秋田県が、高級ブランド米「サキホコレ」の海外販売を視野にその知的財産の保護を目的に中国、香港に出願していた商標登録が完了した。サキホコレは、今年秋の本格市場デビュー以降、生産量が順次拡大される予定で、集荷業者らが将来的に海外輸出を円滑に進めるための態勢づくりにつなげたい考えだと、地元の秋田魁新報社が22年1月21日伝えている。県によると、県産農産物のブランド名が海外で商標登録されるのは初めて。
県秋田米ブランド推進室によると、商標登録を出願したのは、ローマ字表記単体の「SAKIHOKORE」と、これにカタカナ表記の「サキホコレ」も併記した2パターン。中国、香港と同じタイミングで出願していた台湾でも、2021年度中に手続きが完了する見込み。これらの国・地域は国産米の輸出が多いため、知的財産を保護し、模倣品対策を取る必要があると判断したという。
サキホコレは、生産量をコントロールし、価格も低価格で販売することを計画するなど、相当に力の入った販売戦略を策定している。さらに、今回製品が一般に流通する前に国内(商標第6346451号)国外ともに商標法・種苗法に基づく出願を行い権利の保護を図るなど、知財の観点からもかなり効果的に保護を行うための戦略を取っている。これは、今まで国内の農作物、名産品のブランドが国外で商標登録をしていなかったために、無関係な第三者の冒認出願を許してしまったという事情が背景にあることが考えられる。
松阪牛、馬路村のゆず、讃岐うどん、今治タオル…これらの商品は、言わずと知れた日本が誇る一級品であり、地域の名前を冠した伝統的な名産品だ。実は、これらの製品にはそれ以外にもある共通点がある。それは、海外において同一又は類似の製品名や地名が本来の権利者以外に「商標」として登録されていること。
商標は国ごとに管理されているので、その国ごとに出願・登録が必要となる。また、多くの国における商標登録制度は、先に出願した者に商標権を付与する「先願主義」が採用されており、海外で商標が登録されてしまうと後からこれを取り消すことは非常に困難となる。その結果として、海外で商標登録されてしまった名称は、その国では利用できなくなってしまいます。たとえ現実に名産品を生産している人であっても、さらにはたとえ日本で商標をとったものであってもこれは変わらない。
このことは、日本製品の海外輸出の際に大きなブレーキとなることはもちろん、勝手にとられた「商標」を利用した海外製品(当然、品質やマーケティングは生産者側でコントロールできません)の対策にも力を割かなくてはいけなくなることを意味している。
このような第三者による出願(「冒認出願」といいます)の是非には触れないが、確かなことは、海外で登録されてしまった「商標」をその国において利用するためには、以下に言うように非常に大きなハードルがあるということだ。
まず、正規の商標を取得して利用するためには、その国の手続に沿って不服申し立てをすることが考えられますが、認められにくいのが実情です。現に「松阪牛」などは、日本の団体の不服申し立てが中国で退けられています。他には、商標権者から買い取る、商標権者からライセンスしてもらうなどの手段が考えられるが、相応の資金がかかることは覚悟しなくてはならない。
では、海外に商標出願をするにはどうすればよいのか。海外の商標をとる手続で真っ先に思い浮かぶのは、その国で正規の手続を踏んで出願することだ。もちろんこれは日本の企業などでもおこなえるが、その国にあった手続をする必要があり、言語面、手続面、専門家の選出面などから多大な労力がかかる。
そこで、現在ではマドリッド協定(英名のマドリッド・プロトコルを略して「マドプロ」と呼ばれている)という国際協定に加盟している国に対しては、一括の手続で商標登録できるようになった(出願時に出願する国を選べる)。もちろん、国内出願と比べて手続や料金は加重されますが、105以上の国または地域(2019年11月時点)に対して一度に出願が可能だ。
一度海外で商標が登録されてしまうと、基本的には取り返しがつかない。日本の製品は、高品質であるがゆえに常に世間の耳目を集めている。海外の方々もこれをマネタイズする方法を考えるのは必然だ。自らが生産し、あるいは開発した製品のブランドを守るためにも、是非、国際商標出願を含めた長期的・多角的な商標戦略をとることを視野に入れたい。
【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.sakigake.jp/news/article/20220121AK0008/
https://www.tokkyo.ai/news/trademark-news/sakihokore-akita/
https://www.tokkyo.ai/wiki/international-trademark/
* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。
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