EUと日本が牽引水素特許、日本が首位 占有率24%~ 欧州特許庁、水素関連特許の動向に関する報告書発表


欧州特許庁(EPO)が1月10日、国際エネルギー機関(IEA)と共同で、世界の水素関連の特許の動向に関する初めての報告書を発表したと日本貿易振興機構(ジェトロ)が1月13日伝えている。

この報告書は、2011年~2020年の期間の水素の製造、貯蔵・輸送、エンドユーザーによる活用まで、水素に関連した幅広いセグメントの国際パテントファミリー(IPF、注)を分析したもので、これによると、EUと日本が世界の水素関連の特許出願を牽引する一方で、米国は遅れをとっており、韓国や中国の存在感は徐々に増しているものの、国際レベルでの存在感は限定的としている。

2011年~2020年の水素関連のIPFの出願件数全体に占めるEUの割合は28%でトップとなり、日本が24%、米国が20%と続いた。ただし、EUのうちドイツが11%、フランスが6%、オランダが3%の順で上位を占め、国別では日本がトップとなった。

また、特許出願の同期間の平均成長率も、日本が6.2%で、欧州の4.5%を上回った。一方で、米国は同期間のIPFの出願件数がむしろ減少した。韓国と中国については、水素関連のIPFの出願件数全体に占める割合がそれぞれ7%、4%にとどまっているが、年間の平均成長率はそれぞれ12.2%、15.2%と高い伸びがみられる。

水素バリューチェーンのセグメント別の内訳については、水素製造が水素関連のIPFの約半数を占め、残りを貯蔵・輸送とエンドユーザーによる活用が分け合うかたちとなっている。また、気候変動に配慮した低排出の革新的な技術に関するIPFの件数が既存技術の改良に関するIPFの2倍程度となっており、水素製造とエンドユーザーによる活用の両セグメントでその傾向は顕著となっている。特に水素製造では、電気分解の技術革新に関する特許出願が大幅に増えており、2020年には気候変動に配慮した革新的な技術に関するIPFの件数が同セグメントの8割近くに達した。

報告書は、欧州や日本などの主要国・地域では、革新的な製造技術の事業化のための誘致合戦が始まっており、電解槽の製造能力の拡大に向けた投資先として、欧州が優位に立っていると指摘。欧州では、特許出願と製造能力への投資がともに活発としている。一方で、日本は、アルカリ型水電解装置と固体高分子型水電解装置の両技術の特許出願で最先端をいっているものの、こうした技術の製造能力に向けた投資は進んでいないとしている。

エンドユーザーによる活用に関しては、さまざまな潜在的な活用先がある中で、自動車分野が技術革新の中心となっており、主に日本がこの分野の特許をリードしている。鉄道や海運などの長距離輸送、航空、発電などの分野でも、脱炭素化に向けて水素の活用が注目されているが、自動車分野ほどは技術革新が進んでいない。ただし、製鋼については、水素の活用に向けた特許出願の件数が近年増加傾向にあるとした。

(注)国際パテント(特許)ファミリーとは、1つの発明を基に、世界の2カ所以上で特許出願している出願のまとまり。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/01/f06a0e72f294989d.html
https://www.epo.org/news-events/news/2023/20230110.html


Latest Posts 新着記事

あの「デコピン」が商標に!? 愛犬の名前が生んだ知財バブル

2023年のMLBオールスター戦で、大谷翔平選手が愛犬を紹介したことが大きな話題となった。その犬の名前は「デコピン(DECOY)」——ファンの間ではすぐに愛称の「デコピン」が定着し、SNSでは「癒やされる」「翔平に似て可愛い」といった投稿が相次いだ。野球界のスーパースターの私生活が垣間見えるワンシーンに、多くの人が微笑ましさを感じたのだろう。 だが、微笑ましい話題の裏で、知的財産の世界ではちょっと...

DXYZ、集合住宅向け顔認証システムで新特許──「FreeiD」が描く次世代ID戦略

近年、顔認証技術をはじめとする生体認証技術の進化は目覚ましく、私たちの生活に急速に浸透しています。特に、住宅分野においては、入退室管理の安全性と利便性の向上に大きく寄与し、マンションや集合住宅のスマート化が加速しています。その流れの中で、DXYZが展開する顔認証IDプラットフォーム「FreeiD」が新たにマンションサービス向けの特許を取得したニュースは、今後の住環境の変革を象徴する重要な出来事と言...

“走らずして勝つ”華為の自動運転戦略 小米の知財布陣が追う

自動運転技術を巡る開発競争が、いま中国を中心に急加速している。特に注目されるのが、通信大手・華為技術(Huawei)とスマートフォンメーカー・小米(Xiaomi)による知的財産(IP)分野での攻防である。中国最大のNEV(新エネルギー車)市場において、彼らは「EV=車」の枠を超えた、テクノロジー中心の覇権争いを繰り広げている。 とりわけ、華為はもはや「通信企業」の枠を超えた存在であり、自動運転にお...

ファンペップ、花粉症ワクチン特許取得で市場期待急上昇:アレルギー新時代の幕開け

2025年5月、バイオベンチャー・ファンペップ(東証グロース:4881)の株価が大幅に続伸した。そのきっかけとなったのが、同社が開発中の花粉症向けペプチドワクチン「FPP004X」に関して、米国において物質特許が正式に成立したという発表である。この報道により市場では大きな注目が集まり、ファンペップの株価は連日上昇。単なる一企業の特許成立ではなく、社会的課題である花粉症への革新的なアプローチが評価さ...

住宅の“健康診断”が見える時代に──LIFULLの新ツールが特許を取得

不動産業界の「透明性」革命 不動産業界は、長らく「情報の非対称性」が問題視されてきた分野だ。物件の価値、状態、修繕履歴など、重要な情報が十分に共有されず、購入者や借主が不利益を被るケースも少なくない。とりわけ中古住宅市場では、築年数のみに頼った価格設定や、目に見えない劣化のリスクが購入判断を曇らせてきた。 こうした中、株式会社LIFULLが提供する不動産情報サービス「LIFULL HOMER...

物流の信頼は“証明”できる時代へ:NONENTROPY JAPAN、DID活用技術で特許取得

かつて情報は中央に集められ、誰かの信頼に依存して管理されていた。しかし今、Web3.0の到来によって「信頼」の形が根本から変わりつつある。その変化は、私たちの生活に密接に関わる“物流”の分野にも及び始めている。2025年、NONENTROPY JAPAN株式会社は、分散型ID(DID)技術を活用した情報処理システムに関して特許を取得し、物流における信頼構築の新たな基盤を提示した。これは単なる技術革...

“配置”も商標になる時代 位置商標が示す知的財産の新潮流

2025年、あのソーセージでおなじみの「シャウエッセン」のパッケージデザイン、具体的には赤と黒の縦縞(ストライプ)柄が、「位置商標」として正式に登録された。このニュースは、一見すると些細な商標登録の話のようにも思えるが、実は企業のブランディングや知的財産戦略の最前線を象徴する動きとして、非常に示唆に富んでいる。 「位置商標」とは何か? 商標と聞くと、多くの人がロゴや商品名、キャッチコピーなどを思い...

動物の“本音”がわかる時代へ──バイドゥの鳴き声翻訳AIがすごい

中国IT大手バイドゥ、動物の「声」を理解するAI開発へ 中国のIT巨人、バイドゥ(Baidu)がまたしても世界の注目を集めている。今回は、検索エンジンや自動運転ではない。彼らが新たに手を出したのは、「動物の鳴き声を翻訳するAI技術」である。この分野における特許取得を目指していることが明らかになったのだ。 動物の鳴き声を解析し、それを人間の言語に「翻訳」するという、まるでSF小説のような構想。これは...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る