自動運転と特許の概要(2022年最新版)日本勢が大活躍、トヨタが首位に


本格実用化に向け、日進月歩の成長を続ける自動運転技術。その裏には、さまざまな最新技術やアイデアが盛り込まれていると自動運転LABが22年7月13日、自動運転と特許の概要について次のように伝えている。

自動運転関連の特許の概要2014~2018年の特許出願は6万1,835件、日本勢が最多。まずは、特許庁がまとめた「令和2年度(2020年度)特許出願技術動向調査 MaaS(Mobility as a Service)~自動運転関連技術からの分析~」の調査概要について見てみると、出願件数は計6万1,835件で、このうち出願人国籍・地域別で最も多いのは日本国籍の2万1,871件となっている。米国が1万2,951件、欧州国籍が3,360件と続く。一方、出願先では、米国が1万5,820件で最多となっており、中国の1万4,907件、日本の1万2,379件と続く。日本勢による出願が多い一方、出願先は市場規模などを反映している印象だ。

自動運転関連技術:「車載センサ」が3万件超

自動運転関連技術における技術区分別の出願件数では、多い順に車載センサ3万8,783件、認識技術3万1,130件、判断技術2万8,001件、運転支援システム2万2,533件、HMI2万1,666件、自動運転制御装置1万9,028件、通信技術1万3,877件、人工知能4,902件、遠隔監視・遠隔操作4,087件、運行設計領域2,349件となっている。多くの分野で日本が最多となっているが、人工知能と遠隔監視・遠隔操作においては米国が最多となっている。

MaaS関連技術:サービス関連では「鉄道」が最多

MaaS関連技術の出願件数は計9,643件で、出願人国籍・地域別では中国の3,283件が最多となっている。日本国籍2,173件、米国籍2,132件の状況だ。

出願人別ではトヨタが首位に

日米欧独中韓への自動運転関連技術の出願件数において、出願人別ではトヨタ自動車が4,247件で首位に立ち、米FORD GLOBAL TECHNOLOGIES(フォード)3,067件、デンソー2,648件、本田技研工業2,460件、独ROBERT BOSCH(ボッシュ)2,207件、HYUNDAI MOTOR(ヒョンデ)1,887件、GM GLOBAL TECHNOLOGY OPERATIONS1,433件、日産自動車1,214件、BAYERISCHE MOTOREN WERKE(BMW)850件、三菱電機847件と続く。

出典:特許庁

一方、MaaS関連技術ではトヨタ自動車647件、中国DIDI CHINA TECHNOLOGY436件、米FORD GLOBAL TECHNOLOGIES290件、米UBER TECHNOLOGIES289件、米GM GLOBAL TECHNOLOGY OPERATIONS(ゼネラルモーターズ)173件の順となっている。

出典:特許庁

トヨタを筆頭に日本勢活躍がする一方、MaaS関連ではDiDiやUberといった配車プラットフォーマーが上位に食い込んでいる。

開発各社の特許技術

経済産業省所管の独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」において、単純にキーワード「自動運転」で特許・実用新案を検索すると、1万3,104件ヒットする。このうち、2022年に公知された437件の中から主だったものを紹介していく。

多数の特許・実用新案を出願しているトヨタは、目標軌跡の実現が求められる状況において自動運転への不要な介入を抑える車両制御システムや、自動運転車のオペレーター以外のいたずらや誤りにより車両制御・操作が行われることを防止する自動運転システム、オペレーターの意図に反した自動運転車両の加速を抑制する技術、自動運転車両を歩道側に寄せる場合に車両を不要に停止させてしまうことを抑制する技術、乗客の感覚に合った動きで車両を停車させることができる自動運転技術、自動運転車両の走行中に車載装置の異常判定を行う技術、目標の駐車枠に追従車両を駐車させることができる車両制御システムなど、非常に細やかで多岐にわたる技術を出願している。

自動運転に関する商標について

J-PlatPatで自動運転に関する商標を検索すると、名古屋大学を運営する国立大学法人東海国立大学機構による「ゆっくり自動運転」や、アロママッサージ事業などを手掛けるハンド・エイドによる「自動運転ホテル」、日産自動車による「Seamless Autonomous Mobility」、損害保険ジャパンによる「自動運転リスクアセスメント」や「SOMPO自動運転見守り」、自動車技術会による「自動運転AIチャレンジ」、見本市を主催するRX Japanによる「自動運転EXPO」などがヒットする。

中には、個人名で「自動運転車」や「日本自動運転協会」「robotaxi」などを登録する動きもある。いわゆる商標ビジネスかどうかは定かではないものの、固有の自動運転システムやサービスが続々と実用化される将来に向け、商標の早期取得も一段と重要性を増すことになりそうだ。

まとめ

出願された一つひとつの技術は非常に細かなものだが、その一つひとつが結集することで、高度かつ効果的な自動運転システムやサービスが実現する。

今後も続々と最新技術が出願されるものと思われるが、出願件数は各社の研究開発への意欲の表れでもある。開発各社がどのような領域に力を入れているのか、特許の面からアプローチしてみるのも興味深いところだ。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://jidounten-lab.com/u_36257


Latest Posts 新着記事

AI×半導体の知財戦略を加速 アリババが築く世界規模の特許ポートフォリオ

かつてアリババといえば、EC・物流・決済システムを中心とした巨大インターネット企業というイメージが強かった。しかし近年のアリババは、AI・クラウド・半導体・ロボティクスまで領域を拡大し、技術企業としての輪郭を大きく変えつつある。その象徴が、世界最高峰AI学会での論文数と、半導体を含むハードウェア領域の特許出願である。アリババ・ダモアカデミー(Alibaba DAMO Academy)が毎年100本...

翻訳プロセス自体を発明に──Play「XMAT®」の特許が意味する産業インパクト

近年、生成AIの普及によって翻訳の世界は劇的な変化を迎えている。とりわけ、専門文書や産業領域では、単なる機械翻訳ではなく「人間の判断」と「AIの高速処理」を組み合わせた“ハイブリッド翻訳”が注目を集めている。そうした潮流の中で、Play株式会社が開発したAI翻訳ソリューション 「XMAT®(トランスマット)」 が、日本国内で翻訳支援技術として特許を取得した。この特許は、AIを活用して翻訳作業を効率...

特許技術が支える次世代EdTech──未来教育が開発した「AIVICE」の真価

学習の個別最適化は、教育界で長年議論され続けてきたテーマである。生徒一人ひとりに違う教材を提示し、理解度に合わせて学習ルートを変化させ、弱点に寄り添いながら伸ばしていく理想の学習プロセス。しかし、従来の教育現場では、教師の業務負担や教材制作の限界から、それを十分に実現することは難しかった。 この課題に真正面から挑んだのが 未来教育株式会社 だ。同社は独自の AI学習最適化技術 で特許を取得し、その...

抗体医薬×特許の価値を示した免疫生物研究所の株価急伸

東京証券取引所グロース市場に上場する 免疫生物研究所(Immuno-Biological Laboratories:IBL) の株価が連日でストップ高となり、市場の大きな注目を集めている。背景にあるのは、同社が保有する 抗HIV抗体に関する特許 をはじめとしたバイオ医薬分野の独自技術が、国内外で新たな価値を持ち始めているためだ。 バイオ・創薬企業にとって、研究成果そのものだけでなく 知財ポートフォ...

農業自動化のラストピース──トクイテンの青果物収穫技術が特許認定

農業分野では近年、深刻な人手不足と高齢化により「収穫作業の自動化」が急務となっている。特に、いちご・トマト・ブルーベリー・柑橘など、表皮が繊細な青果物は人の手で丁寧に扱う必要があり、ロボットによる自動収穫は難易度が極めて高かった。そうした課題に挑む中で、株式会社トクイテンが開発した “青果物を傷付けにくい収穫装置” が特許を取得し、農業DX領域で大きな注目を集めている。 今回の特許は単なる「収穫機...

<社説>地域ブランドの危機と希望――GI制度を攻めの武器に

国が地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度をスタートしてから10年が経つ。ワインやチーズなど農産物を地域の名前とともに保護する仕組みは、欧米では産地価値を国境を越えて守る知財戦略としてすでに大きな成果を上げてきた。一方、日本でのGI制度は、導入から10年が経った今ようやくその重要性が幅広く認識される段階に差し掛かったと言える。 農林水産省によれば、2024年時点...

保育データの構造化とAI分析を特許化 ルクミー「すくすくレポート」技術の本質

保育業界におけるDXが本格的に進む中、ユニファ株式会社が展開する「ルクミー」は、写真・動画販売や登降園管理、午睡チェックシステムなどを通じて保育の可視化と効率化を支えてきた。その同社が開発した 保育AI™「すくすくレポート」 が特許を取得したことは、保育現場のデジタル化における大きな節目となった。 「すくすくレポート」は、子どもの日々の成長・発達をAIが分析し、保育士の観察記録を補助...

JIG-SAW、動物行動AIの“核技術”を米国で特許化 世界標準を狙う布石に

IoTプラットフォーム事業を展開する JIG-SAW株式会社 が、米国特許商標庁(USPTO)より「AI算出によるベクトルデータをベースとしたアルゴリズム・システム」に関する特許査定を受領した。対象となるのは 動物行動解析分野—つまり動物の動き・姿勢・行動をAIで読み取り、ベクトルデータとして構造化し、行動傾向や異常を自動判定するための技術だ。 近年、ペットヘルスケア、畜産、動物実験、野生動物の行...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る