iPhoneがますますタフに—Appleが過酷な環境にも耐えられる設計で特許を取得


アップルは毎年のようにiPhoneの耐水性能などを高めてきたが、同社が高い水圧や低い気圧のもとでもiPhoneのセンサーを正常に動作させる特許を取得したことが明らかとなったことをGetNaviwebは22年5月18日伝えている。

米特許商標庁(USPTO)がアップルに承認した「圧力センサーを内蔵した電子機器」なる特許は、ポータブル電子機器に外部から圧力が加わったり、あるいは水圧や気圧などが変化することで本体にダメージを与えたり、センサーの精度に影響を与えるのを防ぐことを目的としたものだ。

特に製品名は書かれてないが「これらのデバイスは、通勤中の人々と一緒に外出し、バスのルート、交通情報、その日の試合のスコアなどを更新する」と述べていることから、iPhoneであることは明らかだ。「ユーザーがこれら製品にますます頼るようになり、デバイスもより頑丈に設計されています」とのこと。

そこで脅威となるのが、より多様な環境で使われることで、たとえば「気温が氷点下まで下がる登山やスキー、トレッキングで持ち運ぶ」場合や、「水中や水辺に持ち込まれる」といった具合だ。

水が機器内に入り込むのを防ぐ方法の1つは、入り込むような外部ポートをなくすことで、アップルが2016年発売のiPhone 7以降はヘッドホン端子を廃止し、他のメーカーも批判しながらも結局は後に続いたのはそのためと推測されている。

しかし、特許文書によればポートを取り除く、つまりデバイスを密閉することにより、思わぬマイナス効果もあるそうだ。「デバイスを密閉して、ある程度は水没できるようになると、デバイスに内蔵されるセンサーの一部に動作に予期せぬ影響をもたらす場合もあります」とのことだ。

最も顕著なのは、「密閉された環境内に封入されるため、動作温度の上昇につながる可能性があります」ということ。つまり水濡れの代わりに、過熱してダメージを受けるかもしれない、というわけでだ。iPhoneが熱くなりすぎると自動的にシャットダウンするのも、そのため。
それを防ぐには温度や圧力センサーなどを組み込む必要があるものの、デバイス内に密閉されて外部環境と接触がないため、精度が低くなる可能性がある。この特許は、それを解決することに焦点が置かれている。

その主な方法は、デバイスの中に密閉された空洞を作り、環境圧(大気圧と水圧の合計値)を測定すること。そうして圧力を検出した場合は、デバイス内部の気圧と外部の圧力を近づけて、部品にかかる圧力を和らげるアプローチが取られている。

どうやってiPhone内部の気圧を高めるのかは記述されていないが、少なくとも「外部からの圧力を和らげる必要」は認識されていることになる。iPhoneの防水性能を高めることが逆に内部の過熱に繋がるとは意外だが、将来のモデルではiPhoneを「より深く、より高い」過酷な環境下で使えるようになるかもしれない。


【オリジナル記事・引用元・参照】
ttps://getnavi.jp/digital/742262/


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