新グローブで落球エラー知らず!?


新グローブで落球エラー知らず!?

おすすめグローブ特許弁理士

アシックスの吸い付くグローブ

大事な場面で飛んできたフライボールが、グラブからぽろり…。
そんな痛恨の落球エラーで、トラウマを抱えてしまったプレイヤーは、世の中にどれほどいるのでしょうか。しかし、もう大丈夫。落球エラーにおびえる時代は終わりを告げようとしています。今回ご紹介するのは、アシックスが手掛けている新型ウェブ(グラブの親指と人差し指の間の網状部分)とそのウェブを搭載したグラブ。ボールをキャッチしたときに、ウェブの一部が内側に向かって傾斜する、つまり、ボールを逃がさないための“かえし”のようになるグラブで、落球の可能性を軽減するという機能性を持っています。ボールがグラブに吸い付くような感覚を味わえるというこのグラブ、ぜひ試してみたいですよね。

■発明のポイント

本発明は野球用の捕球具(グラブ)のウェブ(グラブの親指と人差し指の間にある網状の部位)、及びそのウェブを備えたグラブに関するものです。

本発明のグラブは、主にグラブの親指袋5と人差し指袋6の間に設けられたウェブ10と、ウェブ10の上端に設けられた上側横バー1とで構成され、上側横バー1の上側がグラブの前面(球を受ける面)寄りに、上側横バーの下側がグラブの背面寄りに位置するようウェブ10に取り付けることで、上側横バーを前下がりに傾斜させる点がポイントになります。
通常のグラブで強い打球を捕球する場合、ボールを一度グラブ内に収めてもボールの勢いが衰えず、グラブから転がり出てしまうことがあります。他にも、上側横バーで直接打球を受けた場合、上側横バーがボールの勢いに負けてグラブ背面側に反ってしまうとボールを捕球することができません。

しかし、本発明のグラブなら、上側横バーが前下がりに傾斜しているため、一度グラブに収まったボールがグラブから転がり出てしまうことがなく、また、強い打球を上側横バーで受けても上側横バーが背面側に反ってしまうことがないため、通常のグラブよりも落球する可能性を減らすことができます。

【図1】

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以下に本発明の詳細を説明します。

本発明のグラブは、上側横バー1の両端部に一対の耳状部材2が飛び出すように設けられています。この耳状部材2が親指袋5の先端と人差し指袋6の先端にそれぞれ取り付けられることになります。
耳状部材2は上側横バー1の上側から突出する上側パーツ21と、上側横バー1の下側から突出する下側パーツ22とで構成され、上側パーツ21は親指袋5と人差し指袋6の前面側に、下側パーツ22は親指袋5と人差し指袋6の背面側に取り付けられます。これにより、上側横バー1を前下がりに傾斜させて取り付けることができます。図2(a)はグラブを背面から見た図で、図2(b)は図2(a)における耳上部財2を模式的に示した図、図2(c)は図2(b)を表面から見た図です。なお、図2(b)、(c)のハッチングで表現された部分は、上側横バー1がグラブに取り付けられた状態で親指袋5、または人差し指袋6によって隠れる部分を示しています。
また、図2(b)を見てわかるとおり、上側横バー1の下端の長さL2は、上側横バー1の上端の長さL1より長くなっています。これにより、上側横バー1の下端が背面側に膨らむように変位するため、より上側横バー1を傾斜させやすくなります。

【図2】

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グラブは更に、親指袋5の中央部と人差し指袋6の中央部をつなぐ下側横バー3と、上側横バー1と下側横バー3とを繋ぐ網状の紐でできた繋ぎ部材4とを有します。
従来のグラブは、繋ぎ部材を上側横バーの背面側に縫い付けて固定し、下側横バーと繋いでいました。そのため、上側横バーの下端が繋ぎ部材によって前面側に押し付けられ、上側横バーが傾斜できませんでした。

しかし、本発明のグラブは、繋ぎ部材4が上側横バー1の下端に空けられた貫通孔11を通ることで下側横バー3と繋ぐため、従来のグラブに比べて繋ぎ部材4が上側横バーを前面側に押し付ける力が弱くなり、上側横バー1が更に傾斜しやすくなります。

【図5(a)】

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また、本発明の上側横バー1は、図5(a)をみてもわかるとおり、革紐7によって親指袋5と人差し指袋6の先端部に取り付けられています。図5(a)と、図5(a)を前面から見た図5(b)を使って更に詳細を説明します。

革紐7は親指袋5先端の背面側から出て、上側横バー1の背面側から挿入されます。その後、上側横バー1の上部に巻きつけられます。革紐7の反対側も同じく、人差し指袋6先端の背面側から出て、上側横バー1の背面側から挿入されます。なお、革紐7の両端が上側横バー1の背面側から挿入できるよう、上側横バー1の中央部で革紐7の巻きつける方向を反転させています。
このような革紐7の通し方で上側横バー1を取り付けることで、上側横バー1の上端側には前面側に押し出されるような力が発生するため、より上側横バー1を傾斜させやすくなります。

【図5(b)】

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以上にご説明しましたとおり、本発明のグラブは強い打球であっても確実に捕球できるようにするためのアイデアで詰まっており、使った人にボールが吸い付くような感覚を与えてくれます。

■概要

発明の名称:捕球具用ウェブ及び捕球具
出願番号:特願2018-85270(P2018-85270)
公開番号:特開2019-187910(P2019-187610A)
出願日:平成30年4月26日(2018.4.26)
公開日:令和1年10月31日(2019.10.31)
出願人:株式会社アシックス
経過情報:現時点では審査請求はされておりません。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。


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