対話型AI「ChatGPT」の話題が広がるのに従って、「ThreatGPT」「MedicalGPT」「DateGPT」「DirtyGPT」などChatGPTにあやかった名前のサービスや商品の商標登録を申請する企業が雨後の竹の子のように登場している。こうした動きに危機感を募らせたOpenAIが、「GPT」という言葉の商標登録を急いでいることが報じられているとGigaziNeが23年4月26日伝えている。
IT系ニュースサイトのTechCrunchによると、OpenAIは2022年12月に「Generative Pre-trained Transformer(生成可能な事前学習済み変換器)」の略である「GPT」の商標を申請しているとのこと。さらに、ChatGPTに便乗するサービスが続々と出現していることから、OpenAIは特許商標庁に対し「無数の権利侵害や模倣アプリが誕生し始めている」ことを理由に審査プロセスを早めるよう請願を出したが、拒否されている。
特許商標庁は、速やかに「GPT」を商標登録して欲しいとの申請を却下した理由について「OpenAIが関連費用の支払いや、特別措置の正当性を裏付ける適切な証拠書類の提出を怠ったから」と説明している。
弁護士事務所・Carr&Ferrellの知的財産権グループのパートナーであるジェファーソン・シャー氏は、「OpenAIが置かれている状況を考えると、決定にはあと5カ月はかかるかもしれません」と話し、しかも、半年かけて審査が行われても間違いなく商標登録の申請が通るとは限らないとのこと。
その理由のひとつとしては、「GPT」の「T」が「Transformer」の略で、これはGoogleの研究者が2017年に初めて公開してから広く使われるようになったニューラルネットワークのアーキテクチャに由来しているという点が上げられる。
とはいえ、一般的に使われている説明的な言葉が起源だからといって商標にならないということはない。例えば、IBMは「International Business Machines(インターナショナル・ビジネス・マシンズ)」というかなり説明的なフレーズを由来としているが、略称としての「IBM」は押しも押されもしないブランドとしての地位を確立している。
また、OpenAIが最初の「生成可能な事前学習済み変換器モデル」、つまり「GPT-1」をリリースした2018年10月から4年半にわたり「GPT」という言葉を使ってきたことも考慮に入れられるだろうと、シャー氏は話した。
ここで課題となるのが、ChatGPTが2022年に突然有名になったという点だ。OpenAIは、以前はAI研究者の間で名前が知られている程度の組織だったが、2022年4月に画像生成AI「DALL-E 2」を発表して大きな話題を呼び、続いて11月にChatGPTをリリースしたことで一夜にしてセンセーショナルを巻き起こした。そのため、「GPTという言葉を長年使用して市場の中で少しずつブランドを構築してきた」という主張が通るかどうかは、シャー氏から見ても微妙な問題とのこと。
また、特許商標庁の審査を通過しても、その後の異議申立期間中に「GPT」の商標登録に待ったをかける市場参加者が登場することは想像に難くはない。この場合、異議申立人は「OpenAIの『GPT』は固有の言葉ではなく、一般の人々はこれを広い意味でのジェネレーティブAIに関する言葉だと認識している」と主張することが想定される。
こうした意見とOpenAIの主張が対立した場合、アメリカ市民を無作為に抽出して意識調査をしたり、公文書から深夜のトークショーに至るまで「GPT」がどのように使われてきたかを調べたりする必要があるため、決着には時間を要する。このことを踏まえると、なぜ「OpenAIはもっと早く『GPT』を商標化しなかったのだろう?」という疑問が湧く。これについてシャー氏は「OpenAIは自らの成功に油断したのでしょう」との見方を示した。
一方でシャー氏は、時間はかかるにせよ最終的には商標登録に成功する可能性が高いとみている。シャー氏は「『GPT』はランダムな3文字とは一線を画している。もし私が、新興企業から『GPT』という言葉を使っても問題ないか相談されたら、使わない方が無難だと答えるでしょう」と話した。
【オリジナル記事・引用元・参照】
https://gigazine.net/news/20230426-openai-chatgpt-trademark-gpt/
* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。
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