社長自ら出願!バルミューダ最初の製品

いまやハイブランドのデザイン家電メーカーとして有名なバルミューダですが、その最初の製品って何だったかご存知でしょうか。実は、2003年に元社長の寺尾氏がバルミューダ株式会社の前身となるベンチャー、有限会社バルミューダデザインを創業するにあたって、自ら町工場で削り出したノートパソコン用の載置台(商品名X-Base)がスタートだったのです。

この製品がApple向け周辺機器としてデザイン的に優れていると雑誌等で紹介されたことでバルミューダの認知が高まったのでした。

今回紹介する発明は、このノートパソコン載置台を開発し、寺尾社長自ら特許出願をしたものです(公開番号:特開2004-237047)。本発明は特許出願がされたのみで、審査請求はされていないため、最終処分としては「みなし取下げ」となっているものですが、バルミューダの歴史の原点の記録として価値のある特許出願です。

発明の内容としては、アルミニウム等の熱伝導率の高い素材を利用して、外部電源によるファンの駆動なしで載置したノートパソコンを冷却するものです。現在でもノートパソコンの冷却台は広く普及していますが、冷却ファンなどによる強制冷却方式をとっているものが大半です。本発明ではヒートシンク構造を採用した自然冷却を用いているため、余計な電力を使わず、エコな製品ということもできそうです。

上述したとおり、本発明は特許の取得までには至っていませんが、特許庁データベースに半永久的に保存される出願公開公報から、バルミューダの原点を探ってみたいと思います。

ノートパソコンの冷却台は古くから用いられてきた周辺機器の一つですが、電気駆動のファンの有無によって大きく2つに分けられます。このうちファンを用いない冷却台は、多くの場合、アルミニウムの熱伝導率の高さを利用した、厚めの板状の物でした。

このようなタイプの冷却台は、台の底部が机面に接触しているため、ノートパソコンから伝わった熱を逃がすことができず、冷却台自体の温度が一定以上まで上昇すると、それ以降の冷却効果が著しく低下していました。

また、構造的に可動部分を持たない、板状の物ですので、ノートパソコンを乗せる部分の角度を調節することができませんでした。

本発明の特許請求の範囲(請求項1)を分節すると以下のようになります。

  • ノートパソコンを載置する台部の側面に脚部を設け、
  • 脚部によって台部を机面から浮かせ、
  • 更に台の裏面にアルミ押し出し材によるヒートシンクを取り付けた事を特徴とする
  • ノートパソコン用載置台。

本発明では、上述の技術背景に鑑み、ノートパソコンを載置する台部の側面に脚部を設け、脚部によって台部を机面から浮かせ、更に台の裏面にアルミ押し出し材によるヒートシンクを取り付けることとしました。

更に脚部の台部との接続箇所に軸と軸を中心とする円弧状の穴を利用する回転機構を設け、台部分の傾斜角度の調節を可能としました。

特許請求の範囲の記載は、非常に簡潔、シンプルなものといえます。

本発明の実施形態を具体的な図にすると、以下のような製品図で表すことができます。本願明細書には以下の5つの図が掲載されていますが、どれも大変わかりやすく、明確に本発明を理解することができます。

図面を基に本発明の説明をすると、台部1は例えばアルマイト処理をした板状のアルミニウムで構成されています。この台部1を同じくアルミニウム製の脚部2で支えながら、机面7から浮かせ、台部1の裏面にアルミニウム押し出し材によるヒートシンク6が取り付けられています。このような構成により、台部が机面と接触せず、さらにヒートシンクが取り付けてあるため、冷却効果が長時間持続します。

もちろん、台部の表面はアルマイト処理に限らず、ショットブラスト、メッキ、またはイリダイト、アロジン等の化成処理で加工したもの、または表面処理をしていないものでも代替できます。また、素材についてもアルミニウムに限らず、アルミニウム合金、銅、カーボン等、その他の熱伝導率の優れた素材を用いることができます。

本発明は、バルミューダ社社長みずから特許出願をしたものですが、出願後、審査請求はされず、みなし取下げの最終処分となっています。よって、特許化はされていません。

しかしながら、具体的な製品への落とし込み(製品化)はしっかりと行われており、バルミューダ社最初の製品である「X-Base」という商品名で2003年に発表されています。

実際の製品は、公開公報よりもさらにデザイン的に洗練されたものになっていますが、基本的な技術思想はそのままです。デザイン的に、Apple社の製品と相性が良さそうで、いま再販してもかなり売れそうに思えます。

X-Base(バルミューダHPより)

今回は、具体的な製品化がされているものの、特許については出願のみ行ったというケースについて紹介しました。

特許出願公開公報は、特許化(権利化)されればその内容は権利書としての役割を持ちますが、一方で権利化されない技術についても、その公報は貴重な技術文献としての価値を持っています。

本発明のように、権利化はされなかったものの、その後多くのヒット製品を生み出すこととなるバルミューダの、いわば源流となる製品の技術内容を、20年近くが経過した後でも我々が公開公報で知ることができるのは、技術情報を蓄積し続ける特許制度のおかげといえるでしょう。

発明の名称

ノートパソコン用載置台

公開番号

特開2004-237047(P2004-237047A)

出願日

平成15年2月7日(2003.2.7)

公開日

平成16年8月26日(2004.8.26)

出願人

寺尾 玄

発明者

仁泉 大輔

寺尾 玄

A47B 97/00
G06F 1/16

経過情報

出願後、未審査請求のため、みなし取下げとなっています。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。