人間工学に基づいた究極のゲーミングチェア
まさに SF! 戦闘機コックピットのような究極ゲーミングチェア
ゲームの開発や、ゲームをプレイする際など、仕事や遊びにおいて、PCを使用することは現代人の常識となりました。
昨今では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点で、自宅等でのリモートワークが急速に進み、PCの前で仕事をすることがこれまで以上に多くなった方も多いのではないでしょうか。
台湾のPCメーカー、ACERは、よりPC作業環境、特にゲーム環境の快適化が図れ、これまで以上の没入感を体感できる、完全にユーザーを取り囲む「コックピット」のようなゲーミングチェアを特許出願しました。
一般に、ゲームの開発や、ゲームをプレイする際をはじめとして、コンピュータを使用するユーザーは、常に快適な使用環境を要求するものです。
当然ながら、ユーザーが異なれば、個人それぞれ異なる身体形状を持っているわけですから、各々の「快適さ」が異なることは至極あたりまえのことといえます。
そこで、発明では、従来の『モニター、コンピュータ、椅子、コントローラ』が一体 となったコンピュータ・コックピットに、ユーザーの情報を得て、椅子の座面やバックレストのチルト角度を調整するようにしました。
この出願は、既に台湾では特許が認められており、台湾内の出願の優先権を主張して、現在米国特許庁で特許審査が行われています。
非常に大掛かりなPC環境なので、個人宅に置くことのできるようなものではないかもしれませんが、ある意味究極のゲーミングチェアとも言えますので、e-スポーツなどを提供するゲーム施設やネットカフェで大きな需要が期待できそうですね。
発明のポイント
コンピュータ・コックピット>
本発明は、ユーザーの身体形状に対応して各種設定を変化させる、ユーザー対話型の「コ ンピュータ・コックピット」に関するものです。
ここで、コンピュータ・コックピットと いう用語は、簡単に説明するなら、『パソコン一体型のゲーミングチェア』というべきものを意味します。
ところで、一般に、ゲームの開発や、ゲームをプレイする際をはじめとして、コンピュ ータを使用するユーザーは、常に快適な使用環境を要求するものです。
当然ながら、ユーザーが異なれば、個人それぞれ異なる身体形状を持っているわけです から、各々の「快適さ」が異なることは至極あたりまえのことといえます。
しかし、従来 の単一サイズの「コックピット」は、ユーザーそれぞれの要求の全てを満たすことはでき ませんでした。
そこで、本発明では、従来の『モニター、コンピュータ、椅子、コントローラ』が一体 となったコンピュータ・コックピットに、
さらにユーザーの情報を得るためのフロントカ メラ 110、バックカメラ 120 を設けて、ユーザーの情報を得ることとし、その情報に基づい て椅子の座面やバックレストのチルト角度を調整するようにしました。
【図1】本発明実施例。バックカメラ 120 でユーザーHB の身長 H1 を測定する。
本発明では、ユーザーがコンピュータ・コックピットに腰掛ける前に、当該コックピッ トのカメラが身長、特に上半身の高さをキャプチャし、最適な椅子の角度とヘッドレスト 及びクッションの距離を調整します。
ユーザーの高さ(身長)が高くなれば、チルト角度を大きく傾けるようにし、低くなれ ばチルト角度を小さくし、上半身が起きるように調整します。
【図2】カメラからのユーザーの情報に応じて椅子の調整を行う概念図
本発明では、椅子の背もたれのチルト角度θT1 だけでなく、フットレスト 330 の角度θ T2 も同時に調整されます。制御装置 170 は、モータ及びアクチュエータを有しており、こ れによって椅子各部の角度調整等を行います。
このような設計によって、本発明のコンピュータ・コックピットは、ユーザーが当該コ ックピットに入る前に、ユーザーの身体的形状条件に応じた椅子各部の角度及び位置を最 適化します。
【図2】本発明実施例の、ヘッドレストにヘッドホンを埋め込む図
本発明は、ヘッドレストに左右チャンネルを有するヘッドホンを埋め込んでいます。
【図3】フロントカメラ 110 でユーザーの頭がどちらを向いているかを判定する図
本発明は、ユーザーの頭部がどちらを向いているかを、モニター130 のフロントカメラ 110 からのキャプチャ画像を基にして判定し、この判定結果に応じてヘッドレストに埋め込 まれたヘッドホンの左右音量を調整します。
すなわち、ユーザーの頭部が左旋回している場合は、左側チャンネルの出力音量が低く なり、右側チャンネルの音量が高くなります。
ユーザーの頭部が右旋回している場合は、 逆に、左側チャンネルの出力音量が高くなり、右側チャンネルの音量が低くなります。
さらに、この音量調整は、基準値からの差分をとって音量の調整が行われるため、例え ば左側チャンネルの音量を高くする場合は、基準値からの差分を算出し、当該差分に基づ いて右側チャンネルの音量低下をコントロールします。
つまり、いつでも左右のトータル 音量は変わらないという仕組みになっています。
このようにして、ユーザーの身体的データを常にモニタリングして調整を続けることで、 ユーザーはコンピュータ・コックピット内の空間において、快適な調整がなされた結果、没入型仮想現実環境を享受することができ、椅子の調整に悩むことなく、最高のゲーム体 験が可能になるというわけです。
経過情報:台湾では特許化されており、本記事執筆時(2021 年 3 月 1 日)において、台湾 での出願の優先権を主張して米国特許庁で審査係属中。
続いて、同じメーカーが出願中である、「コンピュータ・コックピットとその調整方法」 の技術内容についてご説明します。
発明のポイント
コンピュータ・コックピットとその調整方法>
本発明は、先に述べた「コンピュータ・コックピット」の具体的な駆動機構等について 出願されたものです。コンピュータ・コックピットはシート(座部)、背もたれ、移動可能なディスプレイを含みます。
コンピュータ・コックピットの各種動作を司る駆動モジュ ールや、動作のトリガーとなる検知モジュールは全て当該コックピット内に配置されます。
ユーザーの情報を検知した駆動モジュールは、ディスプレイの回転作動角度を調整し、併 せて背もたれやヘッドレストの圧力検出値、及びシート圧力検出値との差を減らし、適切 な値となるように、リクライニング角度を自動調整します。
【図1】コンピュータ・コックピットに配置された駆動モジュールとセンサーの概略図
本発明は、ディスプレイ 115 を水平方向に駆動可能とし、また、シート、背もたれ、ヘッドレストに配置された検知モジュール 130 からの圧力検出値に基づいて駆動モジュール 120 が回転駆動します。
具体的には、シートと背もたれそれぞれの圧力検出値の差を少なく
するように、リクライニング角度を調整します。これにより、ユーザーの体にかかる負荷 を分散させるという、人間工学に適合する環境を実現することができ、ユーザーの快適性 向上が図れるというわけです。
さらには、人体赤外線センサ 134 を使用して、ユーザーがシートに座っているかどうか を検知します。
同様に、ヘッド部分の赤外線センサ 135 によって、ユーザーの頭がヘッドレストの前面に位置しているかどうかを検知します。
このようなセンサを用いることで、 シートや背もたれ部分に人体が載っているのか、他の荷物等が載っているだけなのかを判 断できます。
赤外線センサ 135 は、ユーザーの頭部の検知だけでなく、目の位置についても同時に検 出します。目の高さの検出値に基づいて、制御モジュールはスライド機構 123 を可動させてディスプレイを AX 方向にスライドさせ、ユーザーの目線とディスプレイの適正な位置調 整を自動で行います。
【図2】コンピュータ・コックピットの動作原理を示す図
左の図は、調整前のコンピュータ・コックピットを表したものです。ディスプレイ 115 は、座面 111 に対して初期角度θ1 を有しています。ここで、座面 111 及び背もたれ 112 は、 軸 A1 によってコンピュータ・コックピットに接続されています。
まず、ユーザーがシート 111 に座り、さらに背もたれ 112 にもたれかかると、シート 111 は、圧力 W1 を受けて、背もたれ 112 は圧力 W2 を受けます。背もたれにかかる圧力 W2 と軸 A1 の力作用位置の間の水平距離が L2 となります。
コンピュータ・コックピットは、圧力検 出値 W1、W2 を基にして、以下の式を満たすように、作動角 θ2 だけ傾きます。
W2sin(θ1+θ2)L2=W1cos(θ2)
この式を満たすように角度 θ2が調整されることは、つまり、圧力 W1 と圧力 W2 がバラ ンスをとっているということを意味しますから、θ2の調整によって、ユーザーの体重を 座面及び背もたれに均等に分散させる調整を行うということになります。
このようにして、 ユーザーに違和感を与えることなく、常に快適な座り心地を提供できるというわけです。
【図3】座面とディスプレイの位置関係を上からみた図
コンピュータ・コックピット 300 を上から見ると、曲面ディスプレイ 315 とシート 311 との関係がよくわかります。
シート 311 は背もたれ 312 とともに、回転軸 326 によって回 転可能となっています。
このような構成とすることで、ユーザーがコンピュータ・コックピットに出入りする際 に、より大きな空間をとることができ、ユーザーが着座するとシート 311 及び背もたれ 312 は自動的に回転し、ユーザーを作業空間へ導くことができます。
以上説明しましたように、本発明のコンピュータ・コックピットは人間工学に基づいた 快適なゲーミング環境を実現することができ、これまで以上に、より没入感のある体験が できる、新たなゲーミングチェアといえそうです。
経過情報:台湾では特許化されており、本記事執筆時(2021 年 3 月 1 日)において、台湾 での出願の優先権を主張して米国特許庁で審査係属中。
概要
発明の名称:Computer Cockpit
出願番号:US201916369082
公開番号:US2020/0147484A
優先日:2018.11.8 (優先権主張国:台湾)
出願人:Acer Incorporated
発明の名称:Computer Cockpit and Adjusting Method Thereof
出願番号:US201916431754
公開番号:US2020/0260878A1
優先日:2019.2.16 (優先権主張国:台湾)
出願人:Acer Incorporated
<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。