人体フレンドリーに殺菌!

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人体フレンドリーに殺菌!

人体フレンドリーに殺菌!

2020年5月に入ってコロナウイルスの終息がやっと見え始めました。
今回の感染症の蔓延で、再び優秀な消毒液として脚光を浴びているのが、次亜塩素酸水溶液です。というのも次亜塩素酸水溶液は、高い殺菌力を有する上に、人体にも優しいという事で脚光を浴びています。しかし今までは限られた域内でのペット用品、ベビー用品、水道水、プールの殺菌等に使用されてきました。というのも次亜塩素酸は有機物や紫外線等に触れた瞬間に水に戻るという性質があり、人体には安全である反面、長期間安定して殺菌力を保つのが困難な消毒液でした。そこで次亜塩素酸液がより安定して殺菌力を保てるようにという事で「次亜塩素酸水溶液の製造又は調製方法及び装置」が発明されました。この発明のポイントは、次亜塩素酸水溶液の製造過程において、消毒力を低下させる要因となる金属イオンの除去率を大きく飛躍させた点です。この発明によって安全安心な消毒液が日本中の人の手に渡る日も近いでしょう。

■従来の課題

次亜塩素酸水溶液は、食品の殺菌洗浄、プールや医療用の消毒等を始め、幅広い分野に用いられている。

次亜塩素酸水溶液は優れた殺菌・消毒作用を有しているものの、長期安定性に劣る(時間経過および温度変化に伴い次亜塩素酸濃度が低下する)結果、製品を広範囲に流通させることが困難という課題があった。

■本発明の効果

本発明によれば、高い殺菌性を長期的に発揮することが可能な次亜塩素酸水溶液を提供することが可能であり、紙業及び繊維業等における漂白用、プール用、上下水道用、家庭用等の消毒・殺菌用など様々な用途に使用することができる。
特に本発明に係る次亜塩素酸水溶液は、衛生用(例えば、手洗い用)に適している。

■特許請求の範囲のポイント

本発明のポイントを下記に示す。

次亜塩素酸水溶液の製造又は調製方法であって、
・次亜塩素酸イオンを含む水溶液を供給する原液供給工程と、
・フィルターに負の電荷を付与する帯電工程と、
・電荷を付与された前記フィルターに前記水溶液を通過させるろ過工程を有し、
前記帯電工程として、圧電素子又はコイルによる片側昇圧工程を含むことを特徴とする、次亜塩素酸水溶液の製造又は調製方法

本発明の更なるポイントとして、原液供給工程に、水系の媒体(好ましくは脱イオン水や蒸留水等の純水)に次亜塩素酸塩を溶解する工程を含むことが挙げられる。

■全体構成

本発明に係る次亜塩素酸水溶液の製造装置(10)の一例を図1に示す。

【図1】本発明に係る次亜塩素酸水溶液の製造装置(10)の一例

・原液供給部(11):次亜塩素酸イオンを含む原液を供給する部分。原液を貯留するタンクと、ろ過部(12)へ原液を送出するポンプより構成される。
・ろ過部(12):原液供給部(11)から供給された次亜塩素酸イオンを含む原液が通過可能な流路を備えている。
・フィルター(12a):ろ過部内に設置され負に帯電しており、水溶液中の金属イオンを除去する。フィルター(12a)は帯電可能な材料であれば良く、無機材料でも有機材料でもよい。
・片側昇圧部(13):フィルター(12a)の一端と電気的に接続されており、片側昇圧(例えば、直流電源のマイナス側を圧電素子等により昇圧する)によって、フィルター(12a)に負の電荷を付与する。

また、本発明に係る次亜塩素酸水溶液の製造装置の別の形態を図2に示す。

【図2】本発明に係る次亜塩素酸水溶液の製造装置の別の形態

・図2の形態では、フィルター(12a)が細孔を有する円筒状となっている。当該円筒内部に水溶液が流下することにより、フィルタリングが行われる。
・ろ過部(12)は、次亜塩素酸水溶液が一定時間停留可能なように構成されている。

■細部

上述の装置を用いた次亜塩素酸水溶液の製造方法を以下に詳しく説明する。

<原液供給工程>

原液供給工程は、ろ過部まで原液を供給する工程である。
本発明に用いられる原液には、次亜塩素酸イオンを含む水溶液、具体的には、①次亜塩素酸塩の水溶液、または、②次亜塩素酸水溶液、が挙げられる。①の場合、次亜塩素酸塩が溶解した水溶液を原液供給部に供給してもよいし、原液供給部内にて、水系媒体(好ましくは脱イオン水や蒸留水等の純水)に次亜塩素酸塩を溶解させてもよい。次亜塩素酸塩の種類は特に限定されないが、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。②の場合、市販品の次亜塩素酸水溶液を原液とする、または、食塩水を電気分解して次亜塩素酸水溶液を製造する工程などを別途設け、原液供給手段としてもよい。

<帯電工程>

帯電工程は、片側昇圧部(13)により、フィルター(12a)を負に帯電させる工程である。
片側昇圧の条件としては、フィルター(12a)が負に帯電する程度であればよく、フィルター(12a)の材質及び構造や、原液の供給速度や原液の濃度等に合わせ適宜変更することが可能である。

<ろ過工程>

ろ過工程は、負に帯電したフィルター(12a)に前述の水溶液を通過させることで、原液中の金属イオンを除去する工程である。
一般的に、次亜塩素酸水溶液はその製法上、次亜塩素酸イオンの濃度を高めると、金属イオンの濃度も同時に高くなる。その結果、液中の金属イオンに基づいて塩化物が形成され、相対的に液中の有効塩素濃度が低くなり、次亜塩素酸の長期安定性が失われる。
本発明のろ過方法によれば、液中の金属イオンを除去することができるため、次亜塩素酸の長期安定化が可能となる。 加えて本発明では、片側昇圧によりフィルター(12a)を帯電させた状態でろ過を行うため、原液中の金属イオンの除去能力が従来の方法よりも非常に優れている。

■実施例

1.原料液の調製

常温常圧下にて、含有量が12000ppmとなるように次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を純水に溶解させて、原料液を調製した。

2.ろ過工程

次に、上述の原料液を下記条件にてろ過した。
・フィルター: 目が0.01μ以下
・昇圧条件: 直流電源/-昇圧状態
・送液速度: 1~4L/min
・電源装置として圧電素子を用いて、-5000V以上となるように設定した。

3.次亜塩素酸水溶液の性状

得られた次亜塩素酸水溶液の性状を以下に示す。
 HClO濃度:10000ppm以上
 Na濃度:1000ppm以下
 pH:3.5~4.0

4.長期安定性の評価

得られた次亜塩素酸水溶液の長期安定性を評価した。
次亜塩素酸水溶液を、常温環境下及び40℃ 環境下の2つの条件下で保存し、経時的な有効塩素濃度を測定することで、次亜塩素酸水溶液の長期安定性の評価を行った。合わせて、同条件にて、別途食塩を添加した際の次亜塩素酸水溶液の長期安定性の評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。

【表1】次亜塩素酸水溶液の長期安定性の評価結果(40℃保存)

【表2】次亜塩素酸水溶液の長期安定性の評価結果(常温保存)

更に過酷環境として、50℃及び光照射環境下での長期安定性を測定した。

【表3】次亜塩素酸水溶液の長期安定性の評価結果(50℃及び光照射環境下)

上記結果より、本発明の次亜塩素酸水溶液は、長期保存安定性に非常に優れ、また過酷な環境下においても、ある程度の有効塩素濃度を保つことが可能である。

■展望、結語

本特許に記載の発明によれば、これまで課題とされていた時間経過および温度変化に伴う次亜塩素酸濃度の低下が起こりにくく、水溶液の長期保存が可能となる。現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、さまざまな施設および医療現場にて次亜塩素酸水溶液の需要が増大しており、本発明が世の中に与える貢献は非常に大きいものと思われる。

■概要

出願国:日本 発明の名称:次亜塩素酸水溶液の製造又は調製方法及び装置
出願番号:特願2016-118383
特許番号:特許第6230079号
出願日:2016年6月14日
公開日:2017年12月21日
登録日:2017年10月27日
出願人:熊倉 淳一、監物 秀樹
経過情報:2017年に特許が登録され、現在も特許は維持されている
その他情報:本特許の出願国は日本のみである

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。