ブルース・スプリングスティーン、原盤権と音楽出版権を約ソニーに売却、相次ぐミュージシャンの楽曲のライツ売却


近年、ボブ・ディランやポール・サイモン、ニール・ヤングなど楽曲のライツ(権利)を高額で手放す大物ミュージシャン相次ぎ話題になっている。それも買い手がレコード会社だけではなく、資産運用会社だったりすることもあると言われている。

今回は、ブルース・スプリングスティーンが、自身のマスター音源の権利をソニー・ミュージック、音楽出版権をソニー・ミュージック・パブリッシングに売却したことが話題になっている。これは合計5億ドル(約568億円)規模となり、音楽界において個人の作品としては最大級の取引だったことを関係者が米ビルボードに語ったと、21年12月17日billboard JAPANが伝えていた。
21年11月に米ビルボードが報じたように、ソニーはスプリングスティーンによるアルバムのカタログの権利を取得するための交渉を進め、同時にスプリングスティーンはユニバーサル・ミュージック・パブリッシングが管理している出版権の譲渡先を探していた。

50年に及ぶこれまでのキャリアにおいて、スプリングスティーンは、ソニー傘下のコロンビア・レコードでレコーディングした。他の1970年代と80年代のトップ・アーティストと同様に、80年代後半から90年代にかけてCDが爆発的に売れたため、レーベルは彼との再契約を促すために、初期のアルバムの所有権を彼に与えた。

アメリカ・レコード協会のウェブサイトによると、15回プラチナ認定された『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』や5回プラチナ認定された『ザ・リバー』を含む彼のアルバムのカタログは、全米で6,550万枚の売上を記録している。また、MRCデータによると、彼の音楽は2018年の初めから米国内でアルバム枚数相当225万ユニットを獲得しており、いまも好調のようだ。

米ビルボードは、2020年10月にリリースされた最新アルバム『レター・トゥ・ユー』、そして2019年に発売された『ウエスタン・スターズ』、『ウエスタン・スターズ』のサントラ、『ブラインデッド・バイ・ザ・ライト』のサントラの3作品により、スプリングスティーンが2020年に約1,500万ドル(約17億円)の収益を上げたと推定する。

彼のカタログの過去3年間の財務統計をもとに、米ビルボードはその年間平均売上高を約1,200万ドル(約13億4,000万円)と見積もっている。そこから売上の20%に相当する制作費と流通費用を差し引くと、売上総利益は960万ドル(約11億円)になると推定される。これを15倍にすると1億4,500万ドル(約165億円)、20倍にすると約1億9,000万ドル(約216億円)の評価額になる。

さらに、米ビルボードは、スプリングスティーンの出版権が年間約750万ドル(約8億5,000万円)の利益をもたらすと見積もっている。従って、彼の出版権の評価額は25年分の1億8,500万ドル(約210億円)から30年分の2億2,500万ドル(約256億円)の間と推定される。

30年分の出版権の利益と20年分のマスターの売上利益は合計で4億1,500万ドル(約472億円)になるが、情報筋によると最終的な価格はこれよりもかなり高かったようだ。

この取引でスプリングスティーンは大きな収入を得たわけだが、ミュージシャンとしての活動の終期にまとまった身入りを得ることが出来、一方、買い手にとってはデジタル配信市場が拡大するなかでの“投資”と言えるのではなかろうか。ひところ昔なら考えられなかったことだが音楽ビジネスも時代とともに変化するわけだ。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.sonymusic.com/sonymusic/smg-announces-acquisition-of-bruce-springsteens-music/
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/106980/2


Latest Posts 新着記事

フォシーガGE、特許の壁を突破 沢井・T’sファーマの挑戦

2025年9月、日本の医薬品市場において大きな話題を呼んでいるのが、SGLT2阻害薬「フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)」の後発医薬品(GE、ジェネリック)の登場である。糖尿病治療薬の中でも売上規模が大きく、近年では慢性腎臓病や心不全の領域にも適応拡大が進んだフォシーガは、アストラゼネカの主力製品のひとつである。その特許の“牙城”を突破し、ジェネリック医薬品の承認を獲得したのが沢井製薬とT&#...

電池特許はCATLだけじゃない――AI冷却から宇宙利用まで、注目5大トピック

近年、知的財産の世界では、特定の企業やテーマに関心が集中しやすい傾向がある。中国・CATLの電池特許戦略や、AIをいかに効率的に冷却するかといったテーマは、テクノロジー産業の今を象徴するキーワードだ。しかし同時に、その裏側には見落とされがちな知財動向や、将来を左右しかねない新しい潮流が潜んでいる。本稿では、「電池特許CATL以外にも」「特集AIを冷やせ」を含め、いま注目すべき5本のトピックを整理し...

バックオフィス改革へ ミライAI、電話取次自動化で特許取得

AI技術の進化が加速するなか、企業のバックオフィスや顧客対応の現場では「省人化」「自動化」をキーワードとした取り組みが急速に広がっている。その中で、AIソリューションを展開するミライAI株式会社は、従来の電話取次業務を人手に頼ることなく「完全無人化」するための技術を開発し、特許を取得したと発表した。この技術は、音声認識・自然言語処理・対話制御を組み合わせ、従来課題とされてきた「誤認識」「取次精度の...

技術から収益化へ――河西長官が訴える“知財活用”の新ステージ

特許庁の河西長官は、来る9月10日に開幕する「知財・情報&コンファレンス」を前に記者団の取材に応じ、日本経済の競争力強化における知的財産の役割を改めて強調した。長官は「日本は技術とアイデアを数多く持ちながら、それを十分に事業化や収益化につなげきれていない。知財で稼ぐ政策を実現することが不可欠だ」と語り、特許庁としても産業界と連携し、知財活用の裾野を広げる方針を示した。 ■ 知財立国から「稼ぐ知財立...

トランプ政権が構想した特許税 ―特許価値評価の壁と企業への影響

アメリカ合衆国における税制改革は、政権の経済戦略を象徴するテーマである。ドナルド・トランプ政権下においても例外ではなく、法人税率の引き下げや海外利益の還流促進策など、多くの議論が繰り広げられた。その中で一部の政策担当者やシンクタンクから浮上したのが、知的財産権、とりわけ「特許」に対して課税を行う仕組み、いわゆる「特許税(Patent Tax)」の導入構想である。これは企業が保有する特許を資産として...

グローバル出願も効率化!特許業務支援プラットフォームappia-engine進化

知的財産の管理や特許業務は、多くの企業や研究機関にとって欠かせない活動です。しかし、実際の業務現場では「出願件数の増加」「国際的な審査対応」「膨大な書類作成」「調査の手間」など、数々の課題が存在しています。特にグローバル競争が激化する中で、迅速かつ正確に知財を扱うことは企業価値の向上に直結するため、知財部門や特許事務所にとって効率化は最優先事項となっています。 こうした背景を受けて開発されたのが、...

大阪・関西万博を彩る知財の力――特許庁が『とっきょ』特別号を発行

2025年に開催される大阪・関西万博は、世界各国から最新の技術や文化が集結する「未来の実験場」として大きな注目を集めている。その舞台裏では、知的財産(知財)が重要な役割を果たしていることをご存じだろうか。特許庁はこのたび、広報誌「とっきょ」の特別号として、大阪・関西万博に関連する知財の数々を特集し、その魅力と意義を幅広く伝える試みをスタートさせた。 本稿では、その特別号の内容を紐解きながら、万博と...

建築業界の常識を変える!スタイルポート、3D空間コミュニケーション特許を取得

建築や不動産の分野において、デジタル技術の導入は急速に進展している。その中で注目を集めているのが、株式会社スタイルポートが開発した「3D空間上でのプロジェクトコミュニケーション技術」である。同社はこのたび、同技術に関する特許を取得したと発表した。本稿では、この特許の概要、業界へのインパクト、さらには今後の展望について詳しく解説する。 1. 特許の概要 今回、スタイルポートが取得した特許は、建築物や...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る