IT技術で医療課題解決!デジタルセラピューティクス(DTx)とは?


皆さんは「デジタルセラピューティクス(DTx)」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

デジタルセラピューティクスは、デジタル技術を活用して病気の治療を行う手法のことである。今回は、デジタルセラピューティクスを取り巻く状況や、デジタルヘルスとの違いについて説明していく。

デジタルセラピューティクスは、2010年に米国で承認された「Bluestar」という糖尿病患者向けの治療補助アプリからその歴史が始まった。米国では、デジタル治療提供企業の業界団体「Digital Therapeutics Alliance」によって、「エビデンスに基づき臨床的に評価されたソフトウェアを利用して患者に直接医療行為を行うことにより、疾患や障害の治療、管理、予防を行うもの」と定義されている。

米国では上記の状況だが、日本ではまだその定義が厳密に定められていない。2014年の薬機法改正によって医療機器にコンピュータープログラムが含まれるようになったが、具体的な該当プログラムは2021年に策定された「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」によってようやく定められたところである。

当該ガイドラインにおいてもデジタルセラピューティクスの定義は行われていないが、医療機器に該当するプログラムについては次のように規定されている。

①医療機器の定義に該当する使用目的を持ったプログラムであること
②「汎用コンピューターにインストールすることで医療機器機能を与えるもの」又は、
「プログラムでない医療機器に組み込んで使用するもの」であること

これらの要件に該当して医療機器に認定されたプログラムが、日本における実質的なデジタルセラピューティクスと言えるだろう。
2021年には、その第一号として禁煙治療用アプリ「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリおよびCOチェッカー」の保険適用が認められている。

一方、デジタルヘルスとは健康増進を目的とした歩数計アプリや体重管理アプリなど、いわゆる「ウェルネスアプリ」を含むデジタルを使って健康に資するためのツール全般を指したものと言えるだろう。

デジタルセラピューティクスもデジタルヘルスの一部に含まれると解釈できるが、「エビデンスに基づいて治療的介入を行う」という特徴を持っている。一般的なデジタルヘルス製品であれば医療機器としての認証等は不要だが、デジタルセラピューティクスに係る製品である場合はリスクや有効性、使用目的の根拠を提示し認証等を得ることが必要だ。

デジタルセラピューティクスは、これまで治療が困難であった疾患に新たな治療効用をもたらす可能性を秘めたツールである。今後も様々な技術が開発され、医療の幅を広げていってくれることを期待したい。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://news.yahoo.co.jp/articles/8e1160b7660c0397bc359e1adc984ba50742bc3a


Latest Posts 新着記事

10月に出願公開されたAppleの新技術〜Vision Proの「ペルソナ」を支える虹彩検出技術〜

はじめに 今回は、Apple Inc.によって出願され、2025年10月2日に公開された特許公開公報 US 2025/0308145 A1に記載されている、「リアルタイム虹彩検出と拡張」(REAL TIME IRIS DETECTION AND AUGMENTATION)の技術内容、そしてこの技術が搭載されている「Apple Vision Pro」のペルソナ(Persona)機能について詳説してい...

工場を持たずにOEMができる──化粧品DXの答え『OEMDX』誕生

2025年10月31日、化粧品OEM/ODM事業を展開する株式会社プルソワン(大阪府大阪市)は、新サービス「OEMDX(オーイーエムディーエックス)」を正式にリリースした。今回発表されたこのサービスは、化粧品OEM事業を“受託型”から“構築型”へと転換させるためのプラットフォームであり、現在「特許出願中(出願番号:特願2025-095796)」であることも明記されている。 これまでの化粧品OEM業...

特許で動くAI──Anthropicが仕掛けた“知財戦争の号砲”

AI開発ベンチャーのAnthropic(アンソロピック)が、200ページ以上(報道では234〜245ページ)にわたる特許出願(または登録)が明らかになった。その出願・登録文書には、少なくとも「8つ以上の発明(distinct inventions)」が含まれていると言われており、単一の用途やアルゴリズムにとどまらない広範な知財戦略が透けて見える。 本コラムでは、この特許出願の概要と意図、そしてAI...

SoC時代の知財戦争──ホンダと吉利が仕掛ける“車載半導体覇権競争”

自動車産業が「電動化」「自動運転」「ソフトウェア定義車(SDV)」へと急速にシフトするなか、車載半導体・システム・チップ(SoC:System­on­Chip)を巡る知財・開発競争が激化している。特に、ホンダが「車載半導体関連特許を8割増加」させているとの情報が注目されており、同時に中国自動車メーカーが特許活動を爆発的に拡大しているとされる。なかでもジーリー(Geely)が“18倍”という成長率を...

試験から設計へ──鳥大が築くコンクリート凍害評価の新パラダイム

はじめに:なぜ“凍害”がコンクリート耐久性の大きな壁なのか コンクリート構造物が寒冷地・凍結融解環境(凍害)にさらされると、ひび割れ・剥離・かさ上がり・耐荷力低下といった劣化が進行しやすい。例えば水が凍って膨張し、内部ひびを広げる作用や、塩分や融雪剤の影響などが知られている。一方、これらの劣化挙動を実験室で迅速に・かつ実サービスに近づけて評価する試験方法の開発は、長寿命化・メンテナンス軽減の観点か...

Perplexityが切り拓く“発明の民主化”──AI駆動の特許検索ツールが変える知財リサーチの常識

2025年10月、AI検索エンジンの革新者として注目を集めるPerplexity(パープレキシティ)が、全ユーザー向けにAI駆動の特許検索ツールを正式リリースした。 「検索の民主化」を掲げて登場した同社が、ついに特許情報という高度専門領域へ本格参入したことになる。 ChatGPTやGoogleなどが自然言語検索を軸に知識アクセスを競う中で、Perplexityは“事実ベースの知識検索”を強みに急成...

特許が“耳”を動かす──『葬送のフリーレン リカちゃん』が切り開く知財とキャラクター融合の新時代

2025年秋、バンダイとタカラトミーの共同プロジェクトとして、「リカちゃん」シリーズに新たな歴史が刻まれた。 その名も『葬送のフリーレン リカちゃん』。アニメ『葬送のフリーレン』の主人公であるフリーレンの特徴を、ドールとして高精度に再現した特別モデルだ。特徴的な長い耳は、なんと特許出願中の専用パーツ構造によって実現されたという。 「かわいいだけの人形」から、「設計思想と知財の結晶」へ──。今回は、...

“低身長を演出する靴”という逆転発想──特許技術で実現した次世代『トリックシューズ』の衝撃

ファッションと遊び心を兼ね備えた新発想のシューズ「トリックシューズ」が市場に登場した。通常、多くの「シークレットシューズ」や「厚底スニーカー」は身長を高く見せるために設計されるが、本モデルは逆に身長を「低く見せる」ための構造を意図しており、そのためにいくつもの特許技術が組み込まれているという。今回は、このトリックシューズの設計思想・技術構成・使いどころ・注意点などを掘り下げてみたい。 ■ コンセプ...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る