粒感食感を実現!バルミューダの炊飯器

外国人観光客が日本に来て、電器量販店で購入していく不動の人気商品の一つが炊飯器(電子ジャー)ですよね。日本の炊飯器の人気は世界的なものというのは誰しも疑いのないところでしょう。それもあって、日本国内の家庭では100%近い普及率であるにも関わらず、炊飯器は日々研究開発が重ねられている製品です。

このような背景から、近年では高性能な電気炊飯器が様々なメーカーから発売されています。その中でも、従来技術として、炊きムラの防止を目的として、米を釜の熱だけではなく、水蒸気の熱によっても加熱するものが開発されているのですが、この技術はいわば米を煮ているような状態となるため、煮崩れさせずに炊いて、それによって粒感のある食感を実現することが困難でした。

今回紹介する発明は、上記事情を解決することを目的として開発された炊飯器で、粒感のある食感で、濃厚な味のご飯を炊き上げることができるものです(特許第6986759号)。

発明の内容としては、上述した「米の煮崩れ」の問題を、「米のアルファ化」が原因であると突き止め、炊飯中に米のアルファ化を抑えるように水蒸気の流れをコンピュータ制御することで、課題の解決を図ることができました。

我々の生活に、おいしいお米は主食でもあり、欠かせないものです。主食を調理するための身近な炊飯器にも、最新技術が適用されて日々進歩がされていることに感謝しなければいけませんね。

高性能の電気炊飯器がいろいろなメーカーから販売されています。メーカーのホームページを見ると、「炎舞炊き」「おどり炊き」「炎匠焚き」などいろいろな言葉が使われていますね。各社いかに「かまど炊き」と同じようなおいしいご飯を炊くかを追求しています。

多くの炊飯器は米と水をいれた内釜をヒーターで直接過熱して炊飯します。ヒータの種類とヒーターの配置やそのヒーターの制御によって各社特色のある炊飯器を開発しています。

直接内釜を加熱する方法は、「おねば」(デンプンを主成分とする粘液質の液体のこと)を出すような炊飯です。おねばは食べた瞬間甘みとして感じられるものの、この炊飯方法では、おねばを出す過程で米が傷ついて味の成分も漏れ出し、炊きあがったご飯が粒感のある食感にはならず、濃厚な味にもなりません。

また、直接内釜を加熱する方法では、内釜に近い米は釜からの熱によって温度が上がり水を吸いやすくなるものの、内釜の中心付近の米は温度が上がりにくいので水を吸う量が釜近くの米と差ができ、焚きムラにつながります。

一方、粒感のある食感や濃厚な味を得る方法として、米を釜の熱だけでなく水蒸気の熱によって加熱する方法が提案され、この方法が有効だと考えられています。

しかし、この方法(特公昭32-5987号公報)では加熱の制御がON・OFFのみで、細かい制御ができず粒感のある食感を出せませんでした。

そこで、粒感のある食感のご飯が炊ける炊飯器を提供することを考えました。

この炊飯器は水蒸気を使用します。加熱水を入れる外釜の内側に、米と水を入れる内釜を外釜との間に隙間ができるように収納し、外釜を加熱するためのヒーターとこのヒーターを制御する制御部を備えています。

この炊飯器の制御部が加熱水が沸騰しない所定温度になるまでヒーターで加熱します。

内釜外面における水蒸気の凝縮熱により米を加熱するので米に水を吸わせながらじっくりムラを抑制しつつ浸漬することができます。

続いて、制御部が加熱水が沸騰するまでヒーターで加熱します。加熱水が気化した水蒸気を内釜の内部に流入させて米を加熱するので、米は内釜の側面、底面からと内部に流入した水蒸気により上方から包み込まれるように加熱されます。この結果、内釜の中でどの位置にある米もムラなく余力分を吸水して煮崩れせずに炊かれるので、米の形が保たれたままの、粒感のある食感で濃厚な味のご飯を炊き上げることができるのです。

構造を図で詳しく説明します。

図1はこの炊飯器の蓋が開いた状態を示しています。

【図1】

外釜4(アルミニウム製)の淵には、蒸気の通り道になる凹部28と支持部29を有するスペーサ6がはまってます。このスペーサ6によって外釜と内釜の間に空間ができます。

内釜5(ステンレス製)は、淵が外側にはねる羽根24が形成されていて、米と水を入れて外釜にセットします。内釜5の外面が当接部27に当たってなおかつ、羽根24が支持部29の上に乗っかり外釜の中で安定します。

図2は内釜に米と水が入った炊飯する前の炊飯器の断面図です。

【図2】

米Rと水Wが入った内釜5、加熱水wが入った外釜4、外釜4の下に釜ヒータ8、蓋体3に蓋ヒータ11、アッパー部材25とローワー部材26から成るスペーサ6により、外釜4と内釜5の間に空間ができます。

蓋体3のなかにマイコン12が、本体2の中に電源基板13があります。

図3は炊飯器の制御部による処理を示す流れ図、図4は炊飯器の外釜の温度変化を示す説明図です。

【図3】

【図4】

この図で、例えば所定温度T1を60℃以下に設定しておけば、米Rはアルファ化せずに温度上昇により水の吸収が進みます。水の吸収は30%程度まででそれ以上は吸水しません。ここまでが浸漬工程となります。

次に釜ヒータ8で100℃を超える所定温度T2に維持し、外釜4の中の加熱水wが蒸発してなくなるまで加熱を続けます。ここまでが沸騰工程です。

そして、加熱水wがなくなると釜ヒータ8をOFFにし、そのまま所定時間t2が経過するまで蒸らし工程に入ります。

全部の工程が終わると、粒感のある食感で濃厚な味のご飯が炊きあがります。

この炊飯器は、加熱水を入れる外釜の内側に、米と水を入れる内釜を外釜との間に隙間ができるように収納する二重構造で、ヒーターにより外釜の加熱水を加熱し、その蒸気水で内釜と中の米を加熱する炊飯方法を採用しています。

ただ単に加熱するのではなく、加熱の仕方を制御することで、100℃以下で加熱することで米が水を吸収するのを促進し、100℃以上に加熱することで米をアルファ化させ、加熱水がなくなったタイミングでヒーターを切り、蒸らす工程に入ります。

こうすることで粒感のある食感で濃厚な味のご飯炊くことができます。

特許権者はバルミューダ株式会社です。ちょっと聞きなれない会社名ですが、れっきとした日本の家電メーカーです。

人にやさしい扇風機として販売された「GreenFan」はご存じの方がいらっしゃるかもしれません。当時話題になり扇風機としては高額にもかかわらずヒットした製品です。この扇風機を作った会社がバルミューダ株式会社です。

バルミューダ株式会社は全く新しいアイデアによって、革新的な製品を世に送り出している会社です。

その会社が作ったのが「BALMUDA The Gohan」という炊飯器です。この特許を使用した製品で販売されています。

サイトはこちらです。是非見てください。

サイトに飛ぶと出てきますよ。たまごかけごはん、ハムエッグ、そして焼肉、おいそうなごはんとともに写真が現れます。

「エネルギーの使い方から見直した蒸気炊飯器」とあります。「テクノロジー」の箇所には炊飯器のカットモデルがイラストであらわされています。詳しく読むと特許の内容そのものが簡潔に書かれています。

この炊飯器は保温機能を省いており炊飯に特化しています。こういった製品作りもあるんですね。

発明の名称

炊飯器

出願番号

特願2018-561397(P2018-561397)

特許番号

特許第6986759号(P6986759)

出願日

平成30年1月11日(2018.1.11)

公開日

平成30年7月19日(2018.7.19)

登録日

令和3年12月2日(2021.12.2)

審査請求日

令和2年12月10日(2020.12.10)

出願人

バルミューダ株式会社

発明者

寺尾 玄
唐澤 明人
石津 征一
茂木 文明

国際特許分類

A47J 27/00 (2006.01)
A47J 27/04 (2006.01)
A47J 36/16 (2006.01)

経過情報

国際出願し、3年弱の間をおいて審査請求し、2回の補正手続きを行い、拒絶理由が通知されることなく、特許査定となりました。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。