鹿児島県が特許取得!フリーズドライ緑茶で冷水でも素早く溶けるお茶の新時代へ


鹿児島県大隅加工技術研究センター(鹿屋市)が、緑茶飲料をフリーズドライにする独自の製法で特許を取得しました。この技術は、熱を加えずに食品を乾燥させる「フリーズドライ」手法を活用することで、ビタミンや香りなどお茶本来の特性を損なうことなく保存することができます。 また、この製法によるフリーズドライ緑茶は、冷たい水にも素早く溶け、湯を注ぐと急須で丁寧に淹れたような味わいが楽しめる点が特徴です。

開発の背景と2段階凍結法への挑戦

鹿児島県の大隅加工技術研究センターではこれまで、キンカンやウンシュウミカン、イチゴなどの果物をフリーズドライ加工して実用化に成功してきました。この成功を背景に、緑茶でも同様の加工が可能かどうかの研究が進められました。しかし、初期の取り組みでは濃縮が十分に行えず、味や香りに課題が残りました。

2020年度に本格的に研究がスタートすると、「2段階凍結」という新しい手法が開発されました。この方法では、緑茶と水を混合して一度凍結した後、解凍して浸出液を真空凍結して乾燥させる工程を採用。これにより、濃縮が可能となり、緑茶の豊かな風味と色合いを維持したままフリーズドライ化に成功しました。

製品化と市場での反応

フリーズドライ緑茶の技術は2021年6月に「実用化情報」として発表され、2022年1月には改良を経て民間利用が始まりました。そして2023年5月に特許を出願し、2025年1月15日付けで正式に特許登録されました。

実際の商品としては、鹿児島市の「お茶の美老園」が2024年1月に「知覧茶CUBE」(10粒756円)を発売。この商品は、無添加で茶葉本来のうまみや渋みを活かしつつ、粉末茶では実現できない濁りのないクリアな味わいと香りの良さが特徴です。発売後すぐに好評を博し、売り切れとなるなど消費者からの評価も高いです。

フリーズドライ緑茶の魅力と活用シーン

一般的なインスタント緑茶では成形化成分などの添加物が加えられることがありますが、フリーズドライ製法では無添加を実現。これにより、急須で淹れたお茶と同等の香りや味わい、色鮮やかさが楽しめます。

また、この技術は単に家庭でのお茶としてだけでなく、ドライブやキャンプ、防災用備蓄といった多様な場面での活用が見込まれています。特にアウトドアシーンや非常時の備えとして、手軽に本格的な緑茶を楽しむことができる点が大きな魅力です。

開発者の声と今後の展望

開発に携わった大隅加工技術研究センターの三浦伸之研究専門員は、「濃さや色合い、うまみと渋みの調和を再現するのに苦労しましたが、今回の技術で鮮やかでおいしい緑茶を実現しました。この技術が広がり、多くの方に楽しんでいただけることを願っています」と語ります。

今後は、さらに多くの食品や飲料への応用を進め、鹿児島県産品の価値向上と地域経済の活性化に貢献していく予定です。フリーズドライ緑茶は、緑茶文化を世界に広げる新しい形としても注目されるでしょう。


Latest Posts 新着記事

AIと“卓を囲む”時代へ──ソフトバンクがTRPGプレイヤー代替AI技術を特許出願

TRPGとAI、交わる未来 「テーブルトークRPG(TRPG)」と聞いて、ピンとくる人はどれほどいるだろうか。キャラクターを演じ、プレイヤー同士で物語を紡ぎ、サイコロ(ダイス)の目で運命が左右される──そんなアナログゲームの一種だ。テーブルトークの名の通り、物理的に卓(テーブル)を囲むことが本質とされてきた。 しかし現代は、仲間が集まらない。忙しさ、物理的距離、世代の壁。面白さは知っていても、続け...

“知財インフラ国家”を牽引するサムスンの知財戦略

韓国の特許庁(KIPO:Korean Intellectual Property Office)が最新の統計を公表し、2024年度の国内企業別特許登録数においてサムスン電子が1位となったことが明らかになった。登録件数は年間約1万5,000件に達し、2位以下を大きく引き離す圧倒的な数字である。これは単なる技術開発の成果というだけでなく、韓国全体の産業構造の変化や、知財政策の巧拙、さらにはグローバル競...

3Dプリンティング覇権争い──航空・半導体・医療で進む“実用化の壁”突破

航空機エンジンの心臓をプリントするGEの覚悟 3Dプリンティング(積層造形)の用途が玩具や試作品づくりといった小規模領域に留まっていたのは過去の話だ。いま、この技術が次なる産業革命の主役として存在感を放っている。とくに目立つのが、航空、半導体、医療という「高付加価値」「高信頼性」「高精度」が求められる産業における導入の加速だ。なかでもゼネラル・エレクトリック(GE)は、航空エンジン分野における3D...

BYD、自動洗浄EVでフリート管理を最適化――特許出願が示す未来戦略

2025年、中国のEV大手・BYD(比亜迪)は、「車両の自動洗浄」に関する特許を中国国家知識産権局に出願した。この特許は、車両に自動洗浄ユニットを組み込み、特定条件下で自律的に洗車作業を行うというものであり、従来の洗車文化を根底から変える可能性を秘めている。 EVならではの「清掃ニーズ」の進化 この特許が注目される背景には、EVという次世代自動車に特有の利用シーンがある。内燃機関車に比べ、EVは都...

チョコと生チョコのいいとこどり 明治が特許製法で「新領域」のお菓子発売

「チョコでもない、生チョコでもない。けれど、いいとこどり」。 老舗製菓メーカー・株式会社明治が2025年春、そんなキャッチコピーとともに市場投入したのが、“新領域チョコレート”こと『Melty Melt(メルティメルト)』だ。濃厚さと口どけを両立させたこのお菓子は、ただの新商品ではない。特許技術を背景にした、まさに「発明」に近い存在であり、チョコレート業界におけるポジショニングの再定義ともいえる一...

GE薬促進の陰で失われる特許の信頼性―PhRMAが警告する日本の制度的リスク

2025年4月、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が日本政府に提出した意見書が、医薬業界および知財実務者の間で波紋を呼んでいる。矛先が向けられたのは、ジェネリック医薬品(GE薬)に関する特許抵触の有無を判断する「専門委員制度」だ。PhRMAはこの制度の有用性に疑問を呈し、「構造的な問題がある」と批判した。 一見すれば、専門家による中立的判断制度は知財紛争の合理的解決に寄与するようにも思える。だが、...

任天堂・ポケモン社に“特許無効”で真っ向勝負 ゲーム開発会社が放つ反撃の声明

2025年春、ゲーム業界に波紋を広げる知財係争が再び表面化した。任天堂と株式会社ポケモン(ポケモン社)の両社が、ある国内の中堅ゲーム開発会社に対して特許侵害を主張して提訴。一方、被告側のゲーム開発会社はこれに対し、2025年5月初旬に声明を発表し、「両社が主張する特許はそもそも無効であり、係争を通じてその事実を明らかにする」と真っ向から反論した。 このコラムでは、係争の背景にある技術的争点、主張さ...

破産からの逆襲―“夢の電池”開発者が挑む、特許逆転劇と再出発

2025年春、かつて“夢の電池”とまで称された次世代蓄電技術を開発していたベンチャー企業が、ついに再建を断念し、破産に至ったというニュースが駆け巡った。だが、そのニュースの“続報”が業界に波紋を呼んでいる。かつて同社を率いた元CEOが、新会社を設立し、破産企業が保有していた中核特許の“取り戻し”に動き出しているのだ。 この物語は、単なる一企業の興亡を超え、日本のスタートアップエコシステムにおける知...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る