憧れの神シュートが現実に!?

アディダス最強スピンシューズ
サッカー好きなら、誰もが一度は憧れるスタープレイヤーの神シュート。
その夢を叶えてくれる“魔法のスパイク”を、あのアディダスが開発しようとしているのをご存知でしょうか? どんなスパイクかといえば、なんとプレイヤーの動きを察知して、スパイク表面の構造が変形するというシロモノ。つまり、たとえば選手がシュートを打とうとすると、アッパー部分が波状やフィン状に変形してボールをとらえ、摩擦力によって力強いシュートを生みだしたり、また反対に、ドリブルしようとすると、表面が滑らかになってボール・コントロールがしやすくなったりするという恐るべき機能を搭載。このスパイクがあれば、キャプテン翼のドライブシュートも夢じゃないかもしれませんよ!?
■発明のポイント
サッカー、アメリカンフットボール、ラグビーなどの球技において、競技者の足は非常に様々な状況でボールと接触する。
例えばサッカーの場合、「ゴールを狙ってシュートする」、「他の競技者にパスする」、「ドリブルでボールをキープする」などの状況がある。
そうした状況すべてにおいて、競技者はシューズに対して様々な要求をする。例えばシュートするときには、高い摩擦および最大限のエネルギーがボールへ伝わることを望む。一方、ドリブルでボールをキープするときには、滑らかなボールタッチを望む。
従来の球技用シューズは、そうした様々な要求の間で折り合いをつけたものであり、試合状況の変化によってはシューズが最適に機能しないことがしばしばあった。例えば「ボールにスピンをかけたい」という要求に応えるために表面の構造に変形を加えたシューズは、滑らかなボールタッチには適さないものであった。
今回紹介する特許発明は、試合の状況に応じて最適な表面構造をとることができるシューズに関するものである。従来技術のシューズとは異なり、本発明のシューズは競技者の要求に折り合いをつけたものではない。
例えば、競技者がまさに難しいロングシュートを行っていることをシューズが検知した場合、シューズの表面を、滑らかな表面から、裂けたような波形のまたはフィン状の構造に変えることができる。反対に、競技者がドリブルを行っていることを検知した場合、シューズの表面を、滑らかな構造に変えることができる。
【図1 本発明のシューズの斜視図および特定の部分拡大図】

本発明は、様々な試合状況において最適な表面特性を有する球技用シューズに関する発明であって、主に「アッパー(101)」、「アクチュエータ(104)」、「センサ(105)」および「処理ユニット(106)」から構成されている。
以下、上図の各部分の名称と主な役割を解説する。
番号 | 名称 | 説明 |
---|---|---|
100 | シューズ | 球技用のシューズ。サッカー、ラグビーなどの球技に使用することができる |
101 | アッパー | 足を収めるソール以外の部分。革、合成皮革などから製造することができる |
102 | 外面 | アッパーの外面 |
103 | ソール | 靴底。本発明のセンサ、アクチュエータ、処理ユニットはソールに組み込まれる |
104 | アクチュエータ | センサからの信号を検知し、シューズの表面特性(摩擦力など)を変化させる |
105 | センサ | 競技者のシューズの動きを感知するセンサ |
106 | 処理ユニット | センサの信号を処理し、アクチュエータに指令を送るユニット |
107 | バッテリ | 必要な電力をアクチュエータ、センサおよび処理ユニットに供給するバッテリ |
200 | 機構 | アッパー外面の表面特性を変える機構 |
201 | フィン | アクチュエータによって起こされたり降ろされたりすることで、シューズ外面の表面特性が変化する |
202 | 摺動層 | フィーチャと連動してフィンを起こしたり降ろしたりする |
203 | フィーチャ | 摺動層と連動してフィンを起こしたり降ろしたりする |
本発明のシューズは、アクチュエータ104、センサ105、および処理ユニット106が連動することで、競技者のシューズの動きに応じてアッパーの外面部分102の表面特性(表面構造、摩擦、表面積)を変えることを可能とする。
例えば、競技者がボールをコントロールしていることを検知した場合、アクチュエータが、アッパーの外面部分の表面構造を変え、ボールの最適なコントロールを可能とする。
表面構造を変える方法としては、例えば、①アクチュエータに複数のフィンが接続されていて、当該フィンが上げ下げされることによって表面構造を変える方法、または②アクチュエータが空気圧弁になっていて、ここに加圧空気が入ることでアッパーの下に配置されたパーツが膨張し、表面構造を変える方法などが挙げられる。
本発明において、競技者が難しいシュートを行っていることを検知した場合、アクチュエータがアッパーの外面の表面摩擦を高め、競技者がたくさんのスピンをかけてボールをシュートできることを可能とする。
加えて本発明では、複数の表面特性(表面構造、摩擦、表面積)を一度に変えることができるところが大きなメリットである。
アクチュエータは、形状記憶合金または電気モータにより選ばれる。
センサは、加速度計、ジャイロスコープまたは磁界センサより選ばれる。
処理ユニットは、
・センサからセンサデータの時系列値を読み出すステップ
・時系列値を前処理するステップ
・時系列値を複数のウィンドウにセグメント化するステップ
・複数のウィンドウのそれぞれにおいてセンサデータから複数の特徴を抽出するステップ
・複数のウィンドウにおいてセンサデータから抽出された複数の特徴に基づいて、複数のウィンドウに関連付けられる事象クラスを推定するステップが含まれる。
また、本発明におけるシューズの表面特性を変える部分は以下の通りである。
【図2 本発明の別の形態のアッパーの外面の一部の斜視図】

101:アッパー
102:外面
1101:シューズの表面特性を変える部分
シューズの表面特性を変える部分1101は、足の甲のつま先に近いシューズの外側面から、足弓に近い内側面へ延びている。この配置は、サッカー、アメリカンフットボールおよびラグビーなどの球技において最も重要であるインステップのフルキックおよびハーフキックするのに望ましい配置である。
従来の球技用シューズによれば、“ある特定の要求(例えばボールをスピンさせたい)”に応えるためにシューズの表面特性を変えることはできるが、“別の要求(例えばボールをコントロールしたい)”にも同時に応えたいとなると、シューズの構造が最適ではなくなるといった課題が生じていた。
一方本発明では、「様々な試合状況」において、最適な表面特性を有する球技用シューズを提供するという点で、従来技術より優れている。
■権利範囲
日本で登録された特許のクレーム範囲(概略)は以下の通り。
【請求項1】
球技用シューズであって、
・外面を有するアッパー
・アッパーの前記外面の一部の少なくとも1つの表面特性を変えるように構成されたアクチュエータ
・シューズの動きに感応するように構成されたセンサ
・アクチュエータおよび前記センサに接続され、前記センサから読み出されたセンサデータを処理し、シューズの表面特性を変えるように構成された処理ユニット
を含む球技用シューズ。
上記のような構成を持つ球技用シューズは本発明の権利範囲に含まれる可能性があるため、競合他社は注意する必要がある。
■概要
発明の名称:球技用シューズ
出願番号:特願2016-77842
登録番号:特許第6364438
出願日:2016年4月8日
登録日:2018年7月6日
出願人 :アディダス アーゲー
経過情報:本特許は2018年7月6日に国内で特許登録され、現在も登録は維持されています。特許存続期間の満了日は2036年4月8日となっています。
<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。