもらう。
そのように、いわばハードルを少し下げることによって就業や転職、地方移住、また定年後の新たなステージへといった働くことへの新たなスタートがきれるのではないだろうか。どんなことでもそれが可能とは言わないが、そんな領域を開発できれば労働力移動、人手不足解消、外国人労働者活用、シニア就業の一助になりそうなものだ。

一方でテクノロジーの進歩。なかでもAIの進化と開発領域はますます広がり、そのスピードも速い。いくつかの職業はAIに取って代わられるのではないかと言われるほど。ここでも人間かAIではなく人間とAIの共生、もしくは“協働”。ひとに寄り添うAI開発。その領域が拡がれば、また提供できれば、それこそ生き方の選択肢もひろがり働く幸福度も上がるのではないだろうか。

たとえばパンを焼く、トマトを栽培するといった技の習得にはそれなりの時間が必要になる。しかしながら、その技をAIで補完できれば短期間でだれもがあるレベルを超えることができる。簡単にいえば初心者にはかまどで美味しいご飯は炊くのは難しいが、高機能な炊飯器を使えばだれもがプロ並みのご飯が炊けるということだ。

株式会社Happy Quality(本社:静岡県浜松市 代表:宮地 誠、以下「ハッピークオリティー」)は、農業施設や農業資材の販売を手掛ける国内トップクラス農業総合支援企業であるイノチオアグリ株式会社(本社:愛知県豊橋市 代表:石黒信生)と共同で農業の協業事業を始めている。

その事業の中核は、両社の技術を組み合わせた「AI灌水制御装置」を用いた高品質・高機能トマト「Hapitoma(ハピトマ)」(商標登録第6550945号)のFC展開だ。  

同時に開発された糖度の高い“ハピトマ”を効率的に安定生産するのがAI潅水(かんすい)システム。トマトの糖度は適切な水量を適切なタイミングで与えることがもっとも大切で経験も必要となる。水分が足りてない葉のしおれ具合や温度、湿度、日照量などのデータをもとにAIが最適な水やりを学習。養分を含んだ水を自動で与える。これは18年に実用化された実証済のシステムた。これこそひととAIの協働農業だ。

この誰もが高品質・高単価なトマトを栽培できるスキームの構築によって、農業における知見がない未経験者に対しても、農家として“稼げる農家”になるための独立支援の展開をはじめたスタートアップ企業のハッピークオリティー。当然個人差はあるが約1〜3年間で1人前の農業家になれるような独立支援を実施。まずは現場で先輩農業家から農業のイロハや同社が構築した栽培技術を学んだのち運営全般まで支援していくというもの。
このサービス、いわば素人支援型のAIパッケージ提供ビジネスともいえる。コストカットや時短などからのアプローチではなくひとに寄り添う視点からのAI活用、だれもがやりたいことをいつからでも始められる。人生二毛作、三毛作、ひととAIとの“協働”がすでに始まっているようだ。


ライター

渡部茂夫

SHIGEO WATANABE

マーケティングデザイナー、team-Aプロジェクト代表

通販大手千趣会、東京テレビランドを経て2006年独立、“販売と商品の相性” を目線に幅広くダイレクトマーケティングソリューション業務・コンサルティングに従事。 通販業界はもとより広く流通業界及びその周辺分野に広いネットワークを持つ。

6次産業化プランナー、機能性表示食品届出指導員。通販検定テキスト、ネットメディアなどの執筆を行う。トレッキングと食べ歩き・ワインが趣味。岡山県生まれ。