空中ボード移動が日常に


ホバーボード

空中ボード移動が日常に

空中ボード移動が日常に

映画の世界「バック・トュー・ザ・フューチャーPART2 」、「バック・トュー・ザ・ フューチャーPART3 」にも登場した空飛ぶスケートボード。
そのボードに颯爽と乗る姿は、格好良く、憧れそのものという方も多いのではないでしょうか。この空飛ぶスケートボードにあなたも乗る!そんな未来があったらいい!と発明されたのが、ホバーボードです。ポイントはボードについている4つのエンジンです。このエンジンが電流と磁界を利用して、ボードを浮上させます。また映画の描写のように、ボードの角度を変える事で、右や左にと進む方向を自由自在にコントロールできます。現在は伝導性円盤の上、例えばアミューズメントパークのような限られた場面でしか使用できません。しかし自転車のような、日常の交通手段となる日も近いかもしれません。

■従来の課題

ホバーボードとは、地上を浮遊するボードのことであり、車輪のないスケートボードに似ている。

映画「バック・トュー・ザ・フューチャーPART2」及び「バック・トュー・ザ・フューチャーPART3」の中では、特殊効果によってこのホバーボードが描写されていた。これまでにいくつかのグループよりホバーボードを作成したとの報告がされてきたが、いずれも手の込んだ嘘であって、ホバーボードを現実に創り出すことは不可能であった。

■本発明の効果

本発明のホバーボードは、4つのホバーエンジンを有しており、それぞれのエンジンにはモーターがついている。モーターは、磁石のアレイを回転させて渦電流を生じさせ、その電流によってホバーエンジン内に磁界が発生する。渦電流と磁界の相互作用によって揚力または推進力が発生する結果、ホバーボードを空中に浮遊させることができる。

ホバーボードは、ライダーが足場を通じて傾斜をかけることで、エンジンを通じて並進力を与えることができる。例えば、ホバーボードの右側を下げ、左側を上げた場合、左側のホバーエンジンと基盤との距離が大きくなることに起因し、左側のホバーエンジンから出される並進力は減少し、右側の並進力は増大する。その結果、ホバーボードを右側へ動かす正味の並進力が増大する。

本発明のホバーボードは、支持体(ボード部分)が部分的にくぼみ得る構造を有している。この構造によって、ホバーエンジンを回転させるためのスペースを効率的に確保することができ、その結果、ホバーボードの厚みを減らすことができる。

■本発明のポイント

以下より構成されるホバーボード

①下記より構成される2つ以上のホバーエンジン
– 磁石を回転させるためのモーター、
– モーターの回転速度を制御する電子速度制御器、
– ホバーに揚力または推進力を発生させるための磁界を作り出すSTARM(固定子電機子)、
– モーター及びSTARMの少なくとも上部を囲むシュラウド
②装置の電源
③ライダー用の足場

■全体構成

本特許発明のホバーボードを図1に示す。

【図1】ホバーボード(12)に乗っている人(10)の一例

・走路(14):銅などの導電性材料より形成される。銅の場合には、8分の1インチの銅シート3枚が積層される。
・ホバーエンジン(16):4つのエンジンを含む。走路(14)内の導電性材料と相互作用して過電流を形成する。
・基板の一部分(18):基盤下にあるモーターによって回転するように設計されている。これによりホバーボードが浮かび上がるための揚力が発生する。

■細部

バッテリ駆動型ホバーボードの側面図は以下の通りである。

【図2】バッテリ駆動型ホバーボードの側面図

・モーター電子速度制御器(306a~d);線材束308a~dを介して、4つのモーターのそれぞれに連結されている。
・支持構造体(302):部分的にくぼみ得る構造を有している。ホバーエンジンが傾斜された際、このくぼみにヒンジ(372)の一部が収納され、ホバーエンジンが回転するためのスペースが確保される。その結果、ボード全体としての厚みを小さくすることができる。
・エンジンシュラウド318:STARMおよびモーターを覆うための部材

バッテリ駆動型ホバーボードの上面図を以下に示す。

【図3】バッテリ駆動型ホバーボードの上面図

ホバーエンジンは、中央支持構造体(302)の下に設置される。ホバーエンジンのシュラウド(318)は、中央支持構造体(302)の端部をわずかに越えて設置される。シュラウド(318)は、人の体重を支持するのに十分な強度を有している。

STARM(固定子電機子)の構造を以下に示す。STARMはホバーに揚力または推進力を発生させるための磁界を発生させる装置である。

【図4】STARMの斜視図

STARM(400):直径が10インチ程度である。STARMは、隆起した外輪(405)を有していて、STARM(400)の底から外輪の上部までの距離は約1.13インチである。この高さが、1インチ角の磁石を収容することを可能にする。

STARMの側面図を以下に示す。

【図5】埋込み型モーター付きSTARMの側面図

STARM(400)は、いくつかの層(それぞれ上から下へ402、408、410、412、404、及び414)より形成されている。層402及び414は、外輪内の磁石の上部分及び底部分を覆うカバーの役割を担っている。代替的な実施形態においては、層402及び408のうちの1つまたは両方が除かれている。上層及び下層は、アルミニウムなどの材料から形成されていてもよく、上層402は、ミューメタル、鉄、またはニッケルなどの磁気特性を有する材料であってもよい。

■実施例

磁石の回転速度と、ホバーボードに作用する揚力及び抗力の関係を下記グラフに示す。
グラフよりボードにかかる推進力は、磁石の回転速度が増加するにつれて増加し、ピークに達し、次いで速度と共に減少し始めることが分かる。一方で揚力は磁石の回転速度と共に増加する。

【図6】磁石の回転速度と揚力及び抗力の関係

導電性基盤の表面からホバーエンジンまでの距離と、ホバーボードに作用する揚力及び抗力の関係を下記グラフに示す。
グラフよりホバーボードにかかる揚力及び抗力は、基板の表面からのホバーエンジンの距離が増大するにつれて、指数関数的に減少することが分かる。

【図7】導電性基盤の表面からホバーエンジンまでの距離とホバーボードに作用する揚力及び抗力の関係

■展望、結語

本特許に記載の発明によって、これまで映画の中の世界として捉えられていた技術が現実のものになっている。本特許に記載されている発明は、伝導性基盤の上でのみ浮遊できるホバーボートであるため利用できる場所はまだ限られている(例えばアミューズメントパークなど)が、技術の進展によって、例えば自転車のような移動手段に置き換わる未来もそう遠くないかもしれない。

■概要

出願国:米国 発明の名称:Hoverboard which generates magnetic lift to carry a person
出願番号:14/639,045
出願日:2015年3月4日
公開日:2015年6月25日
出願人 :Arx Pax, LLC
経過情報:2015年に特許が登録され、現在も特許は維持されている。
その他情報:PCT出願されている。日米欧などの主要国に優先権主張を伴う特許出願が行われている。
IPC:H02K 7/09

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。


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