インドが加わった知的財産権を巡る交渉、IPEF=アイぺフ は何を変えるのか

<IPEFの最大の特徴の1つはインドが加わっていることだ。TPPがカバーしてきた高度な水準を求める知的財産権保護の枠組みから抜けてきた「インド」が加わっている意義は極めて大きい>とNewsweek日本版は次のように伝えている。

世界の産業構造は大きく変わっており、知的財産権によるライセンスフィー収入は増加の一途を辿っている。海外の自動車関連子会社からのライセンスフィー割合が大きい日本の知財収入はコロナ禍で一時的に落ち込みを見せていたものの、今後世界経済の立て直しが図られていく中、その継続的な収入増加が見込まれている。

知的財産権の評価を行う米国オーシャン・トモ社によると2020年段階で主要企業の時価総額に占める無形資産の割合は、日本が約30%であったのに対し、米国は90%、欧州は75%、韓国57%、中国44%となっている。つまり、日本は有形資産による経営から脱却しきれていないが、既に欧米や先進国の企業群は知的財産を重視する経営判断に移っていると言えるだろう。

したがって、産業構造の変化を受けたアメリカの知的財産権問題に関する姿勢は強硬だ。

北風(単独交渉&制裁)と太陽(TPP)でも不十分

元々オバマ政権が過去にTPPに加盟申請しようとしていた動機の1つが知的財産権保護であった。TPPは知的財産権保護がオザナリであったアジア太平洋地域において、その高度な基準を求める協定であった。TPP加盟国の市場にアクセスするためには、その高度な基準を満たす必要があるため、関係各国は自国の状況を積極的に改善することが求められる。オバマ政権は自国の産業構造変化を踏まえて、渡りに船ということでTPPに積極的に参加する道を選ぼうとした。

しかし、トランプ政権はTPPからの脱退を宣言し、米国が含まれる形でのアジア太平洋地域における多国間での知的財産権保護の動きは一時的に後退することになった。現在、日本はTPP11を主導する立場にあるが、米国抜きでは対中国という面ではやはりパンチに欠けることは否めない。

TPP脱退の代わりに、トランプ政権では中国に対する関税等の制裁を行う形で米国単独の知財改善交渉を行うことになった。同政権における関税等の措置は米中両国の経済に打撃を与える我慢比べとなったが、やはり当初想定されていたよりも十分な成果は得られなかった。

近年の米国のアジア太平洋地域での知的財産権保護の取り組みは、北風(単独交渉&制裁)と太陽(TPP)のような知的財産権保護に向けた政策が取られていたことになる。しかし、そのいずれも中国やインドなどの非アメリカ・日本の域内大国の状況を十分に改善できるものではなかった。つまり、日本(TPP)と米国(トランプ政権単独交渉)だけでは、中国やインドなどに対して知的財産権保護という新しい経済のルールを将来的に安定的に機能させるには不十分であったと言えるだろう。

そのため、バイデン政権が新たに発足させた枠組みがIPEFである。

「インド」が加わっている意義は極めて大きい

IPEFの最大の特徴の1つはインドが加わっていることだ。TPPがカバーしてきた高度な水準を求める知的財産権保護の枠組みから抜けてきた「インド」が加わっている意義は極めて大きい。インドは中国主導のRCEPの枠組みから離脱しており、アメリカ、日本、インドという域内大国が組み込まれたIPEFが機能した場合、インド太平洋地域のスタンダードになることは間違いない。

既に発足したTPP11に加えて、アメリカ、日本、インドの3か国が加わったIPEF(総計13か国)による知的財産権保護の枠組みは、中国の知的財産権政策に関しても北風と太陽の両面を持つ政策として圧力となっていくことになるだろう。

まさに1人でダメなら2人で、2人でダメなら3人で、ということだ。クアッドのような安全保障の枠組みだけでなく、日米印の関係深化が図られていく状況に今後も注目していきたい。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.newsweekjapan.jp/watase/2022/05/ipef-1_1.php

* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。

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