数千万円級!?トヨタの新型「GR GT3」市販デザイン公開 — リアウィング控えめレースマシンの意匠とは


2022年5月16日、特許庁に対してある意匠登録が発行された。意匠権者は「トヨタ自動車株式会社」となっており「創作者」として2名の人物の名前が記されているとくるまのニュースが22年5月19日伝えている。

「意匠に係る物品」という項目には「乗用自動車」の記載があり、3DCGで描かれた6枚のクルマの画像が添付されている。

意匠とは「デザイン」とほぼ同じ意味をもった言葉で、日本では特許庁に意匠登録することで、意匠権が保護され、模倣などの権利侵害を防ぐことができる。自動車メーカーは、自社のクルマや、フロントグリル、ヘッドライトといったクルマの一部のデザインなどをあらかじめ意匠登録しておくことでその独自性を証明する。
基本的に意匠登録は、その製品が世に出る前におこなわれるため、特許庁が公開している意匠登録データを見ることで、今後発売される新型車に対するヒントを得ることができる場合がある。

今回意匠登録されたこのクルマの3DCG画像は、それほど精密に描かれたものではない。しかし、一見してわかるロングノーズ・ショートデッキかつワイド&ローのファストバッククーペスタイルから、このクルマはフロントミッドシップにエンジンを搭載したスポーツカー、それもかなり高性能なスーパースポーツカーであることがうかがえる。

さらに、両サイドのスポイラーと一体化したエグゾーストパイプがあり、車両右後方のピラーには給油口のようなものが描かれていることから、このクルマが内燃機関、おそらくガソリンエンジンを搭載したものであると予想される。

ただ、現在販売されているトヨタ、レクサス、GRのモデルで、今回意匠登録されたクルマに近いスタイリングを持つものはない。そのため、完全新型モデルになることが想定されるが、東京オートサロン2022で公開された「GR GT3 コンセプト」がその第一候補といえそうだ。

GR GT3 コンセプトは、欧州などで人気の「GT3」クラスのレースへの参戦を目的として開発されたレーシングカー。現在、多くのメーカーがGT3用のレーシングカーを提供しており、世界でもっとも注目されているカテゴリーといえる。

GT3クラスに参戦する車両は、あくまで「市販車をベースとしたレーシングカー」である必要があるため、ベースとなる車両は実際に市販されており、なおかつ一定以上の台数が生産されていなければならない。

実際にはエンジンの載せ替えなどの大規模な改造がおこなわれるものの、やはり市販車ベースでは限界があるのも事実です。そこで一部のメーカーは、「レーシングカーを開発し、それを市販する」という逆転の発想をすることがある。

こうして市販されたクルマは「ホモロゲーションモデル」などと呼ばれ、かつてはポルシェ「959」やメルセデス・ベンツ「CLK-GTR」などといったほとんどレーシングカーそのままの市販車が販売されたことがある。

最近ではトヨタの「GRヤリス」もホモロゲーションモデルの例とされている。「ヤリス」の名が与えられているものの、3ドアハッチバック化されており、エンジンも新開発の1.6リッターインタークーラー付きターボとなっているほか、プラットフォームも大きく手が加えられている。

東京オートサロン2022年で展示されたGR GT3 コンセプトと、今回意匠登録されたこのスーパースポーツカーはボディラインやフロントおよびリアのデザイン、エグゾーストパイプの位置、ホイールのデザインなどがよく似ている。

一方で、意匠登録されたスーパースポーツカーには、GR GT3 コンセプトにあった大型のリアウィングやフロントとリアのスポイラーなどは見られず、より公道での走行を意識したものとなっている。

このことから、GR GT3 コンセプトの公道仕様、つまりはホモロゲーションモデルである可能性が濃厚です。ただ、現時点ではそれ以上の詳細は不明です。GR GT3 コンセプトについても、全長4590mm×全幅2040mm×全高1140mmであることと、ホイールベースが2725mmであることが公表されているのみで、具体的なスペックなどは明らかにされていない。

しかし、このスーパースポーツカーが市販された場合、これまでのトヨタ、レクサス、GRのモデルとは一線を画すハイパフォーマンスモデルかつ高額モデルになると見られる。

意匠登録には「秘密意匠」というものがあり、出願者の希望によって登録から一定期間はデザインの公開をおこなわないことが可能です。ほとんどの市販車では秘密意匠登録がされるので、事前にそのデザインを見ることはできませんが、今回のスーパースポーツカーは通常の意匠登録がおこなわれていました。その背景には、「ぜひ注目してほしい」というトヨタ側の意気込みもあるのかもしれない。


【オリジナル記事・引用元・参照】
ttps://kuruma-news.jp/photo/509953#photo1


Latest Posts 新着記事

連邦政府が大学の特許収入を狙う トランプ政権の新方針が波紋

はじめに 米国の大学は、研究開発活動を通じて得られる特許収入を重要な財源としてきました。大学の特許収入は、新しい技術の商業化やスタートアップ企業の設立に活用され、イノベーションの促進に直結しています。しかし、トランプ政権下で、連邦政府が大学の特許収入の一部を請求する方針が検討されており、大学の研究活動やベンチャー企業の育成に対する影響が懸念されています。 特に米国は、大学発ベンチャーの育成や産学連...

脱石炭から技術輸出へ:中国が描くクリーンエネルギーの未来

21世紀に入り、世界各国が環境問題やエネルギー安全保障への対応を迫られるなか、中国はクリーンエネルギー分野で急速に存在感を高めてきた。とりわけ再生可能エネルギー技術、電気自動車(EV)、蓄電池、送配電網、そしてグリーン水素などの分野において、中国は「追随者」から「先行するイノベーター」へと変貌を遂げつつある。なぜ中国が短期間でこのような飛躍を実現できたのか。その背景には、国家戦略、産業政策、市場規...

世界のAI特許6割を握る中国 5G・クラウドを基盤に国際競争を主導

近年、中国はデジタル経済の拡大と技術革新を国家戦略の中核に据え、AIや5G、クラウド、データセンターといった基盤技術において世界を牽引する存在となっている。その象徴的な事実として注目されるのが、人工知能(AI)に関する特許出願件数である。国際特許機関の最新統計によれば、中国からのAI関連特許は世界全体の約6割を占め、米国や欧州、日本を大きく上回る圧倒的なシェアを記録している。 本稿では、中国がいか...

AgeTech知財基盤を強化――パテントアンブレラ(TM)が累計41件出願、AI特許も追加

高齢社会の進展に伴い、健康維持、生活支援、介護軽減を目的としたテクノロジー領域「AgeTech(エイジテック)」への注目がかつてないほど高まっている。その中で、知的財産を軸に事業競争力を高める取り組みが活発化しており、今回、独自の「パテントアンブレラ(TM)」戦略を進める企業が、AI関連特許を含む29件の新規出願を追加し、累計41件の特許出願を完了したと発表した。これにより、類型141件の機能をカ...

フォシーガGE、特許の壁を突破 沢井・T’sファーマの挑戦

2025年9月、日本の医薬品市場において大きな話題を呼んでいるのが、SGLT2阻害薬「フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)」の後発医薬品(GE、ジェネリック)の登場である。糖尿病治療薬の中でも売上規模が大きく、近年では慢性腎臓病や心不全の領域にも適応拡大が進んだフォシーガは、アストラゼネカの主力製品のひとつである。その特許の“牙城”を突破し、ジェネリック医薬品の承認を獲得したのが沢井製薬とT&#...

電池特許はCATLだけじゃない――AI冷却から宇宙利用まで、注目5大トピック

近年、知的財産の世界では、特定の企業やテーマに関心が集中しやすい傾向がある。中国・CATLの電池特許戦略や、AIをいかに効率的に冷却するかといったテーマは、テクノロジー産業の今を象徴するキーワードだ。しかし同時に、その裏側には見落とされがちな知財動向や、将来を左右しかねない新しい潮流が潜んでいる。本稿では、「電池特許CATL以外にも」「特集AIを冷やせ」を含め、いま注目すべき5本のトピックを整理し...

バックオフィス改革へ ミライAI、電話取次自動化で特許取得

AI技術の進化が加速するなか、企業のバックオフィスや顧客対応の現場では「省人化」「自動化」をキーワードとした取り組みが急速に広がっている。その中で、AIソリューションを展開するミライAI株式会社は、従来の電話取次業務を人手に頼ることなく「完全無人化」するための技術を開発し、特許を取得したと発表した。この技術は、音声認識・自然言語処理・対話制御を組み合わせ、従来課題とされてきた「誤認識」「取次精度の...

技術から収益化へ――河西長官が訴える“知財活用”の新ステージ

特許庁の河西長官は、来る9月10日に開幕する「知財・情報&コンファレンス」を前に記者団の取材に応じ、日本経済の競争力強化における知的財産の役割を改めて強調した。長官は「日本は技術とアイデアを数多く持ちながら、それを十分に事業化や収益化につなげきれていない。知財で稼ぐ政策を実現することが不可欠だ」と語り、特許庁としても産業界と連携し、知財活用の裾野を広げる方針を示した。 ■ 知財立国から「稼ぐ知財立...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る